取材・文=小永吉陽子 写真=野口岳彦

6点差で勝ち切れなかったホームでのフィリピン戦を終え、日本は半日以上かけてアデレードまで飛び、強敵オーストラリアと戦った。試合前からフリオ・ラマスHCは「オーストラリアは強敵でグループの中で一番強い。100%か、それ以上のパフォーマンスをしなければ勝てない」と言っていた中で、日本は33分までは10点前後で食らいつくことはできた。フィリピン戦からアグレッシブに攻めていたエース比江島慎に加え、馬場雄大やアイラ・ブラウンの突破、富樫勇樹のアウトサイドシュート、篠山竜青の粘り強いディフェンスなどで、第3クォーターまでは何とか戦えたのだ。

しかし、日本が得点するとすぐさま入れ返すオーストラリアのタフな攻防は、やはり一枚も二枚も上手だった。日本は終盤になると、オーストラリアの激しいコンタクトプレーの前に消耗し、動きが止まってしまった。

フリオ・ラマスはアウェーでの厳しい戦いをどう評価したのか、またファーストウインドウを終え、日本代表を指揮した手応えはどのようなものだったのか。オーストラリア戦を終えた指揮官に話を聞いた。

「必要なのは、自信をつけるために努力し続けること」

――オーストラリアと戦っての感想は。

選手たちが努力してくれたことには感謝をしている。ゲームを通してずっと戦ってくれた。オーストラリアは我々をフィジカル面で消耗に追い込んだ。アジアカップの時よりもフィジカルで対抗するチームになっていた。最後の7分間で14-0というこの差、この数字は、スコアボードに出ている数字(58-82)よりも、今日の結果のすべてを表している数字だと思う。最後は消耗して追いやられてしまった。

――フィリピン戦に比べると、ゲームの出足からオフェンスは修正できていました。良かった点は。

ポジティブに取るのだったら、先ほど言った選手たちの努力だ。フィリピン戦も第2クォーター、第3クォーター、第4クォーターでは、選手たちのやることに自信が見えてきた。今日は、33分に到達するまではすべてを出せたという自信を持てた。ここで大事なのは選手たちが自信を持つこと。もちろんチームとしては改善しなければいけないことはあるが、試合に勝つためには、こういう国際大会で自信を得るための努力を続けなければならない。

――アウェーで戦うためにオーストラリアまで来ましたが、ロングフライトをしてのコンディションはどうでしたか?

今回のワールドカップ予選でのアウェーでの長旅に関しては非常に厳しかった。ただ、これは私たちだけでなく他のチームも同じ条件。オーストラリアもチャイニーズ・タイペイのホームでやっています。まあ、それでも厳しいことには変わりないので、厳しい飛行時間の中でもやっていくしかない。逆に、こういう厳しい環境でやることが成長につながる。国際試合というのは成長できるチャンスであり、ましてやオーストラリアのように、FIBAランキング9位の国と対戦できるわけですから。より高いレベルのチームとアウェーで対戦することで成長できると、ポジティブに受け取っている。

――オーストラリアに対してはリバウンドがカギだと言っていました。しかし圧倒されました。やはりオーストラリア相手にリバウンドを取ることは難しいのでしょうか。

リバウンドを取ることはとても難しかった。今回からオーストラリアはアジア予選に加わって、プラスもマイナスもある。マイナス面は、我々にとっては非常に難しい相手だということ。プラスの面を考えたら、FIBAランキングでトップ10に入っている相手と何度も対戦できること。これは日本代表が何を必要としていて、何を改善しなければならないかを分からせてくれる経験になる。そこから経験してリバウンドを改善していく必要があるということ。オーストラリアとの戦いを今後にしっかり生かしていきたい。

「次のキャンプの時には化学変化を期待する」

――フィリピンとオーストラリア戦、この2戦では日本代表に進化は見られましたか。

以前のチームよりも成長している。レベルが高くなってきて、自分たちのプレーに自信を持ち始めている。今の状況は簡単ではないけれど、この2試合で良いプレーもあったし、選手の動きには満足している。今はこの状態で努力し続けることだ。

――2月の予選までの3カ月間にやるべきことは?

個人としても、チームとしても改善しなければならないことはたくさんある。次に招集をかけるまでは、テクニックとフィジカルの両面でそれぞれ個人で補完していかなければならない。また招集してキャンプが始まった時には、化学反応を期待するというか、疲れた状態でもエモーショナルを出し、チーム全体が成長できるようにしたい。ワールドカップ予選はまだ始まったばかりで、フィリピンにしても、オーストラリアにしても、今は勝つだけの力が足りなかった。これからの日々をできるだけ成長して未来の勝利を勝ち取りたい。我々の目標は何よりも2次ラウンドに進んで、ワールドカップの出場権を得ることです。

――現在、NCAAでプレーしている渡邊雄太選手と八村塁選手を今後、招集する可能性は?

渡邊と八村は必要な存在で、この2人を加えたら、日本はさらに高いレベルに行ける。彼らにも代表でプレーすることに誇りを持ってもらい、ここにいる代表の皆と同じ方向でプレーをしてほしい。日本の強化プロジェクトの中に渡邊と八村をできるだけ早く加えることが、チームの成長を早めると考えている。


12月1日からBリーグが再開し、次回代表の招集は年明けの天皇杯の後となる。日本代表選手たちが今回の2試合で得た強度をBリーグで発揮することが、次戦につながっていく。また東野智弥技術委員長いわく、近いうちに「NCAAで活躍中の渡邊雄太と八村塁のプレーを見るために、ラマスヘッドコーチとともに渡米する予定」とのこと。渡邊と八村の成長ぶりを把握し、2人のこの先のことを考え、どの時期に代表活動に参加できるのか、またその可能性を所属チームと交渉することは、日本にとって喫緊の課題だ。