今シーズン、京都ハンナリーズは開幕6連勝とスタートダッシュに成功した。その後は故障者が相次いで悪夢の13連敗を喫するも立ち直り、シーズン中止の時点で20勝21敗戦と5割まであと一歩に迫っていた。京都の復活を牽引したのはジュリアン・マブンガだ。リーグ随一のオールラウンダーは得点、リバウンドに加え、的確なパスで味方のシュートチャンスを次々と作り出した。出場試合数の関係でアシスト王にはなれなかったが、1試合平均8.7、計296アシストは、タイトルを受賞した富樫勇樹の数字(1試合平均6.5、計259アシスト)を大きく上回った。唯一無二の存在感を発揮するマブンガに、どんなシーズンだったのか帰国直前の4月上旬、オンラインインタビューで振り返ってもらった。
「チーム一体となって全員が日々成長できていた」
──シーズン中止が決まったと時の心境、そして帰国に対する思いを教えてください。
正しい決断だった。当時は、特に世界中でスポーツ選手たちの感染も増えていることが伝えられていた。しかし、バスケットボールをプレーすることが大好きだから悲しい気持ちにもなったよ。日本は他の大半のところと比べて安全な国だけど、アメリカは僕にとって家族や友人がいるホームだ。新型コロナウィルスのことを熟知している人は世の中にいなくて、これから何が起こるのか予測ができない。こういった時は、家族と一緒にいるべきだと思ったんだ。
──京都の今シーズンの戦いぶりについて、どのように総括しますか。スタートダッシュからの連敗、そこから再び連勝と山あり谷ありでした。
全体的に言うと、良いシーズンだった。中止となる前、チームの調子は上がっていた。みんな13連敗の印象が強いかもしれないけど、あの時は多くの故障者を抱えていた。僕は6試合に欠場したし、デイヴィッド(サイモン)も何試合か休んでしまってとても難しい時間だった。僕たちのコンビはチームの強みだからね。
ただ、そこから途中加入したリョウ(寺嶋良)、タケル(大庭岳輝)、ヨシ(久保田義章)と途中加入の若い選手たちが、エナジーをもたらしてくれた。若手ではタイチ(中村太地)も着実に成長していた。ゲームコントロールに気を配るだけでなく、自分でアタックしたり、得点への意識がより強くなって変わっていったね。そしてインサイドではナガ(永吉佑也)も良いプレーを見せてくれた。彼は1試合2桁得点や2桁リバウンドを残すことはなくても、エナジー、インテンシティやアシストで勝利をもたらすことができる。故障者が戻った後、チーム一体となって全員が日々成長できていた。あのままシーズンが続いたら、プレーオフに進出する自信はあった。
──自身のパフォーマンスについては、どう評価していますか。
シュートの調子はそんなに良くなかった。ただ、味方にパスを出したし、シュートチャンスを作り出す動きは良かった。全体的にいうと酷くはなかったし、OKという感じだね。自分の役割はポイントフォワードだと思っている。ポイントガードのように常にドリブルして、すべてをコントロールしたいわけではない。ただ、オープンの選手が生まれたらしっかりパスを出す。自分が活躍するだけでなく、みんながより良いプレーをできるようにするのが役割だ。このオフシーズンは、今までよりシュートに取り組む。来年、オープンショットをしっかり決めるようになりたい。
「今の難しい状況の中でもより良い選手になるつもりだ」
──今シーズン、特に印象に残っている試合を教えてください。
11月の千葉ジェッツとのアウェーゲームかな。序盤に大きなリードを許したけど、ハードにプレーして逆転勝ちした。僕たちは素晴らしいチームだとあらためて認識できた。千葉や宇都宮ブレックスのアウェーは観客の声援が大きくて熱狂的で、あそこで勝てたのは大きなことだ。また、川崎ブレイブサンダースに勝つのは常に大きな意味がある。それはアルバルク東京を相手にしても同じだ。
──マブンガ選手といえば、奥さんは元WNBA選手でリーグ優勝も経験している名プレーヤーでした。彼女とは普段からよくバスケットボールの話をしていますか。
家でいつもバスケについて話している。彼女は本当にバスケを理解しているからね。試合当日も何が正しいか、悪いのかアドバイスを送ってくれる。もっとリバウンドを取らないといけない。トランジションでしっかり戻らないといけない、とかね。彼女はとても賢い選手だった。スタンフォード大学出身でNCAAトーナメントの決勝で2度プレーしている。コーチではなくて、スカウトといった感じだね。彼女の意見はいつも尊重しているよ。
──実際の指揮官である浜口ヘッドコーチは、あなたにとってどんな存在ですか。
炎さんは素晴らしいコーチだ。彼は素晴らしいゲームプランを立てて、堅実なディフェンスを構築できる。なにより彼は、選手の意見をしっかり聞いて、良い意見を取り入れてくれる人だ。チームをうまくコントロールできているよ。
──帰国した後、どんな形でトレーニングを続けていこうと考えていますか。
帰国したら2週間は自主隔離になる。その後で、エアロバイクのペロトンを買って身体を動かすよ。自宅ではウェイトトレーニングにも励む。近くには家にバスケットコートがある友達が何人かいるので、そこに行ってシューティングやボールハンドリングの練習をする。この夏、今の難しい状況の中でもハードにトレーニングしてより良い選手になるつもりだ。
──最後に、ファンにメッセージをお願いします。
ファンのみんなによるすべてのサポートに感謝している。この数シーズンでBリーグは本当に素晴らしいリーグとなった。今は奇妙な状況になっているけど、状況が良くなり再びバスケットボールをプレーできるようになること。何よりもファンの前でプレーできることを楽しみにしている。
今シーズンもオールラウンドなプレーで楽しませてくれたマブンガ選手、帰国前日に取材させていただきました。「プレーオフに進出する自信はあった」、この言葉を実現できたかどうか、コートで確かめてみたかったですねえ。。。#Bリーグ #京都ハンナリーズhttps://t.co/QCejE5CygY
— バスケット・カウント (@basket_count) April 22, 2020