パウ・ガソル

「団結するか分裂するか、それは僕たち次第」

パウ・ガソルは同じスペイン出身のラファエル・ナダルとともに赤十字の協力を取り付け、『#nuestramejorvictoria』というキャンペーンを立ち上げた。スペイン語で「我々の最大の勝利」を意味するこのキャンペーンは、スペイン人のプロアスリートが結束して声を上げ、新型コロナウイルスに立ち向かうための寄付を募るもの。

今夏には40歳になるガソルは、昨年春に左足の手術を受けてコートから遠ざかっているが、NBAでの新たな契約を目指し、また東京オリンピックへの出場を目指してリハビリを続けてきた。しかし、今はその状況ではない。彼はこれまでに得た知見やコネクションを生かし、仲間を団結させ、ファンへメッセージを届けようとしている。『The players’ tribune』に寄稿した手記の冒頭、ガソルは「この3週間は1年のように感じる」と書いている。

「すべてはあっという間だった。僕らは仕事に行き、友達とレストランで食事をしていた。NBAのプレーオフは1カ月後で、僕はリハビリがあって試合ができないけど、東京オリンピックに向けて夏までに代表チームに加わるべく準備をしていた。そこから突然、僕たちは家に閉じ込められた。一瞬にして世界はリビングルームの大きさになってしまった」

自分が見聞きした恐るべき状況を書き連ねた後、ガソルは「孤立の中にも希望を探している」と記す。

「スペイン中で毎晩驚くべきことが起きている。みんな20時になると窓に出て、医療従事者を応援するために歓声を上げる。だいたい15分ぐらいかな。そしてみんな、次の夜まで自分を監禁するんだ。これが世界中に広まり始めている。これはすごく意味のあることで、人間は繋がりを求めているんだ。どんな困難にあっても人は連帯しようとする」

ここから彼は連帯し、団結することがいかに重要かをあらためて考えるようになり、キャンペーンの立ち上げに至る。

「僕はかつてのチームメート、コービー・ブライアントから学んだことについて考えている。彼は逆境こそ最高の先生であり、成長する機会だととらえていた。彼が亡くなって寂しいけど、彼が教えてくれたことはこれまで以上に僕に訴えかけてくる。今の状況に対してできることは多くないが、それでも選択肢はある。このパンデミックに対して僕たちは団結するのか、それとも怒りから分裂するのか。それは僕たち次第なんだ」

ヴィッセル神戸に所属するサッカー選手のアンドレス・イニエスタも『#nuestramejorvictoria』に参加。ガソルとナダルを中心に、スペイン人アスリートはあらためて連帯を強めようとしている。