ニック・ファジーカスが振り返る激動のシーズン「優勝候補としての自信を取り戻した」

ニック・ファジーカスが振り返る激動のシーズン「優勝候補としての自信を取り戻した」

2020/04/15

ニック・ファジーカス

2019-20シーズンは新型コロナウイルスの影響による中止によって王者不在のまま幕を閉じたが、川崎ブレイブサンダースは佐藤賢次ヘッドコーチが率いる新体制となって強豪チームの地位を取り戻した。この復活を牽引した原動力の一人が大黒柱ニック・ファジーカスだ。今シーズンのファジーカスは、これまでになく3ポイントシュートを積極的に放ち、それを高確率で成功させた。30代中盤になってプレーの幅を広げると、故障者続出で厳しいチーム事情の時にはフル出場に近い起用法に応えるなど攻守に奮闘した。リーグ屈指の支配力を持った選手であることをあらためて証明し、健在ぶりを見せつけたファジーカスに、激動のシーズンを振り返ってもらった。

「プレーすると決めたら余計なことは考えない」

──2019-20シーズンは中途半端な形で終わってしまいましたが、どのような思いを抱いていますか。

とてもタフだった。シーズン中止が決定するまでの数週間は、中途半端な状況が続いていたからね。一度は中断し、無観客で再開したけど、すぐにまた中断となってしまった。しばらくシーズンがどうなっていくのか明確な答えが出なかったのでチーム全体がフラストレーションを抱える状況だったと思う。最終的に中止になったことで、ホッとした部分もある。もちろん、僕たちにとって優勝を狙える中での中止は残念だったけど、リーグは正しい決定を下したと思う。

──アメリカのスポーツイベントはすぐに中止が決まりましたが、Bリーグはシーズン継続に向けて試行錯誤していました。そのことについて、家族から心配されませんでしたか。

NBAを始め世界中のリーグがすぐに中断、休止となったことで、アメリカの家族はBリーグもすぐに中止になると思っていたようだ。ただ、アメリカと日本では感染の状況も違っているので、アメリカに合わせて決断しないといけないわけではないよ。家族は心配していたけど、リーグがどうなるのか決断は日本の状況を踏まえて下されるべきだ。

ただ、NBAが中断し、その数日後にNCAAトーナメントが取りやめとなり、アメリカですべてのスポーツがストップしてしまったことには、ちょっと奇妙な感じがした。特にNCAAトーナメントは、アメリカにおいてはスーパーボウルに次ぐ2番目に大きなスポーツイベントだと僕は思っている。このトーナメントで活躍することで、それまで無名だとしても、ずっと語り継がれるような伝説になる。その大会がなくなったのは学生たちにとって本当に気の毒だ。

──ファジーカス選手は、シーズン中止が決まるまでの間にどのようなことを意識していましたか。

ウイルスへの感染には注意が必要だけど、試合だけでなく練習でも参加すると決めたら「感染するかも?」との思いは抱かずにプレーしていた。その心配を払拭できないのであれば、練習に参加したり試合でプレーするべきではない。一度プレーすると決めたら余計なことは考えない。妻と話して決めたのはそのことだった。

──今回の一連の出来事で、とりわけ動揺したのは外国籍選手だったと思います。長く日本で暮らし、なおかつ彼らの気持ちも理解できるファジーカス選手だからこそ、意識して接していたところはありましたか。

特にJ(ジョーダン・ヒース)は日本での1年目で、よくコミュニケーションを取るようにした。ヨーロッパにいる外国籍選手の友人には、シーズンが中止となって自宅待機となり、給料が支払われないような選手もいた。ただ、日本は完全に状況が違う。だから「何も問題ない」と話すようにしていた。シーズンを続けようとしたことにストレスを感じた選手もいたと思うけど、リーグ側の視点に立ってみればビジネスもあるし、理解できる。ただ、最終的にはそれも不可能な状況になってしまった。

ニック・ファジーカス

「来シーズンに再び会えることを楽しみにしている」

──プレー面について聞きます。今シーズンは、これまでになく3ポイントシュートを放つ新しいスタイルを見せてくれました。この変化についてはどう考えていますか。

ポストアップは減ったけど、インサイド、アウトサイドとバランス良く攻めることはできた。コーチの求める役割に応えられるようにプレーし、個人としてもチームとして成功を収める。そのために必要な方法を見つけていくだけだよ。

このシーズンで僕らは優勝候補としての自信を取り戻した。天皇杯ではインフルエンザで選手の離脱が続く前代未聞なこともあったけど、優勝まであと一歩だったよね。新型コロナウイルスがなければ、ファイナルに行けたかもしれない。ただ、それも誰にも分からない。来シーズンに同じことをやるのは簡単じゃはないけど、再び強いチームを目指すだけだよ。

──ライアン・ロシター、ギャビン・エドワーズが相次いで帰化したことにより、彼らと比較されることも増えました。そのことについてどう感じていますか。

彼らもそれぞれ思いやストーリーがあって帰化したと思う。彼らと比較されることで、僕が何か変わることはない。僕の目標はチャンピオンになること、リーグでベストの選手になること。それはずっと同じなんだ。

──これから長いオフシーズンとなりますが、どんなことを意識して過ごしていきますか。

しっかり身体を絞って、良いコンディションを保つこと。僕も年を取ってきているので、そこは重要だ。今シーズンと同じコンディションでチームに合流したい。また、この夏は息子と多くの時間を一緒に過ごすことができる。彼はどんどん成長しているので楽しみだ。できたら一緒にバスケットボールをやりたいね。

──来シーズンに向けてファンにメッセージをお願いします。

いつもサポートに感謝している。振り返れば無観客試合は楽しいものではなかったし、公式戦を戦っているような感じもしなかった。フリースローを打っていても静かで、選手たちの会話が聞こえるのは変な感じだった。

この試合がファンのために行われたのは分かっているけど、川崎はリーグ屈指の観客動員を誇るチームで、みんなの前でプレーできないのが寂しかった。日本に来た頃は、数百人の前で試合をしていた。それが今は4000人を超えることが普通になっているのはありがたい。今は早く普通の生活を取り戻し、来シーズンに再び会えることを楽しみにしているよ。

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