富山グラウジーズは17勝24敗、大きく負け越してはいたが中地区2位へとゲーム差は1で、ケガ人が続出した前半戦からの立て直しに成功しており、2シーズン連続のチャンピオンシップ進出は十分に狙える位置につけていた。それだけにシーズンの途中終了は残念だが、新型コロナウイルスが拡大する状況を考慮すれば受け入れるしかない。故障者が相次いだシーズンで、自身も右手第二中手骨の骨折で苦労しながらもチームを支えた阿部友和に話を聞いた。
「ポテンシャルはあるけどハードワークが足りない」
──シーズン中止が決まった後も、新型コロナウイルスの影響であまり活動できていない状況かと思います。
そうですね、富山は地方にしては感染者数も多く、年配の方が使うリハビリ施設でクラスターが発生して大変な状況になっています。チームとしての活動はやっていません。僕はランニングと犬の散歩、あとは本当に軽いトレーニングしかしていません。僕は外食しかしなかったので、今はテイクアウトをたまにするぐらいで自炊するようになりました。やったことがないから得意料理はありません。クックパッドで探して作っているんですけど、先日はチキンのソース煮を作って指を2カ所切って。ちょっと切ったぐらいですけど、慣れないことをするとダメですね(笑)。
今は正直、不安でいっぱいです。もちろん、ウズウズする気持ちはあって、じっとしていると「バスケがしたい、バスケがしたい」って思います。でも、この状況が少なくともあと数カ月は続くわけです。その後に身体が動くのか、これが23歳とか24歳だったら気にせずガンガン行けるんですけど、僕はもう34歳だし、今のコンディションをどこまで保てるのかが一番不安です。ただ、それもプラスに変えるしかないので、整える時間が長くあると考えるようにしています。
──富山は昨シーズンに初めて勝率が5割を超えてチャンピオンシップに進出しました。今シーズンは17勝24敗と負け越して終わりましたが、年末年始あたりから勝ちが増えていました。このシーズンをどう評価しますか?
昨シーズンにチャンピオンシップに行って、開幕はホームゲームで2連勝してブースターさんたちの雰囲気もすごく良かったです。昨シーズンから主力では大塚(裕土)が抜けたのですが、その代わりも前田悟が出てきて、「今年も行けるぞ」と思っていました。ところが(ジョシュア)スミスがケガをしてしまい、昨シーズンから完全に彼を起点とするバスケットをやっていてウチの柱だったので、それでチームはかなり迷いましたね。
レオ(ライオンズ)しかいない状態で川崎にアウェーで勝ったんですよ。あれを自信にして立て直したかったんですけど上手くいかなくて、そこで今度は僕がケガをして6週間ぐらい抜けてしまいました。その間はチームがどこを目指したらいいのか迷い続け、良いプレーをしても勝てなかったり、なかなか苦しい状況から抜け出せませんでした。そこで僕が戻ったら今度は宇都(直輝)がケガして。スミスという完璧なオフェンスマシーンを失って、やっぱりディフェンスをメインにしないと立て直せないと、僕が戻って来た時からその意識を植え付けることを考えました。
──そのあたりからチームは苦しい時期を抜け出していったと思います。
そうですね。昨シーズンに僕が加入した時から、このチームはポテンシャルはあるけどハードワークが足りない、それでは強いチームにはなれないと感じていました。昨シーズンはオフェンスはリーグトップクラスですがディフェンスはワーストぐらいで、極端にオフェンスに偏っていたんですよ。ディフェンスで頑張ってハードワークして、それで勝ちが取れるんだとみんな見えてきたのが昨年の12月です。それがチームの核になって天皇杯のファイナルラウンドにも出れたし、1回戦で宇都宮に負けたのですが、良い試合はできました。
そこで予定より早く宇都が戻って来てくれて、彼はオフェンスで良いものを持っていますから、チームのバランスが取れてやっと波に乗れた感じです。代表期間でリーグが中断して、そこから下位チームとの対戦が続くところだったので、ここで勝ち切れば三河を上回ってチャンピオンシップも見えてくる、というところでした。
「いろいろ考えて試すことができたシーズン」
──苦しい時期を乗り越えたからこそ自信があった、ということですね。
本当にその通りです。だからこそシーズンが終わってしまったのは残念です。他のチームのどの選手も残念に思っているでしょうが、僕らも自信がありました。苦しい時期も見てくれていたブースターさんたちは感じていたと思うんですけど、主力にケガ人がたくさん出る中でサブのメンバーで支え合って、今シーズンは『全員で戦う』という雰囲気がすごくあったんです。特別指定の選手は出番が少なかったのですが、残るメンバーはどんどん試合に出ていたので、ここから全員が揃ってやりきるところまで続けたかったです。
──終わってしまった今になって振り返ると、苦しかったのか楽しかったのか、どちらですか?
