「ブースターさんの力で会場全体が盛り上がる」
Bリーグは新型コロナウイルスの影響で約1カ月中断していたリーグ戦を、3月14日から無観客で再開した。
秋田ノーザンハピネッツはサンロッカーズ渋谷のホーム、青山学院記念館に乗り込み第1戦を87-83で勝利、第2戦は79-84で敗れ、1勝1敗の痛み分けとなった。
細谷将司は1カ月ぶりの試合を終えて、「天皇杯のチャンピオンチームに1勝1敗で、今日も最後まで接戦となるゲームができたことは、チームの成長に繋がったと思います」と振り返った。
Bリーグ開幕以降、初めての無観客試合となった先週末。選手たちはそれぞれの思いをコメントしているが、細谷もリーグ戦再開には「正直、複雑です」と言う。もちろんプロ選手として目の前の試合には全力で挑むが、前節のようにアウェーとなれば移動も伴う。
「無観客とはいえ、移動などでも不安があります。今回も飛行機に乗ったり、ホテルでもいろいろな方がいるので、そこでも気を張っています。これから空港に行きますけど、やっぱりちょっと怖いですよ。試合までの過程とか日常でのストレスが、普段の何倍もかかっていると今回の遠征で感じました」
「いつも通りパッて観客席を見ても『あ、誰もいない』」
コートに立てばいつもと変わらないバスケットをするが、『無観客』の会場には違和感しかない。細谷は「『あと一歩、もう一段ギアを上げたい』という時に、背中を押してくれているのはブースターさんの声援だと、あらためて思いました」と語った。
「第2戦は前日の疲れも残る中戦っているので、ゲームの雰囲気も重くなってしまうんです。そういう時にブースターさんの力で会場全体が盛り上がって、選手たちも頑張ろうって思うんですよ。今は画面の向こう側で応援してくれているけど、やっぱり生でブースターさんの声援がほしいと感じる時はありました」
細谷が言うように、バスケットは会場と選手が一体になってこそ盛り上がるスポーツだ。いつものSR渋谷のホームゲームでは会場が黄色に染まるが、無観客では「アウェーの空気感もなければ、なにもない。無圧ですし、フリースローの時なんて無音で『なんだこれ?』と思ってしまいました」と、正直な感想を明かす。
「3ポイントシュートが決まって、いつも通りパッて観客席を見ても『あ、誰もいない』みたいな。選手同士で盛り上げますけど、やっぱり全然違います。2日間無観客でやってみて選手としては、寂しさだったり思うところはあります。それでも試合再開はリーグが決めたことなので、僕たちはそれに従います」
「まずは皆さんの健康第一です」
何が正しいのかは誰にも分からない。リーグ戦を中止にすれば、経営が困難になるクラブも出てくる。選手たちもそういう状況を知っているからこそ、複雑な思いが大きくなっていくのだろう。
それでも選手がプレーすれば、ブースターは画面越しに応援してくれる。そして、秋田ブースターと言えば『クレイジーピンク』と言われるほど熱狂的で、ホームはもちろんアウェーでも多くの人々が会場に駆けつける。この2日間でどの選手も『ブースターの力の大きさ』を語っていた。そして細谷も秋田ブースターに向けて、このようなメッセージを送った。
「画面を通じて皆さんが応援してくださっていることは、いろいろな方から聞いています。本当にファンの皆さんには感謝しかないです。今の苦しい状況の中、この2試合を通じて少しでも皆さんに元気を与えられていたら、僕たちが試合をした意味もあると思います。今後のことはまだ分からないけど、まずは皆さんの健康第一で気を付けてほしいと思います。一人ひとりが気を付けることしかできないと思うので、ファンの皆さんも一人ひとり気を付けてください。まずは健康第一です」
プロ選手として、個人の意見を正直に明かすことは簡単ではない。それでも選手たちは誰もが安心してバスケットを楽しむことができるように、正直な気持ちを語っている。