文=丸山素行 写真=古後登志夫

3ポイントシュート連発で大会MVPに

昨日、熊本で行われた『Bリーグオールスターゲーム』は、終盤の連続3ポイントシュートが決め手となりB.WHITEが勝利を収めた。それでもMVPには勝利チームのB.WHITEからではなく、敗れたB.BLACKから小林慎太郎が選出された。

第2クォーターからコートに立った小林は、このクォーターだけで3本連続を含む7本中5本の3ポイントシュートを決めた。B2からの参加ではあるが、熊本ヴォルターズのキャプテンであり地元出身選手の活躍に会場が盛り上がらないはずはない。「あんなに入るとは。あれは出来過ぎです」と小林は言うが、好パフォーマンスを引き出した要素が2つあったことを明かしてくれた。

一つは昨年のオールスターゲームで絶不調に陥っていた川村卓也からの冷やかしに似たアドバイスだ。「去年、川村が7分の0で0点っていうのを経験していて、『シュート入らなかったらどうするの?』とビビらされました。それでもコートに立ったら仲間たちが、熊本だからと『持ったら打て』と言ってくれて、開き直ったらどんどん入りました」

当初はMVPは狙っていなかったと言うが、「3本連続で入った時から『行くかも』って思っていました」と、可能性は少なからず感じていたという。

「何よりあの空間が後押ししてくれた」

2つ目のポイントは『復興支援』への思いだった。「復興支援だったり、人の心に残したいっていう気持ちがああいうパフォーマンスを引き出してくれたと思いますし、何よりあの空間が後押ししてくれたなって思いますね」

今回のオールスターゲームは復興支援がテーマ。前日には選手たちが被災地へ足を運び支援活動を行っている。熊本に所属する小林は以前から復興支援活動に全力で取り組んでいる選手であり、誰よりも復興への思いは強かった。

「時間が経つと周りの人は忘れていくし、メディアにも取り上げられなくなってしまう。傷ついた人は本当に多く、苦しんでいるのにそれを伝えられなかった。僕たちがこういう活動をしたり、Bリーグも社会貢献活動をする中で、風化させないことが僕たちの使命じゃないかなって思います」

そうした復興への熱い思いがシュートに乗り移り、ネットを揺らした。もっとも、第2クォーターの活躍があまりにも目立ったために、最終クォーターは小林のマークが厳しくなり、シュートを打つ機会が激減した。「シーズンよりも打たせてくれないんじゃないかっていうくらいでした。あえて2点は打たなかったですが、レイアップに行けば良かった」と苦笑いを浮かべた。

オールスターゲームはエンタテインメントがメインではあるが、試合が進む中で自然と真剣味が増していったことに小林は楽しさを感じていた。「後輩たちが必死にやらせないぞっていうので、僕もそれで火がつきましたね。古川(孝敏)もムキになって最後2本決めてきて。最初はゆったりした感じで、最後は真剣になってきて、僕自身が楽しんでいました」

小林の復興への思いは確実に伝わったはずだ。オールスターゲームは終了したが、復興の火を絶やさずに灯し続ける戦いと、チームをB1に昇格させるための挑戦はこれからも続いていく。