琉球ゴールデンキングスの2019-20シーズンは開幕直後から故障者が相次ぎ、指揮官が途中で交代するなどトラブル続きだった。それでもチームは崩れずに踏みとどまり、シーズン途中での打ち切りではあるが3年連続の地区王者に輝いた。地元、沖縄出身の生え抜き選手でチーム在籍歴が最も長い岸本隆一は故障により2月中旬から欠場したままシーズン途中終了を迎えたが、それまでは持ち味の3ポイントシュートで試合の流れをチームにもたらす起爆剤として躍動。オフに複数の主力が抜けた琉球を支えた彼が、激動のシーズンを振り返った。
「チームとしての可能性をすごく感じました」
──致し方ないことで決定に納得していたとしても、シーズンが途中終了となったことへの率直な思いを教えてください。
リーグの決断は尊重すべきで、今の日本の状況を見ても中止になったことは正解だったと思います。時にバスケットよりも大切なことはたくさんあって、今はそういう大切にしないといけないことにもっと時間を費やすことができたらと感じています。ただ、消化不良な思いがあるのは確かで、やりきったという感覚は正直ないです。
──消化不良の中でも地区優勝で終えられたことへの充実感はありますか?
周りからすると、最後までやってみたら分からなかったっていう意見もあります。僕自身も両手を挙げて『やった』とは言えないです。ただ、それでも西地区の優勝はすごく誇らしいことです。今シーズンは本当に大変なことが多かった中で、こういう結果に結びついたことで、胸を張って良い成績だったと思います。
──今は未来が読めない状況ですが、感染対策以外に意識していることは?
今は社会情勢に振り回されそうになっていまいますが、僕自身はやることは変わりません。プロ選手である以上、まずはコート上でどんな姿を見せられるかがすべてだと思っています。だから、競技力向上、スキルアップのために今まで通りブレずに精進していくことを意識しています。トレーニングも、感染対策をしながら毎日やっています。ケガの影響もあってバスケットのワークアウトはまだ不十分ですが、ただ回復に向けてすごく調子もいいですし、やることは変わらないです。
──今シーズン、色々な出来事がある中でも特に印象に残っている場面、試合を教えてください。
個人的にアルバルク東京、川崎ブレイブサンダースに連敗し、リーグのトップチームに対して勝てなかったのはすごく悔しかったです。特に川崎相手に負けた時期は、ヘッドコーチが変わるタイミングで正直ちょっと苦しかったです。ただ、みんなが危機感を持ち、チームがまとまっていくために何が必要なのかを各々がより考え始めることができました。
川崎戦の初戦(12月7日)は藤田(弘輝)さんがヘッドコーチとして指揮を執ることになった最初のゲームでしたが、試合に臨むまでのみんなのメンタリティーはどういう状況でも前を向くんだとポジティブな雰囲気でした。勝てなかったので良かったとは言い切れない部分はありますけど、試合を通して上手くいかない時間帯で、それぞれが助け合っている感覚がすごくありました。そこに自分自身はチームとしての可能性をすごく感じました。
──岸本選手、個人として特に思い出深い試合はありますか?
結構、いろいろな試合が印象に残っていますが、『特にこれ!』という試合はないですね(笑)。適切な言葉なのかは分からないですけど、感覚としてこの一戦が最後の試合になってもいい、後悔のないようにプレーするという思いを毎試合、毎秒思っていました。そういう意味では勝っても負けても、心の中ではどこかに充実感があったシーズンでした。
ファンとは「ずっと何かで繋がっている感覚でした」
──ここ2年は起用法やポジションも固定されず難しい時期が続きました。それが今シーズンはある程度、自分の役割ややるべきことについて踏ん切りがついた感覚はありますか?
そうですね。今シーズンに関しては自分が何をしたいのか、それがすごく明確になり、自信を取り戻せたシーズンにもなったと思います。これまではファンの方々にどう見られたいのかという思いも少なからずはありました。でもそれも気にしなくなって、ありのままの自分を見てもらい、それを評価してくれればいいという気持ちになったシーズンでした。
──今シーズンのようなどんどんシュートを狙いにいく姿勢は、bjリーグ時代を彷彿とさせたイメージもあります。そこは原点回帰だったのか、それとも当時とは違う感覚でしたか?
当時とは違うと思いますね。あの時代はガムシャラにやっていても、ネガティブな雰囲気とかに引っ張られてしまうこともありました。今は、あれから何シーズンも戦ってきた経験もあり、ガムシャラの中にも自分なりの冷静さ、俯瞰でいろいろな物事を見る部分で手応えもありました。そういった面でも成長することで、違うステージに行けるという感覚はあります。
──外から見ると今の岸本選手はいわゆる典型的なポイントガードではないように感じます。自分としては、どんなプレイヤーだと位置付けていますか?
ポイントガードではなく、コンボガードの方が表現としてはあっているかなと思います。2ガードで出る時もありますし、今シーズンはディフェンスでもある程度は、自信を得ることができました。
理想としては、相手チームからボールを触らせてはいけないと思われる選手になること。そういう意味で、ポジションもある程度は関係ないという気持ちです。その都度、必要なプレー、ボールを持たせたら怖いと思われるプレーをやれたらいいかなという感覚です。
──あらためて、今シーズンは岸本選手にとってどんなシーズンでしたか?
失うというか、悲しいというか、どうしても感情的にはネガティブになりそうなことが多いシーズンでした。そこで、本当に人生は悪いことばかりじゃないと自分に言い聞かせて、日常生活や練習、プレーを続けてきました。僕自身だけでなく、みんなが辛い思いを経験しているので来シーズン、次に試合ができる時には、普段よりもいわゆる小さな幸せというか、そういうものを感じてプレーできる。いろいろな面で、次に飛躍するための糧となるシーズンだったと思います。
──最後にファンへのメッセージをお願いします。
中断となる前、最後の試合はキングスvsキングスでした。無観客でファンの方は会場にいなかったですが、ずっと何かで繋がっている感覚でした。SNSを通してのメッセージもそうですし、上手く表現できないですが目に見えない力を最後にすごく感じられました。あらためてファンの皆さんの偉大さ、自分たちは誰のためにプレーしているのかを考えさせられました。だからこそ、より皆さんの期待に応えられるように、次にゲームができる時を楽しみにしてもらいたいです。
「後悔のないようにプレーする」という気持ちで戦っていたようですが、その思いはプレーにしっかり表れていましたね。指揮官が途中で交代するなど大変なシーズンでしたが、それを糧にさらに飛躍したいという岸本選手は頼もしい限りです!#Bリーグ #琉球ゴールデンキングス https://t.co/hT7Q5Vf4Ps
— バスケット・カウント (@basket_count) April 28, 2020
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