文・写真=古後登志夫

ライジングゼファーフクオカは昨日、福岡大学附属大濠の3年生、井上宗一郎が特別指定選手として加入したことを発表した。井上は東京都出身の18歳、今年度はインターハイ優勝、ウインターカップ準優勝に貢献した200cmのセンターだ。2シーズン目を迎えたBリーグでは特別指定選手が多数プレーしているが、現役高校生となると数が少ない。

井上の福岡入りは正式契約を前提としたものではない。4月からは筑波大学への進学が決まっており、福岡との契約期間は3月31日まで。大濠での井上の恩師である片峯聡太監督も「Bリーグの試合で井上がそう貢献できるとは思えないのが正直なところですが、『できない』と身をもって経験することが、将来Bリーグでやりたい、日本代表選手になりたいという彼のプラスになるはずです」と、プロの洗礼を浴びることを期待する。

それでも若い井上は期待に胸を膨らませてプロの門戸を叩く。今週末のバンビシャス奈良戦から選手登録が可能で、限られた期間ではあるが全力で挑戦するつもりだ。

「チャンスがあれば是非やりたいと思いました」

──まずは今回の入団の経緯を教えてください。春からは大学ですよね?

筑波大学への進学が決まっていますが、それまでバスケをするのが難しいので、この期間にどう動こうかと考えていました。ウインターカップ前にライジングさんから話をいただき、僕自身もチャンスがあれば是非やりたいと思いました。大濠の先輩が3人いるのも決め手になりました。

──プロ志望であれば、大学に行かずにそのままプロという選択肢もあったのでは?

自分のレベルではまだ足りないと思いました。また人生設計としても筑波大でバスケに専念しつつも体育の教員免許を取って、引退後のセカンドキャリアは教員をやろうと思うので。それに大学では全国制覇という目標もあります。大学を卒業してBリーグに本格的に入り、そこで活躍して日本代表に選ばれるような選手になりたいです。

──高校バスケをウインターカップで終えたわけですが、どんな3年間でしたか?

一番学んだのは理不尽に耐える、ということです(笑)。審判のジャッジもそうですが、自分ではやっている、できているつもりなのに「やっていない、できていない」と言われたり。最初はできなかったのですが、そこで我慢できるようになりました。それを一番感じたのはインターハイの準決勝で、みんなファウルトラブルの中でハードにやれない中、我慢に我慢を重ねたことです。一発逆転してヒーローになってやろう、ではなくて我慢が大事なことを学びました。

「大濠の井上とは一味違うところを見せたい」

──今回の福岡ではプロバスケの『お試し期間』となるわけですが、自分のどの部分が通用すると思いますか?

まだ通用しない部分のほうが多いと思います。スクリーンだったりパスだったり、プロはその一つひとつの精度が高くて勉強になります。フィジカルも高校ではあったほうですが、4番(パワーフォワード)でも負ける部分があったり。でもボックスアウトでは負けないところもあるので、そういう部分で差を出したいと思います。

頑張るのは当たり前ですが、気持ちで負けたくはありません。高校でも2年までは留学生相手にうまくやれなくて、そこは相手がうまかったり高かったりしたんですが、まず気持ちで負けたらダメだというのがありました。それはプロが相手でも「やってやろう」という気持ちで行きたいです。

ライジングでは加納誠也選手が自分と同じぐらいの身長と体格なのですが、外も打てるしドライブもできる魅力があるプレーヤーで尊敬しています。先日は代表に渡辺飛勇という選手が入って、「こんな選手もいるんだ」と驚きました。やっぱり気になりますね。A代表は遠い存在だと思っていたのですが、そう思っていたらずっと遠い存在のままなので、その違いを認識して埋めていかなければいけないと思います。

──特別指定選手としての2カ月半で何を得たいですか?

プロでやることを考えれば4番でプレーすることもあるはずなので、そこで自分がどこまでできるか試したいです。アウトサイドのシュートが自分のアピールポイントだと言えるようになればいいと思います。練習に参加させてもらっている中でもまだ分からないことが多いのですが、少しは余裕も出て思い切ったプレーができるようになってきました。

「高校生だから」と言っていたら食われてしまうので、立ち位置は同じだと考えてやります。それがプロ意識だと思います。やっぱりプロって集大成だと思います。高校とか大学でやめる人が多い中で、ずっとトップで続けてきた選手の集まったリーグです。その中で自分らしいプレーをやって、大濠の井上とは一味違うところを見せたいです。短い期間ですけど、自分なりに全力を尽くしてチームに貢献するつもりです。