文・写真=鈴木栄一

プレッシャーディフェンスを牽引し川崎を封じる

1月6日、シーホース三河はオールジャパン準決勝で川崎ブレイブサンダースと対戦。12月に入りBリーグで調子を上げている難敵相手に序盤から主導権を握ると、87-68と余裕の勝利を収めた。

この試合、三河の大きな勝因となったのは前半で失点をわずか21に抑えたディフェンスだ。川崎の絶対的なエースであるニック・ファジーカスを15点に封じたことに加え、篠山竜青と藤井祐眞の司令塔コンビへの激しいプレッシャーも機能していた。橋本竜馬とともに、ポイントガードとして前からのディフェンスの役割を遂行したのが狩俣昌也だった。大量リードを奪う試合展開だったことも影響しているが、狩俣は橋本よりも多い25分のプレータイムで8得点を挙げ、攻守の両方において存在感を示し、三河の圧勝劇を導く立役者の一人となった。

「試合の入りからディフェンスが良かったです。ディフェンス、リバウンド、ルーズボール、そこをプラン通りに遂行できました。自分がやるべきことはディフェンスというのは分かっていたので、そこは譲らないように。アグレッシブに行って、相手のポイントガードに好きなようにさせないよう指示されていました。篠山選手はドライブが得意なので、そこを自由にさせない。藤井選手には、外で簡単なイージーシュートを打たせないように意識しました」

このように試合を振り返る狩俣は、持ち味である堅実なゲームメークとタフなディフェンスに加え、3ポイントシュート2本成功と得点面でも貢献。「打てるところは打たないとチームとしてオフェンスの流れが悪くなってしまいます。良い形で自分のところに来たらしっかり打ち切る。リバウンドを取ってくれるチームメートがいるので、そこは思いきり打つというのを自分の中で持っています」

エリート街道とは無縁、たどり着いたファイナル

大学は関東3部リーグ出身で学生時代は目立った実績のない狩俣であるが、bjリーグ時代の千葉ジェッツからスタートしたプロ選手としてのキャリアは、その後、琉球ゴールデンキングス、福島ファイヤーボンズと渡り歩く中で、確実に実績を積み重ねて昨シーズンに三河に加入。2年目ではあるが、今シーズンからはキャプテンを任されるなど存在感を高めている。

「キャプテンだからと意識することは特にないです。このチームはリーダーシップを発揮できる選手がたくさんいます」と本人は謙遜するが、日本バスケ界屈指の常勝軍団である三河のキャプテンが簡単な責務であるはずはない。彼が周囲からしっかりと信頼を勝ち取っていることの確固たる証の一つだ。

今日行われる決勝は、これまでエリート街道とは無縁の道のりを歩んできた狩俣にとって、まさにキャリア最大の大舞台となる。また、その相手は昨年の大会で敗れた相手であり、プロバスケ選手としてのスタートをきった古巣の千葉である。ただ、こういった因縁を彼が意識することはない。

「特に節目とか感慨はないです。過去、未来とかあまり意識をしていない。試合に集中するだけです」と抱負を語ると、「泥臭いという自分の色を出す。シンプルに勝つために必要なことをやってしっかりゲームをしたいです」と決勝への意気込みを続ける。

また、「昨シーズンに天皇杯、リーグのプレーオフを戦えたことは僕自身にとって良い経験となり学ぶことがありました。それを今回の天皇杯に生かすことができています」と大舞台への余計な気負いもない。

王座奪還を目指す常勝軍団が、今シーズン一つめのタイトルを獲得するためには、叩き上げの新主将のもたらすエナジーが必要となってくるはずだ。