広瀬健太

サンロッカーズ渋谷はタイムシェアでインテンシティを最後まで保ち、すべての選手が自身の役割を徹底したことで強豪へと返り咲いた。2度目の天皇杯制覇、初年度以来となるチャンピオンシップ進出もほぼ当確だった。素晴らしいシーズンを送っていたが、新型コロナウイルスの感染拡大により、リーグは中止を余儀なくされた。ケガからの復帰という新たなチャレンジを終えた今、ベテランの広瀬健太は何を思うのか。

「俺が悪いんじゃなくて膝が悪いと(笑)」開き直り

──天皇杯を制し、レギュラーシーズンも27勝14敗と大きく勝ち越しました。今シーズン印象に残っていることは何でしょうか?

やはり天皇杯の優勝は一番うれしかったですね。でも、毎試合が充実していました。誰かが活躍したから勝ったというよりも全員がかかわって勝利した試合が多かったので、毎試合やりがいがあったというか、シーズンを通してポジティブでした。

僕はケガから復帰したばかりで、みんなよりもバスケがしたい気持ちがあったと思います。気持ちを常にポジティブにもっていくことがどれだけ大事かをみんなが分かっていて、チームは常に前向きでした。

──Bリーグ初年度以来となるチャンピオンシップ進出もほぼ手中に収めていただけに、悔しさが残りますか?

シーズンが中止になった直後は思いましたが、リーグもどうにか続ける方法を探した上での結果なので、受け入れるしかなかったですし、今となってはそれで良かったと思います。

──広瀬選手個人としてはケガからの復帰というチャレンジでした。プレータイム、得点ともに伸び悩みましたが、決してネガティブな印象を受けませんでした。

ケガから復帰したシーズンは100%ではやれないとドクターからも言われていたので、できなくて当たり前だと思って開き直っていました。シュートが入らなくても俺が悪いんじゃなくて膝が悪いと(笑)。いちいちへこんでいても良い方向に向かないので、膝が良くなればもっとできると信じて、ミスをしてもフラストレーションを溜めずにできました。

──いろいろあったシーズンでしたが、一言でいうとどんなシーズンになりましたか?

自分もベテランになって若い選手の勢いを感じながら、(ロバート)サクレが引退して(セバスチャン)サイズとCJ(チャールズ・ジャクソン)が入って、チームのことを考えてくれる(ライアン)ケリーがいて。外国籍選手も日本人選手もよくまとまっていて、楽しかったなって。漠然と楽しかったシーズンですね。

今シーズンは勝ち越したし、やっぱり負ける数が多いと楽しくないですからね。新しく入った外国籍選手が明るくて、人間的にもナイスガイ。日本に対してリスペクトもあって、そういうところが大きいんじゃないかと。ケリーも2年目でよりリーダーシップを発揮してましたし、彼らの人間性は大きかったですね。

広瀬健太

「心は濃厚接触で接していきましょう」

──楽しかったシーズンが中止となり、外出自粛が続いています。家ではどのように過ごしていますか?

子供と遊ぶことが多いですね。リフレッシュになりながらも延々と続くので、ついていけないときもあります。2人いるんですけど、やりたいことも違うのであっちこっちにひっぱりだこで、相手をしてる最中に泣いたりもするのでメンタルにきますね。育児ノイローゼになるお母さんの気持ちが少し分かりました(笑)。

──なるほど、諸刃の剣のような感じですね。お子さんと遊ぶ以外のリフレッシュ方法はなんでしょうか?

読書ですかね。ゲームは基本やりません。子供と一緒に楽しむならswitchだと思うのですが品薄状態なんですよね。アニメもあまり見ませんが、子供と一緒に『美女と野獣』は見ました。やっぱり、読書と夜のお酒くらいですかね(笑)。地元の同級生とオンライン飲み会をやりました。地元の友達は気兼ねなく話せるので面白かったです。

──ファンの皆さんも広瀬選手と飲みたがっているかと思います。

僕とやってもおもしろくないですよ(笑)。(ベンドラメ)礼生とかがインスタライブをしてるのを奥さんが時々見てるんですけど、面白いし上手って言ってました。慣れだと思うんですけど、僕はそういうのできないので。

──慣れる予定はないのですか?

一歩踏み出す勇気がないんです。それでもTwitterはずっと躊躇した末に始めました!(@Kenta53701259)

──無観客試合を体験したことでファンのありがたみをあらためて感じたという選手が多いですが、広瀬選手は何か感じたことはありますか?

いつもの青学だし、ビジョンとかもあるんですけど、ホームという感じがしなかったです。ちょうどその試合でヒーローインタビューをさせてもらったんですが、ホーム感がなく、あらためてファンがあってのがホームアリーナなんだなって思いました。リーグが言うアリーナ文化を作るというのは、ハードじゃなくてファンと一緒に作り上げていくものなんだと感じました。

──間違いないですね。では最後にそのホームを作り上げるファンの方へのメッセージをお願いします。

世界中で難しいシチュエーションが続き、暗いニュースも多く、先行きが不安になると思います。でも、そういう時こそ前向きにならないといけないです。心はソーシャルディスタンスを取らずに濃厚接触で接していきましょう。落ち込んでいる人や困っている人がいたら声をかけ合って、助け合って、この苦難を乗り越えていきましょう。