パブロ・アギラール

2月末、選手登録の期限直前になって川崎ブレイブサンダースは大きなインパクトを与えた。バスケ大国スペインでの代表経験が豊富で、国別対抗では欧州最大の大会ユーロバスケット(欧州選手権)で2003年に銅メダル、2005年に金メダルを獲得しているパブロ・アギラールを獲得したのだ。Bリーグ開幕以降では悲願の初タイトルを狙う川崎の切り札になれるのか。優勝争いのキーマンとなる新戦力に加入の経緯、新天地に懸ける思いを聞いた。

「このリーグは素晴らしい」との助言が決め手に

──欧州で確固たる実績を残してきたあなたが、川崎を選んだ理由を教えてください。

それは様々な要素があるけど、まずはもともと日本が好きだったんだ。2年前にはハネムーンで15日間旅行して東京、京都、大阪、広島を訪れている。あの時は人生の特別なイベントだから遠く離れた国に行ってみたいと思っていた中、周りが薦めてくれたことと、妻も望んだので日本に行くことにした。だから日本がどんな国なのか、少しは分かっていた。今はこうして川崎に加入することができてハッピーだ。まだ、来たばかりだけど川崎の街の雰囲気はとても気にいっている。

また、バスケットボール選手としての面で言うと、自分にとって勝手知るヨーロッパ以外のところでプレーする新しいチャレンジをしたかった。Bリーグがどんなところなのかはセバスチャン・サイズ(サンロッカーズ渋谷)、ルイス・ギル・トーレス(佐賀バルーナーズヘッドコーチ)とも話して、競技レベルや環境について聞いた。最も大きな決め手となったのは、みんなこのリーグは素晴らしい、日本で過ごすことは良い経験になると言っていたことだ。

──今シーズンは所属していたスペインのテネリフェを故障の影響でプレーできずに退団しています。ブランクがありますが、コンディションについてはどのような状況ですか。

昨シーズンの最後の試合でケガをして、ここまでプレーできていなかった。今は、痛めた手首の状態は良いし、身体もどんどん絞れてきている。そして、試合勘が戻ってきつつあることも重要だ。リーグ戦の延期は残念だけど、僕にとってはコンディションを上げ、試合前にチームメート、コーチとの関係を深めることができているのは良いことだ。可能な限り早く100%の状態に戻していきたい。

パブロ・アギラール

育成組織に加入「人生の中でもベストの選択」

──これまでの経歴について教えてください。まず、欧州屈指の名門レアル・マドリードの育成組織に加入したのは、あなたにどんな影響を与えましたか。

14歳からはプロバスケ選手を目指し、レアル・マドリードの育成組織に入った。それまでは楽しんでバスケットボールをプレーしていたけど、この時からバスケット選手として生きていくことを考え、より真剣に取り組んだ。

最初、マドリードでの暮らしはタフだった。14歳で親元を離れて生活することになったからね。試合で勝つことに加え、しっかり勉強することも求められた。とても大変だったけど、この経験があったから一人の人間として大きく成長できた。今となっては人生の中でもベストの選択だったと思う。

これまでのキャリアを振り返ると、スペイン代表で2015年のユーロで優勝したのが一番の思い出だ。特に準決勝で開催国フランスに勝ったのは素晴らしかった。会場の雰囲気、試合の内容ともに最高だったよ。

──日本でも有名なリッキー・ルビオとの付き合いが長いと聞いています。

リッキーのことは14歳の頃から知っている。ずっとアンダー世代から一緒だった。彼は特別な選手で、一緒にプレーすると本当にやりやすい。また、コートの外では兄弟のような関係だ。

パブロ・アギラール

ファジーカスは「スペシャルな選手」

──これから、いかにチームメートに馴染んでいけるのかが終盤に向けて大事な要素となってきます。特に大黒柱のニック・ファジーカス選手といかに連携を確立できるかは重要ですが、どんな印象を抱きましたか。

練習でも次々と得点している姿を見せているけど、彼のシュートタッチは信じられないね。彼ほどのタッチを持った選手はこれまで見たことがない。まさにスペシャルな選手で、一緒にプレーするのは楽しみだよ。

──自分はどんなタイプの選手であり、どんな役割でチームに貢献していきたいと考えていますか。

今は4番と5番、時には3番でもプレーしている。僕が入ることで、チームにより多くの要素をもたらしたいと思う。リバウンド、インテンシティを大事にし、ボールを持ったら積極的にアタックしていきたい。

ただ、何よりも重要なのはコーチの求めるプレーをこなすこと。みんながより良いプレーができるような仕事をすることだ。1試合、20得点を挙げるために川崎に来たわけではないし、チームもそのために僕を獲得したのではないと思う。僕は川崎のリーグ優勝を手助けするために加入した。そのためにもチームに早くフィットして、みんなと同じ方向を向いてプレーしないといけない。

──最後にファンへのメッセージをお願いします。

まだ、試合でプレーできていないけど、早くみんなと一緒に戦えることを期待している。ファンを楽しませ、ハッピーになってもらいたいといつも考えているので、そのためにも優勝したい。コート上では様々なことができることを証明したいし、川崎のために自分の持っているすべてを捧げる。