前田顕蔵

「ブースターがいない中での試合は寂しい」

3月14日、リーグ戦再開の初日に行われたサンロッカーズ渋谷vs秋田ノーザンハピネッツの試合は、第4クォーター残り5分から見事な猛攻を見せたアウェーの秋田が87-83で逆転勝利を収めた。

試合後、秋田の前田顕蔵ヘッドコーチはこのように試合を総括する。「Bリーグが再開して、選手たちは戸惑いがある中でもハードにプレーしてくれたのはうれしく思います。そして、チームにとって大きな1勝です」

指揮官が語るように秋田にとって、強豪のSR渋谷を撃破したのは大きな意味を持つ。ただ、一方でやはり無観客の影響はあった。この試合、秋田は第4クォーター残り6分の時点で61-74と劣勢だったが、そこからひっくり返すことができたのは、ファンがいない中での試合だったからと前田ヘッドコーチは言う。

「今日、渋谷さんのファンがたくさんいるいつものアウェーの状況だったら、13点のリードを許してそこから離されてもおかしくなかった。それほど声援には力があります。そしてアウェーでもいつもたくさんの秋田のブースターに来てもらっています。やはりブースターの存在は大きく、いない中での試合は寂しいです」

無観客の中でも再開したBリーグだが、新型コロナウィルスを巡る状況はいまだ予断を許さない。今、この状況でプレーすることは外国籍に限らず、すべての選手たちにとって大きな負担を強いるものとなっている。その点はしっかり配慮しないといけない。前田ヘッドコーチは言う。

「こういう状況になって、SNSで情報がどんどん伝わってきて世界ではリーグ戦が中断している中で僕たちはプレーしています。チェアマンも説明されていましたが、僕たちが止まってしまうことで潰れてしまうクラブが出てしまうかもしれない。そうさせないためにも、試合をやる理由があり、それは大事なことです。ただ、僕たちは一人の人間であり、社会人であり、帰れば家族がいる。その中で寄り添う姿勢はすごく大事にしないといけない」

「選手だからバスケットをしなければいけないではなくて、この状況で彼らがマスクをとってユニフォームで汗をかいてバチバチやるのは普通のことではない。そこに僕は感謝したいですし、そういう気持ちは大事にしたいと思っています」

伊佐勉

伊佐ヘッドコーチ「しっかりと向き合って話したい」

今節では滋賀レイクスターズの外国籍3選手がチームへの帯同を見送った。SR渋谷の伊佐勉ヘッドコーチは「ウチの外国籍選手たちもネガティブにはなりますけど、帰国させてほしいとは言っていません。ただ、いろいろな状況がありますので、もしそうなった時はしっかりと向き合って話したいと思います」と語る。

外国籍選手のみならず、チームへのアプローチも変えた。「いつもなら『試合を楽しめ』とは絶対に言わないです。ただ、今日はテレビ、スマホ、パソコンで見ている人に楽しんでもらうにはまず自分たちが楽しむことだと言いました。ただ、楽しむまでにはいかなかったと思います」。こういった試行錯誤は今日も続くことだろう。

リーグ戦が再開となったBリーグだが、文字通り綱渡りの状況は続いていく。その中でも選手たちは多くのリスクがある中、日本プロバスケットボール界のためコートに戻って来ている。そして指揮官たちも非常に難しい中、いつも以上に大きな責任を背負ってチームを率いている。