取材=古後登志夫 写真=古後登志夫、B.LEAGUE

SR渋谷を慌てさせるも、逆転勝利には至らず

大阪エヴェッサが苦しんでいる。昨日、サンロッカーズ渋谷との初戦を落として通算成績は6勝16敗。西地区の優勝候補だったはずが開幕から低空飛行が続き、首位の琉球ゴールデンキングスとは11ゲームも離されてしまった。リーグ全体を見ても勝率で18チーム中14位。プレーオフ出場どころか残留争いを意識しなければいけない位置にいる。

東地区が突出して強い勢力図の中、オーバーカンファレンスの試合で2勝11敗と大きく負け越しているのが痛い。その東地区に属するSR渋谷との昨日の対戦では、最終局面まで1ポゼッション差の接戦を演じたが、勝ち切ることはできなかった。

立ち上がりからSR渋谷の堅守を崩せず、相手の得意とする重い展開にハマってしまう。試合を通じて8-19と大きく上回られたオフェンスリバウンドからのセカンドチャンスポイントで、じわりじわりと差を広げられていく。点差は最大でも10と大きく離されることはなくても、主導権は相手が握り続けるという重苦しい試合展開だった。

それでも最終クォーターに大阪の流れがやって来る。ここで主役を演じたのが、それまでの30分間でプレータイム6分弱、無得点とインパクトを出せずにいた橋本拓哉だ。強気なゲームメークで重い展開をこじ開け、それまで出せなかったブレイクを連発。それまで余裕の試合運びを見せていたSR渋谷を慌てさせた。

それでも一歩及ばず、63-67でこの接戦を落としている。「いつものことなんですけど出だしが重くて受け身になってしまい、そこを打開しようとコートに入って、個人としてそこは良い結果になりました」と橋本はこの試合を振り返る。

強気のプレーメークで試合の流れを変える

第4クォーター、橋本は10分間フル出場し、自らは3本のシュートすべてを沈めて6得点。オフィシャルタイムアウト明け、51-60の場面からの連続得点は見せ場となった。全くと言っていいほどブレイクが出せなかった試合を強気のプレーメークで変えたことは大きい。チームは3連敗だが、橋本にとっては間違いなくプラスとなるパフォーマンス。今シーズンここまで、チームの不調に足並みを合わせるかのように目立たなかった橋本にとって、流れを変えるきっかけにしたい10分間となった。

「ここまで絶不調だったので」という彼にとって、今シーズンからポイントガードに取り組んでいることが迷いの原因だ。「ポイントガードにはオフから取り組んで、準備はしていたつもりですが、競ったところやここ一本が欲しいところで、『どのコールが一番効果的なんやろ』と。後から考えれば分かるのですが、コートで瞬時に判断する力がまだ足りないです」

この日の試合後に桶谷大ヘッドコーチは「周りが見えるようになってきた」とポイントガードとしての橋本の成長を評価したが、彼自身は「怒られてばかりなので、褒められると素直にうれしいですね」と照れ笑いしながらも、「周りが見えているとは、自分では正直思っていないです。まだまだです」と否定する。

「昨シーズンは点を取ることだけを意識して、点が取れていたので良かったんですけど、今シーズンはクリエイトすることを目標にやっています。それが変な形で裏目に出て弱気になってしまったり。その気持ちのバランスがすごく難しいです」

「僕は僕らしくやっていこうと思います」

「今日はやってやろうという気持ちでコートに入ることができた。だからこれを継続したいです」と橋本は言う。「三遠戦でも思い切ってプレーできた結果が20得点。吹っ切ってプレーすればいいのは分かっていますが、そこが難しかったりもします」

それでも、この日の活躍で明確になったのは、強気のボールプッシュでブレイクを出す展開を作ることが、チームにもプラスになるということだ。先発ポイントガードを務める木下博之は37歳の大ベテラン。「木下さんみたいにゲームコントロールできるわけじゃないので、その分もトランジションに持ち込もうと」というのが橋本の考え。そのためのアプローチをどうするかで悩んできたが、たどり着いたのは「良いディフェンスができれば攻めにも勢いが出ます」というシンプルな回答だ。

「チームはこういう状況ですけど、年齢的にはルーキーなので考えすぎず、僕は僕らしくやっていこうと思います」と橋本は言う。「オフェンスは今日みたいにアグレッシブに、攻め気を出していくこと。あとは昨シーズンから課題のディフェンスです。今日は自分でも褒めていい出来だと思うので、ここから一つひとつやっていきたいです」

ポイントガードとして新たなスタイルを模索する中で、迷いからターンオーバーやタフショットと攻めのミスが続いていたが、木下のような円熟のプレーメークをこの段階で真似てもうまくいくはずがない。まず意識すべきはディフェンスであり、そこから速い展開に持ち込むこと。橋本が自分の色を確立できれば、木下のプレーもまた効果的になる好循環が生まれるはずだ。

「昨シーズンは接戦を勝ち切る試合がいくつかあったんですけど、今シーズンは出てこない。こうやって負けが込んでいる中で、それが頭に浮かんで弱気になってしまう。僕だけじゃなくチームに感じる部分ではあるので、そういう時に楽しめる選手でありたいと思います」と橋本は言う。彼がポイントガードとしてどれだけ存在感を出せるか。これが不振脱出を目指す大阪にとってのカギになりそうだ。