コービー・ホワイト

「彼らしいプレーさえしてくれれば大丈夫」

ドウェイン・ウェイドは先日、ファンとSNS上で質問を募り答えていた際に、「今シーズンのルーキーでお気に入りは?」との問いに「ジャとザイオン、コービー・ホワイトだ」と回答している。新人王の最有力候補であるグリズリーズのジャ・モラント、ケガで出遅れたがモンスター級のプレーを見せるペリカンズのザイオン・ウイリアムソンは言うまでもないが、ドラフト全体7位指名でブルズに加わったコービー・ホワイトはどんな活躍を見せているのだろうか。

開幕から平均20分以上のプレータイムを得て活躍していたホワイトだが、『プロの壁』に苦しんでもいた。相手選手のレベルの高さ以上に、年間82試合をこなすハードスケジュールとそれに伴う遠征の連続にフィットできず、「試合ばかりで力が入らず、毎日どこかに痛みがあるような状態。とにかく慣れるしかない」と苦しさを語っていた。

それでも、大きなケガがあったわけではなく、試合をこなすごとに少しずつ慣れてきてはいた。そして、オールスターブレイクで試合間隔が9日も空き、心身ともにリフレッシュしたことが飛躍のきっかけになった。

オールスター明けから中断前最後の試合となった3月10日のキャバリアーズ戦の前までの9試合で、25.2得点はザイオンと並ぶルーキートップの数字。3ポイントシュート成功33本はルーキートップの数字だ。そしてキャバリアーズ戦では初めて先発に抜擢され、20得点5アシストを記録。チームの連敗を止めてみせた。

試合開始前にスターターをコートに招き入れる際の「ノースカロライナ出身の!」というアナウンスは、マイケル・ジョーダンが活躍していたブルズ黄金期にお馴染みだったもの。オールドファンには感じ入るものがあったに違いない。ジョーダン以来、ノースカロライナ大出身の選手がブルズのスターターを務めるのはホワイトが最初だ。もっとも、ホワイトは別の部分で入れ込んでいた。彼の持ち味はスピードと、それを最大限に生かす強気の攻め。この試合でも思い切りの良いアタックを続けたものの、シーズン最多を大きく更新する9つのターンオーバーを記録してもいる。

「ターンオーバーの多さはポイントガードとしてはマズかったね」とホワイトは言う。「でも、大事なのはチームの勝利。課題もあったけどプレーし続けて、チームは勝つことができた。初先発はうれしかったし、その試合で勝てて良かった」

ザイオンのようなパワーはないし、モラントほどの技術もない。だが、ホワイトは相手ディフェンスの隙を見つけると躊躇なくアタックし、身長はなくても長い腕を伸ばしたフック気味のシュートを次々と沈めていく。また超クイックリリースの3ポイントシュートもある。瞬発力で勝負する選手だけに、分かっていても止められない怖さがある。迷いのないプレーは見ていて爽快で、コート上での喜怒哀楽を出すタイプだけにファンとしては感情移入しやすい。

そんなホワイトはチーム内での評判も上々だと『Chicago Tribune』が伝えた。指揮官のジム・ボイレンは「プレッシャーを感じたり、いろいろ考えすぎると良くない。彼らしいプレーさえしてくれれば大丈夫だよ」とルーキーへ信頼を寄せる。ザック・ラビーンは「特別なプレーヤーになれると最初から思っていた」と語り、ホワイトと入れ替わる形でベンチに回ったトーマス・サトランスキーも、「オールスター以降のコービーのパフォーマンスからすれば当然の判断だよ。彼がチャンスを得られて僕もハッピーだ」と、この判断を受け入れてホワイトを応援している。

絶好調だっただけに、このタイミングでのリーグ中断は彼にとっては不運だ。それでも、来るべきリーグ再開の時には、身体のメンテナンスが完全に済み、これまでの経験も生かすプレーが期待できるはず。トレンドマークの大きなアフロヘアをポニーテールに束ねたコービー・ホワイトが、ブルズを再び活気づけるに違いない。