胸アツなドラマとオーバーラップさせながら見守りたい、川崎ブレイブサンダース『買収劇』の行方

2017/12/22
Bリーグ&国内
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文=泉誠一 写真=野口岳彦

毎回、胸アツな展開にのめり込んで見ているドラマ『陸王』。劇中で大手アウトドアブランドのフェリックス社が、老舗足袋屋のこはぜ屋の買収話が浮上したあたりから見方が変わってきた。それは第7話、12月3日放送分だった。12月6日、川崎ブレイブサンダースの運営権を東芝がDeNAに譲渡し、Bリーグの理事会でも承認されたことは既報どおり。ついつい陸王を見ていると、川崎の行方とオーバーラップして見てしまっている自分がいる。買収は正義か? 悪か!?

「買収ってそんなに悪い話なんですかね?」

オーナーが変わることは、プロスポーツにおいて珍しくはない。新しい風を吹き込むことで活性化も期待され、必ずしも買収する側が悪者というわけではない。前回の『陸王』ではこはぜ屋の社員の一人、美咲ちゃん(吉谷彩子)が「買収ってそんなに悪い話なんですかね?」とポツリ。社長や社員が辞めることなく、今までどおり続けられるという話にはネガティブな要素は一切ない。川崎でたとえれば、ヘッドコーチも選手も変わらず、来シーズンもバスケットを続けられる、といったところだ。

それを立ち聞きしていた企業融資担当の銀行マン、大橋(馬場徹)が割って入る。「そんな話は信用しない方がいい。一般論だが、子会社になってしまえば、泣こうがわめこうが相手の思い通りにするしかなくなる。買収とはそういうものです」と一刀両断。今回、プロバスケットボールクラブの川崎がDeNA傘下となり、新オーナーが「監督は権堂(博)だ!」と言われれば、泣こうがわめこうが後の祭りである。あくまで極論だが、クールな銀行マンは警鐘を鳴らすのはそういうこと。だが、川崎の場合はすでに運営権がDeNAの手に渡ってしまっており、ドラマよりも先に行ってしまっている状況である。

東芝からDeNAへ。プロリーグになっても、大資本の企業に支えられなければプロクラブを運営するのは難しいことが表面化したとも取れる今回のオーナー交代劇。Bリーグとなり、企業色を払拭するところからスタートしたはずである。運営体系は企業チームではないにしろ、企業名が表立ってしまっていることに違和感を覚えた。琉球ゴールデンキングスの木村達郎社長、千葉ジェッツの島田慎二社長、マーベリックスのマーク・キューバンにウィザーズのテッド・レオンシス、ホーネッツのマイケル・ジョーダンなどなど、やっぱりクラブの顔は個人名である方がプロっぽい。

DeNA傘下でブレイブサンダースはどう変わる?

「泣こうがわめこうが相手の思い通りにするしかなくなる」という銀行マンの話を思い出せば、DeNAになったことでいずれ川崎からベイスターズがある横浜へ移転することだって考えられる。NBAやプロ野球でもホームエリアが変更してしまうことはよくある話。北海道日本ハムファイターズだって、もとは東京のチームだった。集客が思うように行かなければ、別の地で勝負するのは常套手段でもある。改修工事が始まった横浜スタジアムの近隣に新アリーナを建てるようなことがあれば面白い。プロ野球と同じ本拠地になれば、シーズンが違うのでベイスターズファンを取り込みやすくなり、集客増だって期待できる。

川崎に住む地元ファンにとっては、簡単に移転させないためにも、あけみさん(阿川佐和子)のように「あたしゃぁ、認めないよ」という声や行動が大きなウエイトを占めてくるだろう。

プロクラブは地域の公共財産であり、本来であれば企業が好き勝手にできるものではない。100年の歴史を誇るこはぜ屋も然りであり、最後の悪あがきをした顛末やいかに!? 最終回を楽しみにしたい。その結末をオーバーラップさせながら、今度はDeNAが経営する来シーズンの川崎ブレイブサンダースの新しい物語を見守っていきたい。