昨シーズン、シーホース三河に在籍した松井啓十郎は若手の成長を促す起用法やケガの影響もあり、プレータイムと得点、3ポイントシュート成功率でキャリアワーストの数字となった。だが、京都ハンナリーズに移籍した今シーズンは41試合すべてに先発出場し、平均29.9分、12.0得点と主要スタッツのほとんどでキャリアハイの数字を残した。3ポイントシュート王の栄冠も勝ち取り、シューターとして再起を果たした松井にシーズンを振り返ってもらった。
外出自粛で「株の勉強でもしようかと」
──新型コロナウイルスの影響でチームの活動もストップしていると思いますが、現在はどのような生活を送っていますか?
子供が9カ月と小さく、朝起きるのは早いです。近場を散歩させたり、家の片づけをしたり、基本的に家にいます。トレーニングも今はしていないですね。基本的にシーズンが始まる2、3カ月前からスタートさせるので、ボールも全く触りません。いつもは5月にシーズンが終わるので、6月に旅行に行ったりリラックスして、7月半ばくらいからやり直す感じです。今回は3月に終わってしまったので、今年はもうちょっと早く活動し始めようと思っています。
──それは意外ですね。体型を一から作り直すのはもったいないというか、キツくないですか?
僕は結構太るんですけど、太ってそこから絞り直すんです。1年間保ち続けるほうがキツくて、身体を休ませてあげるという意味で何もしません。なので、今も家でお菓子とか食べてますし、シーズン中にはできないことを楽しんでいます。
──長いシーズンを戦うためにはオンとオフの切り替えが必要ということですね。外出自粛が続く中で、現在の生活を楽しむために工夫していることはありますか?
家族との時間を大事にしていますが、何もしないのはもったいないと思うので、何かしら興味のあることをやろうと思っています。ゴルフレッスンにも行きたかったんですけど、外に行けないので株の勉強でもしようかと。昔はFXをやったのですが失敗したので為替はやめようと(笑)。新型コロナウイルスで外出できないネガティブをポジティブに変えられるように勉強しています。
「KJはまだまだできる、っていうシーズンになった」
──ここからはシーズンの振り返りです。何から話せばいいか分からないくらい素晴らしい成績を残しましたが、まずは3ポイントシュートについてうかがいます。平均47.2%で3ポイントシュート王に輝きました。
自分の中でプレーできる自信はありました。ただ、(浜口)炎コーチからは期待していると言われていたんですけど、25分から30分出れるかどうかは分からなかったですし、初めてプレーする選手ばかりで、信頼してシュートを打たせてくれるかという不安はありました。でもプレシーズンで自分がこのチームで必要とされ、期待されている感じが見えて、そこから順調に結果を残せました。
──アーリーオフェンスやインサイドアウトからの3ポイントシュートが特に効果的だったと思います。
岡田(優介)選手や内海選手(慎吾)など、日本人のシューターがしっかりシュートを打てているという印象がハンナリーズにはありました。シューターの使い方がもともと上手いと思っていて、そこに自分が入るイメージがしやすかったです。シューターがいて(ジュリアン)マブンガと(デイヴィッド)サイモンがいて、やりやすかったですね。
──シューターがいるチームに加入するほうがやりやすいというのは興味深いですね。結果的に実力を証明したシーズンとなりましたが、一言でいえばどんなシーズンでしたか?
一言で言えば、自信が確信に変わったシーズンですね。実際、まだプレーできる自信はあったんですけど、年齢的にも期待通りの結果を残せるかどうか、クラブとしては半信半疑だったと思うんです。その中で「KJはまだできる」っていうシーズンになったので、確信に変えられたかなと。
──そういう意味では、この結果に驚きはしていないということですね。
そうですね。欲を言えば、リーグで一番3ポイントシュートを決めて、一番確率が高い選手になりたかったです。(ロバート)カーター選手が一番決めていて、僕は5本足らなかったんです。本数が少なかったら、確率が良くてもシュートセレクションがタフなシュートを打っていないからと思われそうですし。
──文句のつけようがない成績かと思います(笑)。
ありがとうございます(笑)。自分の武器と言えば3ポイントシュートですし、過去に2回3ポイントシュート王を取っているんですけど、やっぱりBリーグで取ったことに意味がありますね。
──ちなみに平均29.9分は日本人選手最長のプレータイムで、平均12.0得点も日本人選手5位の数字です。ベスト5に選ばれてもいい成績だと思いますが、松井選手自身はどう受け止めていますか?
今年35歳になりますが、トップなんですね(笑)。ベスト5はクリエイトできて何でもできる、あと勝敗も関係してきますし、さすがにないでしょう。もし僕が取ったら僕を推薦してくれた人が誰なのかが気になります(笑)。
「真のシューターを目指します」
──ちなみに金丸晃輔選手が3年連続でベストフリースロー成功率賞を獲得して話題となりましたが、実は松井選手も94.9%(59本中56本成功)と驚異的な確率を残しています。
そうなんですよ(笑)。金丸のフリースローを超えるのはなかなか難しいです。あと、彼はフリースローをもらうのがすごく上手なんですよね。僕はテクニカルファウルで打たせてもらうことも多いので、そこの技術が僕はまだ足りません。チームファウルが溜まっている時に自分からファウルをもらいに行けるようになれば、フリースローの本数も増えて平均点ももっと上げられると思います。90%超えは素晴らしいですけど、その技術は上げていかないといけないです。
まだ3ポイントシュート王とベストフリースロー成功率賞を同時に取った選手はいないですよね。それができたら、シュートに関してはこの人以上はいない『真のシューター』と呼べそうです。それを目指します。
──向上心が尽きませんね。個人の出来は素晴らしかったですが、チームは浮き沈みが激しく、昨シーズンとほぼ同等の成績でした。及第点といったところでしょうか?
開幕から6連勝した後に13連敗しました。連敗が続いた時はケガもあったと思うんですけど、本当に強いチームは、誰か一人が欠けても立て直して勝てる力があります。そこの強さがまだ京都には足りないと感じました。
──それでも、B1で勝率5割をキープすることは決して簡単なことではありません。
東地区の上位4チームはチャンピオンシップに行ける成績なので、東地区で5割だったら悪くないと思いますが、ウチは西地区ですから。その中でいろいろな選手が抜けた琉球がまた1位になっているということは、何らかの強さだったりリーダーシップがチームに根付いているからだと思います。僕らもそういうチームを目指さないといけないです。
──では最後に、ファンの方へメッセージをお願いします。
ハンナリーズファンの皆様、今シーズンも応援ありがとうございました。このような形でシーズンは終わってしまいましたが、僕たちはできる限りの努力をして、一人ひとりが進化して、もっと楽しいバスケットを全国で見せられるようにします。そして、松井啓十郎は今シーズン以上のパフォーマンスを見せ、皆さんを沸かせるプレーをもっとしていくので、今後ともよろしくお願いします。