湊谷安玲久司朱

横浜ビー・コルセアーズで3シーズンを過ごした湊谷安玲久司朱は今シーズンを迎える前に引退を表明し、8年間のキャリアに幕を閉じた。Bリーグが誕生したことで選手の待遇は以前よりも向上したため、より長く現役生活を送りたいと思う選手は多いだろう。それでも湊谷は現役を早々に退き、家業を継ぐことに決めた。そんなセカンドキャリアをスタートさせた湊谷に話を聞いた。

「1部でやれないなら、もういいかな」

──まだBリーグでプレーできるように見えていたので、突然の引退発表には驚きましたが、あらためて引退を決めた理由は何だったのでしょうか?

一番大きかったのは、アキレス腱を切ってから100%でプレーできなくなったことです。スピードの低下というより怖さだと思います。踏み込みが怖いとか死活問題ですからね。だからポストプレーかシュートの2択で、選択肢が狭まってしまいました。

1部からのオファーがなかったんです。近いところまでは行ったんですが、若い子を獲りたいと。B1でできなくなったら終わりだと、前から漠然と考えていました。

僕自身、横浜に残れるかなという思いはあって、残れていたら多分まだやっていたと思うし、B1で移籍先があったらまだやっていたとも思います。でも、現実を突き付けられた時に「1部でやれないなら、もういいかな」と思ったんです。

──『B1で』という思いが強かったんですね。それでも「まだやれるのに」とか「上向いているチームに残ってほしかった」と思っているファンは多いと思います。

まだできたんじゃないかと、自分でもたまに思ったりしますよ。でもチームに対して悔しいというのは全くありません。今は応援に切り替わっていて、横浜には頑張ってほしいとしか思っていないですね。

──引退を撤回して復帰する選手もいますが、その可能性は?

99.9%ないですね(笑)。35、6歳くらいまでやるのかなって自分では何となくイメージしていたんですが、試合に出れなかったり中途半端にやるなら、早いうちに引退しようとは思っていました。太りたくないので、遊びのバスケは週1くらいでやっていました。弱いモノいじめして楽しんでますよ(笑)。

湊谷安玲久司朱

「バスケ会場で西京漬けを売ることになるなんて(笑)」

──引退して、家業である『西京漬け湊屋』のサポートをしていくことに決めましたが、もともと継ごうと思っていたんですか?

いや、全く思っていませんでした。そもそも西京漬けのお店ができたのは最近で、その前に魚関係の加工品とかは出していましたが、西京漬けを始めてまだ1年なんです。長男ですし、親には迷惑ばかりかけてきたので、その恩返しの気持ちでやっています。まだまだこれからの会社なので、僕が頑張らないとと思っています。

──2月15日、16日の横浜vsサンロッカーズ渋谷戦では横浜国際プールで店頭販売を実施して、大盛況でした。

ビーコルがセカンドキャリアを応援したいと提案してくれたんです。バスケ会場で持ち帰りのモノを売るという発想がなかったので、大丈夫なのかなとは思っていました。

──そうした不安に反して、早々に完売してましたね。売り切れ後にもたくさんの人が来て、残念がっていました。

あそこまで売れるなんて思ってなかったです。ウチの商品は冷凍なんですが、会場で出すとなると冷蔵になるので2、3日中に食べてもらわないといけないんです。なので、余ったらもう売れないですし、不安しかなかったですよ。バスケ会場で西京漬けを売ることになるなんて、現役時代は考えてもいなかったです(笑)。

でも本当にありがたいですね、毎週やりたいぐらいです。市場で手売りをする時だってたくさん来てくれますし、いろんな人に今も助けてもらっています。ファンの人もそうですし、選手時代からお世話になっている人もいます。横浜で引退して本当に良かったなって思います。