今村佳太

今シーズンの新潟アルビレックスBBは13勝28敗と苦しいシーズンを送った。それでも24歳の今村佳太にとっては第2のブレイクの年となった。不祥事により4試合出場に終わった昨シーズンから一転、今シーズンはプレータイムが日本人選手で最長の29.2分へと伸び、チームの中心選手としての期待に応えた。その今村にシーズンを振り返ってもらった。

「勝っても『勝ちきった!』という感じがなかった」

──今シーズンは13勝28敗でシーズン終了となりました。

個人的にもチーム的にも本当に苦しいシーズンでした。やはり、3年間チームの大黒柱だった(ダバンテ)ガードナーがいなくなり、どこで得点を取るのか、1シーズンを通して確立できませんでした。接戦で最後に競り負けてしまう試合が多かったんですが、オフェンスのポイントを絞れず、『結局、誰で攻めるの?』となることが多かったです。

勝てた試合もありましたが、自分たちの勝ち方で勝った試合はほとんどありませんでした。今までは新潟の勝ちパターンがありましたが、今シーズンはそれを見つけられないまま終わってしまいました。勝っても「勝ちきった!」という感じがなくて、モヤっとしたシーズンになりました。

──開幕5連敗と苦しいシーズンの中で、今村選手個人としてはどのようにこの状況を打破しようと試みましたか?

今シーズンは得点源としてプレーしないといけないと開幕前から思っていたので、得点の部分はかなり意識していました。ただ、僕が得点を取っても勝てない試合が多くて。そうなると、周りを生かすことを考え始めますよね。

僕が得点を挙げた試合で勝てていたら、それが正解だと割り切れたと思うんです。でも、ゲーム1では僕が得点をたくさん取ったけど負けてしまって、ゲーム2では1桁得点だけどアシストが伸びたら勝てた試合もあったりして。こうして迷った挙句、どっちつかずの状態になってしまいました。

それでも自分のシュートには自信を持って打つと決めて試合に挑んでいるので、シュート自体は迷いなく毎回打っていました。

──苦しいシーズンでもチームとしては収穫もあったと思います。

新潟に入団して3年目になりますが、今までで一番コミュニケーションを多く取ったシーズンでした。負け越していたこともありますが、スタッフも含めてチームとしてコミュニケーションを密に取っていたことで崩れることなく戦うことができました。そういったコミュニケーションの部分はチームとして成長したところだと思います。

今村佳太

「試合でやってきたことが評価されたのはうれしかった」

──新潟と言えば五十嵐(圭)選手がチームの顔ですが、その五十嵐選手を超えて日本人選手の中でプレータイムが一番長くなりました。「自分がチームを引っ張らなければ」という思いはありましたか?

その思いはすごくありました。シーズン前から自分はチームのエースだという気持ちで行かなければと思っていました。もちろん、その分プレーに責任も伴いますし、自分が出ている時もそうでない時もチームの勝利に貢献できるように、これから責任がある立場になるということを意識して戦っていました。

──個人的な収穫はどうでしょうか?

僕は今まで仲間にクリエイトしてもらって最後のシュートを自分で打つことが多かったんです。それでも今シーズンはクリエイトの部分を任されて、自分でチャンスを作って得点を取りに行けるようになったのは成長したところです。プレースタイルが変わったことでアシスト数を増やすこともできました。あとは、これをチームの勝利に繋げることが一番の課題です。

──チームは苦しい状況でも、今村選手は2月の日本代表候補メンバーに選出されました。今村選手のプレーが評価されたからだと思いますが、その点で手応えはありましたか?

本当に選んでくださった方々に感謝しています。それに僕がもう一度こうやって認めていただけたことは、チームメートの支えがあってのことなので、僕一人の力ではなくて皆さんに支えてもらっての選出だと思っています。その中で自分が試合でやってきたことが評価されたのは、純粋にうれしかったですね。

──2月のチャイニーズタイペイ戦のメンバーには入れませんでしたが、東京オリンピックが1年延期になったことは、今村選手にとってはチャンスとも受け止められるのではないでしょうか?

本当にその通りで、この1年間は僕にとってチャンスでしかありません。今後のことも分からないし、今も自粛が続いているので、できることは限られていますが、もう1年成長する機会をもらえたと思っています。

ディフェンスはまだまだ課題ですが、得点力はストロングポイントです。学生の時にいろいろなポジションをさせてもらったので、オールラウンドに動けるところも強みですね。オールラウンドな部分と得点力やアシスト力をアピールしていきたいです。

──個人的な感想なんですが、今村選手のプレーはアグレッシブで見ているとスカっとします(笑)。

ありがとうございます(笑)。そう言ってもらえるとうれしいですね。アグレッシブなプレーは意識していますし、ホームでもアウェーでも会場を沸かせるようなプレーをするのが好きなんです。これからも会場を沸かせられるように頑張ります。

今村佳太

「毎日、腹筋が筋肉痛になっています(笑)」

──今はどのようなトレーニングをしていますか?

4月からジムも体育館も使えない状況なので、自宅でトレーニングをしています。家にある器具でトレーニングをしたり、外に出て段差を使ったトレーニングをしています。ダンベルも持っているんですが、アブローラーがオススメです。アブローラーは1日100回ぐらいしていて、毎日腹筋が筋肉痛になっています(笑)。

近くの公園でボールをつくこともあるんですけど、完全に不審者みたいになっていると思います(笑)。バスケット界では僕は大きくないですけど、やっぱり日常生活では大きい方なので、デカいやつがマスクしてフード被ってずっと動いているみたいな(笑)。身体を休める期間にしようかとも思ったのですが、動かないと身体がおかしくなりそうで、2日休んだらもうムリでした(笑)。

──トレーニング以外の日常生活はどう過ごしていますか?

アマゾンプライムで映画を結構見ていますね。僕はジャンルを問わず見るんですが、中でもホラーとかサスペンス系が好きなんです。あとはオンラインゲームを石井(峻平)と森井(健太)としています。もともとゲームはあまりしていなかったんですが、家にいても映画を見るかトレーニングぐらいしかすることがなくて、ちょっとやってみたらハマってしまいました(笑)。

──それでは最後にファンの方へのメッセージをお願いします。

新型コロナウイルスの影響でシーズンの途中で終了してしまって、バスケットボールファンに限らず、日本中が暗い気持ちになっていると思います。それでもまた皆さんの前でバスケットができるようになった時には、バスケットに限らずスポーツの力で日本中を元気にしていきたいです。今はその日を楽しみに、皆さんもコロナに注意してこの危機を乗り越えてほしいです。僕たちも皆さんの前でプレーできる日を楽しみに、一から頑張っていきたいと思っています。

個人的にはバスケットができるようになった時には、会場を沸かせるようなプレーをしたいと思っているので、この危機をみんなで乗り越えて会場に足を運んで応援していただけたらうれしいです!