「あのスピードを使わない手はない」
昨年、インターハイとウインターカップを制覇した福岡第一。その優勝祝賀会が2月23日に行われた。
今回は学校ではなく保護者やOBといった後援会の主催による会で、仲間同士で集まって健闘をねぎらう趣旨。選手たちのミニバス時代、中学時代の恩師も招いて感謝の気持ちを伝える場も用意された。井手口孝コーチにとっては、間もなく卒業を控える3年生の選手たちと会うのも久しぶり。「僕らには寂しい感情がありますが、とにかく次が始まっているので。最後に引退する時だったらグッと来るかもしれない」と語りながらも、愛弟子たちの姿に目を細める。
この会でも注目を集めたのはキャプテンにしてポイントガードを務めた河村勇輝だ。三遠ネオフェニックスに特別指定選手として加わり、高校生ながらスピードと得点力はプロで通用している。最下位のチームでなかなか勝てなかったが、中断期間に入る直前の試合、井手口コーチが豊橋まで観戦に訪れた試合で河村はプロ初勝利を挙げた。
「僕が行ったら勝ちました。これは三遠の他の選手に気合いが入ったかもしれない」と井手口コーチは笑う。
「あのスピードを使わない手はないから、三遠でも東海大でもそうしてくれればと思います。僕がセットオフェンス重視のヘッドコーチだったら、あの身長は厳しかったかもしれない。ここまでトランジション主体だったから彼が生きる道がいっぱい出たとも思います。そこを伸ばしてほしいですが、それはチームの事情やコーチの考えもありますから」
ちなみに祝勝会には東海大の陸川章監督も招かれていたが「先輩には恐れ多くて、ああしてくださいとは言えません。でも、河村はどんなスタイルであっても生きる道を見つけられる選手だと思います」と語った。
「河村を出せば出すほど、出した人の益になる」
これまでも福岡第一は多くの優れた選手を上のカテゴリーに送り出してきた。それでも井手口コーチは河村に対して「日本代表で頑張ってもらいたい」と大きな期待を託す。
「例えば鵤誠司(宇都宮ブレックス)にも並里成(琉球ゴールデンキングス)にもポテンシャルはありますが、だけど河村にはチャンスがあると思います。U16、U18の日本代表に選ばれて、チームもこうやって優勝して終わって、そして三遠でプロデビューの機会があって、東海大の陸川先生との出会いがある。このタイミングであったり流れを見ると、河村を出せば出すほど、出した人の益になる感じがあります。もちろん彼が努力してつかんだものでもあります。ただ、それは私が過去の先輩たちに卒業のお土産として持たせてあげられなかったもの。そういう部分で河村にはチャンスがあると思います」
一方で、井手口コーチは『本業』である福岡第一の新チームにも手応えを得ている様子。昨年末のウインターカップで優勝したチームは、河村を始めスタート全員が3年生。彼らが抜けてあの強さをキープするのは簡単ではないが、「まず県大会優勝はできました。次は6月のインターハイ予選での優勝ですが、結構やれると思っています」と語る。
「スタートの當山修梧は河村のようになるかもしれない。鷹野祐磨はもう少し時間がかかるかもしれませんが。轟琉維もニコニコしてプレーするのが味方にとってすごく良いです。負けまいと結局は河村と小川(麻斗)を使いましたが、ガードも下級生に結構良い選手がいました。だから良いチームになりそうです。(ハーパー・ローレンス)ジュニアもダンクできるポイントガードですから。今年もにぎやかなチームになりたいですね」