本橋菜子

1勝2敗、課題はあるも「これから高めていけばいい」

バスケットボール女子日本代表がベルギーで行われたオリンピック予選を終えて帰国してから10日が経過。明日からWリーグが再開となり、代表選手たちは所属クラブに戻ってそれぞれの戦いに身を投じる。

2018年の代表初招集から結果を出し続けてチームに定着し、昨年のアジアカップでは大会MVPにも輝いた本橋菜子は、オリンピック予選でも3試合すべてで先発ポイントガードを任された。18得点6アシスト、8得点6アシスト、10得点4アシストというのが3試合のスタッツ。数字としては十分に見えるが、初戦のスウェーデンには勝ったものの、ベルギーとカナダには接戦を落としており、本橋も「まだまだ自分の力が足りないと感じた大会でした」と振り返る。

「手応えがなくはなかったです。毎試合スタッツを残せたら良いですけど、そんなことはできないので。後半に疲れてしまってアタックできないこともありましたが、チャンスで打ち切ることはできていました。そこでシュート確率が低く、決めきれなかったのが上手く波に乗れなかった要因ですが、そこはこれから高めていけばいいので、下を向くような内容だとは思っていません」

フィールドゴールは大会を通じて40本中15本成功の37.5%と及第点。アジアから世界へと対戦相手がランクアップしたことを考えれば、まずはチャンスで打ち切ることが肝心で、多くのシュートを打ったことに意義がある。確率はここから上げられるという自信が本橋にはあるようだ。

その一方で課題に挙げたのがターンオーバー。敗れたベルギー戦、カナダ戦は終盤に追い上げる展開となったが、「もう少しで追い付くところで自分のターンオーバーがありました」と、勝敗にかかわる場面でミスが出たことを本橋は気にしていた。「大事な場面をポイントガードとして任されている時のターンオーバーは、全部なくすのは無理かもしれませんが、減らしていかなければいけない」と語る。

本橋菜子

「今回、自分の実力は出せました」という収穫

試合を見ている分にはなかなか気づかないが、本橋の中での収穫はもう一つあった。メンタル面での成長だ。

「緊張したりとか消極的になってしまったり、メンタルの部分で何かできなかったということが今回はありませんでした。今まで代表で何かが上手く行かない時は、自分の気持ちの部分に原因があって、そこは私の課題だったんです。でも今回は3試合とも気持ちの部分で安定していました。シュートの確率が低かったので今後上げていかなきゃいけないですが、それはただただ自分の実力です。今回、自分の実力は出せました。その点は収穫だと思っています」

こうしてまた自信を深めた本橋は、オリンピックを半年後に控えてポイントガードの1番手としての評価を固めつつあるように見える。ただ、本人にその意識はない。正確には、意識がそちらに向いていない、と言うべきか。「代表当確とか危機感とか、あまり考えないんです。初めて代表に呼んでいただいた時から、自分のやるべきことをちゃんとやるのが第一で、それで落ちたら仕方ない、という考え方です」

「今もふるいにかけられていますよ(笑)。でもそこは招集されるたびに、試合のたびに、毎日の一回一回の練習で、自分にできる全力を出してやっていくしかないので、そこで変に意識したりはしないです」

勝ちに慣れたチームだけに、1勝2敗と負け越したことに気落ちしているかと思いきや、どの選手も手応えを得て帰国した。本橋も自信を深めたように見える。「自信があってもなくても、試合の時は自信を持ってやるしかない。シュートが落ちても次は入ると思うようにしています。トムさん(トム・ホーバスヘッドコーチ)も『次は入るよ』と声を掛けてくれるので。多分、私よりもトムさんの方が私を信じていますね(笑)。だからその期待に応えたいという思いでやっています」

本橋は東京羽田ヴィッキーズのポイントガードとして、シーズン終了まではWリーグでの戦いに注力する。チームはここまで5勝9敗と負け越しているが、ここからチーム力を上げて立て直し、プレーオフでベスト4まで勝ち進むのが目標だ。

「東京羽田は悪くなった時の立て直しが難しい部分はありますが、波に乗ればすごいんです。私としてはみんなを乗せてあげて、ノビノビとプレーできるように。一人ひとりが自分の役割をやっていけば強くなるチームなので、まずはプレーオフ進出に集中して、目標のベスト4まで行きたいです」

東京オリンピックまであと半年、本橋を始めとして代表選手たちがWリーグで切磋琢磨する姿に注目だ。