僕個人としては楽しかったですね。アップダウンがあるからこそいろいろ考えて試すことができたので。チームとしては最終的な結果が見えないから、満足か不満かは見えないですけど、そこを別にすれば僕には良いシーズンでした。
さっきもディフェンスの話をしましたが、このチームには我慢強さが欠けていました。ないわけじゃないんですけど、苦しい時にもうちょっと我慢できればもう一つ上のレベルに行ける。我慢できなくて自分たちから離されて負ける試合が多かったんです。でも今シーズンにディフェンスの意識を高めてハードワークして、特にコミュニケーションが取れるようになってきました。初めてのことも多く、いろんなことをやらなきゃいけなかったから、みんなで話せたのは良かったです。
──阿部選手個人としてはどんなシーズンでしたか? 富山に来てキャプテンになって2シーズン目でしたよね。
そうです。よほど信頼されてなきゃ移籍してすぐキャプテンにはなりませんよ(笑)。今シーズンは1年目以上にチームが我慢強くできるように声掛けしたところはあります。ウチは個性の強いチームだし、ドナルド・ベックヘッドコーチも陽気で個性的です。僕としては雰囲気を見て緩むようなことがあれば声を掛けて、チームがバラバラの方向に行かないようには気を付けました。あとは僕が自主練をガンガンやるから、若い選手たちもやる姿勢が出てきたのは良かったですね。
プレーの面ではオフェンスで自分が点を取る時とチームを動かす時のバランスが良くなったと思います。それはこのチームが、僕が出ている時は僕を中心に見て動いてくれて、僕が行く時は行かせる、そうじゃなかったら周りが行くのがはっきりしていました。僕の場合、コントロールに意識が行きすぎて良くないことがあったので、必要な時に我を出して、ドライブしたり点を取りに行くことができたシーズンでした。ポイントガードとしてはやりやすかったです。
「ブースターの熱気がないアリーナは寒く感じた」
──新型コロナウイルスに振り回されたシーズンでしたが、個人的にはどんな経験でしたか?
印象に残っているのは無観客試合です。僕らは豊橋での三遠戦で、めちゃめちゃ寒くて三遠のスタッフに確認するぐらいだったんですけど、いつも通りの温度設定だったんです。それってやっぱり、会場の熱気はブースターさんたちが作り出してるってことだよなあって思って。普段は寒いなんて感じない僕がそう思うのって、すごくリアルじゃないですか?
リーグ側は試合を続けたかったし、僕だってあと何年やれるか分からないので1試合でも多くやれるならやりたいです。でも実際に無観客でプレーして、プロとしての良さは感じられなかったですね。映像で見てくれた方がたくさんいるのは分かっているんですけど、会場に来ているブースターさんたちのためにプレーする思いが、普段は意識しなくてもあったんだなと思いました。
──そんなブースターやスポンサーの皆さんなど、支えてくれる人たちへのメッセージをお願いします。
僕はケガから復帰して調子を戻して、さあこれからというタイミングでシーズンが終わってしまいました。本当はもっと皆さんを魅了するプレーを見せたかったので残念です。さっきも言ったアリーナの熱気というのはすごく意味のあることだと思っています。ブースターさんたちもスポンサーの皆さんも僕たちも、みんなシーズン中止を残念に思っていて、この気持ちが分かったからこそ来シーズンへの思いも高められると思います。そうしなきゃいけないと思っています。次に会場で会える時のために、僕たちは最高の準備をして、皆さんを興奮させれるような試合をしていきたいので、応援よろしくお願いします。
──千葉ジェッツのストレングストレーナー、多田我樹丸さんのInstagramにゲストで出ていたのを拝見しました。阿部選手もゲストではなく、自分で発信することは考えていませんか? エアロビで鍛え上げた肉体を披露するとか(笑)。
田渡(凌)のエアロビを見て、「よっしゃ面白そうだな俺もやろう!」と思ったんですけど、その後すぐに(ライアン)ロシターがやったじゃないですか。あれに勝つのは無理じゃないですか。完全に出遅れました(笑)。でもまだまだ自粛期間は続きそうなので、何か発信していきたいとは思っています。
ハンドリングの動画はベンドラメ(礼生)とか結構頑張って上げていますよね。僕は富山に移籍して来た時に、自分から教えたいとお願いしてグラウジーズのスクールの子たちを指導しているんですけど、子供たちはこの状況であまり練習できていないし、ストレスも溜まるだろうから、みんながネタ切れになった時にやろうと思っています。Bリーグの選手全員でいろんなタイミングで上げていくのがベストですよね。僕はこういうキャラだから、練習というよりボールで遊ぶようなメニューを紹介していけたらと思います。
ケガ人も復帰し、チャンピオンシップ進出まであと一歩というところでのシーズン終了は残念でした。そして、阿部選手がコートに立った時の安心感は相変わらずでしたね。今は慣れない料理に苦戦しているようですが、頑張ってください!#Bリーグ #富山グラウジーズhttps://t.co/QjXnmXszpq pic.twitter.com/Sd5KWbLfM2
— バスケット・カウント (@basket_count) May 1, 2020
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