文=丸山素行 写真=鈴木栄一

ゾーンを攻略できず、悔いの残るゲームメーク

ウインターカップ決勝はインターハイ決勝と同じカード、福岡大学附属大濠(福岡)と明成(宮城)のライバル対決となった。大濠は前半に大きなビハインドを背負うも、後半に怒涛の追い上げを見せ、第4クォーターには「このまま追い付き、ひっくり返す」という雰囲気を作ったが、結果的に一歩及ばず。72-79で惜しくも敗れた。

「前半で離されすぎたのが大きな敗因です」。そう話すのは1年生だった昨年から大濠のポイントガードを任される中田嵩基だ。「こっちも向かっていくつもりでしたが、相手の気迫に負けた部分がありました。今となってはフォワード陣や(井上)宗一郎さんにアタックしてもらうことが一番大事だったと思います」

大濠は明成のゾーンディフェンスに手を焼きペイントエリアを攻められなかった。大濠の強みである200cmセンターの井上をうまく使えず、リングへのドライブは数えるほど。インサイドを経由しない、リズムの悪いシュートは精度が上がらなかった。「組み立てるのは非常に難しかったです」と明成のゾ―ンが以前よりも攻略しづらいことを誰よりも感じていた。

「インターハイの時よりも明成の足が動いていて、ヘルプの詰めが全然違いました。あそこはもう少し打開していきたかったですが、外回りだけのプレーになってしまったのが反省点です」

夏のインターハイではこのゾーンディフェンスを攻略して優勝した。「インターハイで明成はウチのアタックに対応できていませんでした。でも今回のゲームではシャットアウトされました」と大濠の片峯聡太コーチもコメントしている。ゾーンディフェンス自体は同じでも、明成はウインターカップに向けてその精度を高め、対大濠の大きな武器としたのだ。

「ここまで試合ができて、高校生としては誇らしいです」

U-19日本代表にも選出され、2年生ながら多くの経験を積んでいる中田だが、メインコートに立つのは初めてのこと。昨年のウインターカップでは優勝候補に挙げられながらも、2回戦負けという悪夢を経験している。そうした経緯もあり、中田の表情は決して暗いものではなかった。

「今回はここまで試合ができて、高校生としては誇らしいです。2位は悔しいですけど、出し切った結果なので」

それでも司令塔としてチームを勝利に導けなかったことには責任を感じている。「悔いはないと言ったら嘘になります」という言葉がそれを表していた。

だがそれ以上に、先輩とともにこのコートで最後まで試合ができた達成感のほうが中田には誇らしかった。「横地(聖真)とか土家(大輝)とか良い選手はいるんですけど、それまでに3年生がしっかりと土台を作ってくれたのが、今年の大濠の象徴的な部分でした。お互い衝突することもありましたが、負けたことの悔しさよりも『もっとこのチームでバスケットがしたかった』と思います。3年生たちとバスケットができて、とても楽しい大会でした。タフなことだと思いますが、来年はプレーをしながらそういう部分を作っていかなきゃいけないです」

「果たせなかった優勝をもう一度取りに行きたい」

中田にはまだもう1年、高校バスケをする時間がある。1年前に比べたら技術やフィジカルはもちろん、リーダーシップの面で大きく成長したという自負がある。来年は最上級生、『立場が人を作る』という言葉の通り、今までとは違う立場でまた彼のメンタルやリーダーシップは育まれていくのだろう。

「果たせなかった優勝をもう一度取りに行きたいと思います」と中田は言った。

来年の12月、東京体育館のメインコートに立つ彼がどれだけ大きく成長しているか、それを確認するためにも、今日の中田の姿はしっかりと記憶しておきたい。