富樫不在を感じさせない多彩なオフェンスを展開
天皇杯ファイナルラウンド、準々決勝の第2試合は栃木ブレックスvs千葉ジェッツ。千葉は司令塔の富樫勇樹をケガで欠いたが、Bリーグ初年度から対戦するたびに好勝負を演じる両チームが期待を裏切らない熱戦を見せた。
先行したのは千葉。富樫に代わりポイントガードで先発した西村文男のゲームメークから、ギャビン・エドワーズがインサイドで強さを見せて得点を重ねる。栃木はセカンドユニットの生原秀将と鵤誠司の奮闘で立て直すが、第2クォーターに入り千葉が勢いを増す。西村に代わりポイントガードに入った阿部友和が攻めのスピードを上げる。阿部がスティールからの速攻を決めて33-23とリードを2桁に広げる。また千葉は3ポイントシュートもよく入った。小野龍猛のポストプレーから原修太、エドワーズがインサイドに攻め込んでのキックアウトから西村と、多彩な組み立てから作ったチャンスをきっちり決め、45-34で前半を折り返す。
第3クォーターの千葉は3ポイントシュート攻勢から一転、マイケル・パーカーとエドワーズのインサイドの合わせが効果的に決まり、帰化選手のいる強みを生かす。後半開始から7-0のラン、栃木がタイムアウトを取るも、その直後にライアン・ロシターにタフショットを打たせ、そこから反転して小野の3ポイントシュートでリードを20点に広げる。
分かっていても止められない富樫のピック&ロールから、多彩な攻めで相手を振り回す西村と阿部のゲームメーク。ここまでは富樫不在を感じさせない『千葉のゲーム』だった。
栃木が意地を見せるもファウルの多さに泣く
それでも最終クォーターに栃木が意地を見せる。それ以前から仕掛けていた前からの激しいプレッシャーが効き始め、千葉の攻めのリズムを狂わせるだけでなく敵陣でボールを奪っての得点にもつないで流れを呼び込む。
そして当たっているセドリック・ボーズマンにボールを集めた反撃が効き、西村にエドワーズ、パーカーのプレータイムが長く動きの鈍った千葉を圧倒し始める。この試合、当たりの来なかったロシターがオフェンスリバウンドを奪ってそのまま押し込み58-66、ついに1桁差に迫った。
しかし激しいプレッシャーディフェンスが災いし、栃木はこれより以前にチームファウルが5に到達していた。千葉はエドワーズ、阿部、再びエドワーズとファウルを誘い、フリースローでリードを保つとともに栃木の流れを切っていく。6点差まで詰め寄るも、栃木の反撃もここまで。残り1分36秒、西村が緩急を生かしたドライブで栃木のプレッシャーディフェンスを突破。後方から止めに来る田臥勇太を待ってファウルを誘い、このフリースロー2本を確実に決めて突き放すと、あとは悠々と時計を進めて76-71で逃げ切った。
大野篤史ヘッドコーチは「第3クォーターまでは」と限定した上で「ボールへの執着心で上回った」とチームの出来に満足しつつも、終盤の試合運びを反省点に挙げている。富樫勇樹をケガで欠くことになったが「勇樹がいないから何かを変えることはありません。やることは一緒です」と問題がないことを強調した。
重役を果たした西村「自分のバスケができた」
先発ポイントガードを任され、特に試合のカギとなる第1クォーターと第4クォーターをフル出場した西村文男は6本中3本の3ポイントシュート成功を含む16得点と活躍。今シーズンのリーグ戦では最長でも23分しか出場していない状況で両チーム最長の34分半プレーし、「疲れました。次はもうちょっと疲れないようにやりたいです」と苦笑するも、「勇樹は勇樹の、阿部さんは阿部さんの、僕は僕のバスケがあります。周りに良いパスを出して決めてもらう、そういう自分のバスケができました」と十分な手応えを得た様子。
富樫不在でも「インサイドに強烈なプレーヤーがいるので、そこを抑えながら走るバスケができれば勝てると思っていました」と西村はチームへの自信、そして連覇への意気込みを語った。
大野ヘッドコーチも西村のプレーには大いに満足した様子で「得点はもちろんですが、それだけじゃなく、ボールを散らして、インサイドアウト、ペイントタッチと、オープンコートのバスケットをやってくれた」と称賛する。
栃木ブレックスは昨年に続き準々決勝で千葉相手に敗退。ビハインドを背負う時間が長く続く苦しい試合でよく踏ん張った渡邉裕規だが、言い訳することなく完敗を認めた。「ルーズボールがすべて、リバウンドがすべて。その差が出た試合でした」