齋藤拓実

今シーズンの滋賀レイクスターズは、Bリーグ4年目にして初めて勝率5割を上回る飛躍を遂げた。中でもアルバルク東京からレンタル移籍で加入した齋藤拓実は41試合のすべてで先発出場し、プレータイムを得るのに苦労した状況を打ち破るとともに、『チームを勝たせるポイントガード』へと成長を遂げた。そんな齋藤に今シーズンを振り返ってもらった。

「良いコミュニケーションが取れていたから、負けても立て直すことができた」

──今回はオンラインでの取材になります。こういった形の取材は初めてですか?

取材は初めてですね。ただチームメートとゲームをオンラインでやりつつ、喋りながらしたことはあります。意外と楽しかったです(笑)。

──滋賀は若いチームで仲が良いイメージですが、その通りみたいですね。それでは今シーズンの振り返りを聞かせてください。今シーズンは21勝20敗で勝率5割を超えました。

シーズン前半はなかなか勝率が上がりませんでした。昨シーズンと違ってプレータイムが増えた分、責任もすごく感じたので、シーズン前半は試合に出ているからこそ苦しい部分もありました。それでも徐々に勝ち星が増えてきて、特に年明け以降は勝率もグンと上がりました。

僕は『チームを勝たせるポイントガードになる』ということを常に掲げています。徐々に結果も出始めて、もっともっと高見を目指すぞというところでシーズンが終わってしまったのは残念でした。ただ、シーズン後半ではチームを勝たせている実感も徐々に得られていたので、それをもっと確固たるものにしていきたいです。

──年明け以降の滋賀は天皇杯での好調があり、リーグでも11勝4敗と大きく勝ち越し「どこまで伸びるんだ?」との期待がありました。実際、チームとしては何が変わったのですか?

外国籍選手が代わってコミュニケーションをよく取るようになったことが大きかったです。もともとコミュニケーションを取っていましたが、コーチが言ったことに対して「もっとこうした方がいいんじゃないか」とか、言いすぎる部分が多かったんです。

シーズン中盤でジェフ(エアーズ)が中心となって、「コーチが言ったことをまずは遂行しよう」という話し合いを選手同士でしました。僕や狩俣(昌也)さん、伊藤(大司)さんは意見をしっかりと言うタイプなんですが、言いすぎずに良いコミュニケーションを取ることを意識しました。そういう部分が上手く噛み合ってきたのが2020年に入ってからですね。勝っても負けても良いコミュニケーションが取れていたので、負けてしまっても崩れずに立て直すことができて、それが勝率にも繋がっていたと思います。

齋藤拓実

「あの時のことは誰も悪くないし、悪いのは全部コロナです」

──齋藤選手個人としてはどんなシーズンでしたか? A東京から滋賀にレンタル移籍して、主力として戦いました。

アルバルクで培ったものを一プレーヤーとして証明したいというのが、移籍の一番の理由でした。もともと自信はあったので、コートで早く表現したいという思いが強かったんです。ただ、滋賀に来た時は先発を確約されていたわけではなかったので不安がなかったわけではありません。夏の練習でスタートを勝ち取れたことは良かったですが、開幕で4連敗した時はやっぱり難しいものがあるなという感じでした。

試合を重ねるにつれて徐々に勝ち星も増え始め、個人的に20得点を超えるような試合もありました。そこは良い選択をゲーム中にできた上でのスタッツだと思うので、自信に繋がりました。ただチームメートへの配球の部分をもっと良くしたいと思っています。仮に自分の調子が良くても、どんどんシュートを打たないように心がけているんです。自分の調子が良くても、もっとより良い選択をしてチームメートを生かせるようになりたいです。

──今シーズン最後の試合は無観客でのA東京戦でした。滋賀は外国籍選手が不在の中でも最後まで粘りを見せ、齋藤選手も自分らしいプレーを披露していました。

もちろんアルバルクで学んだことを対アルバルク戦で出したかったですが、僕としてはそんなに納得のいく試合ではありませんでした。あの時は外国籍選手もいなくて大変でしたが、誰かを責めるということは一人もしませんでした。仮に僕たちが異国でプレーしていたら、母国の家族とかが心配で仕方がないはずです。そういった意味では彼ら3人の意見は尊重すべき部分ですよね。もちろん日本人選手でも、心配な人は欠場しても良いと選手同士で話し合っていました。あの時のことは誰も悪くないし、悪いのは全部コロナです。

──今シーズンは滋賀としても、齋藤選手個人としても飛躍したシーズンだったと思います。

そうですね。バスケット人生の中でもすごく良い経験になったシーズンでした。ただ、滋賀での今シーズンもアルバルクで過ごした2シーズンも変わらないです。「滋賀に行って正解だったね」と周りから言われることが多いんですよ。確かにプレータイムは増えました。ただ、アルバルクにいたことを後悔したことは一度もありません。アルバルクにいた2年間がなかったら、今シーズンのような活躍ができなかったかもしれません。

プレータイムを求めて移籍してきて、『こうすれば優勝できる』ということを周りに伝えることもできました。それはジェフも同じで、「俺は勝ち癖がついているから、それをみんなに伝えている」といつも言っていました。いろいろな選手のケミストリーが今シーズンの滋賀では上手く重なった感じがします。

齋藤拓実

「元気な姿をファンの方に発信できれば」

──齋藤選手のInstagramでヨガをしている動画を見ました。ああいう情報発信にも意欲的ですね。

今はこういう状況なので、家でできることをファンに発信しようと思ってYouTubeでヨガを検索してやってみました。家でソファーに座ってゲームをしたりすると身体も固まっちゃうんですよね。なのでヨガやストレッチはオススメです。

──ファンからの反響も良かったようですね。皆さん次も期待していると思います。より詳しく齋藤選手を見たかったですが、倍速編集していたのはなぜですか?

ハードルが上がって怖いですね(笑)。自分ではクオリティが低いなと思ったんですが、意外と反響が良かったのでうれしかったです。倍速にした理由は1分以内の動画にしたかったのと、ゆっくりすぎると恥ずかしいなと思ったので(笑)。

──齋藤選手は神奈川出身で、ずっと関東で育ちました。滋賀での生活は慣れましたか?

大学も実家も関東なので、こっちには友達がいないのが寂しいですね。それでもチームメートと遊んだり、一人でも映画や温泉に行ったりして滋賀を満喫しています。

僕は背が小さいのであまり目立たないんですが、たまにファンの方に声をかけていただくこともあるんです。ただ、握手会の時にファンの方から『この間、スーパーで長ネギを持っているところを見ました』と言われた時はすごく恥ずかしかったです(笑)。

──それでは最後に、ファンの皆さんへのメッセージをお願いします。

まずはコロナを終息させるために一人ひとりの行動がすごく大事になってくると思うので、協力しあってみんなで乗り越えたいと思っています。ずっと家にいてストレスも溜まると思いますが、僕たちもSNSを通して元気な姿をファンの方に発信できればと思っています。

来シーズンはまだ開幕できるかどうかも分からない状況ですが、これをしっかりと乗り越えて、コートで元気にプレーする姿を皆さんに届けられることを楽しみにしています!