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ドラフトの『運』に左右されるキャリア

新人ながらディフェンディング王者ウォリアーズで開幕からローテーション入りを果たしたジョーダン・ベルは、『次代のドレイモンド・グリーン』とも呼ばれる才能を発揮している。だが、2017年ドラフトでの指名順は全体38位と、最初から評価されていたわけではない。

その彼がチャンピオンチームに加ったのは運命かもしれない。実は、この38位指名権を持っていたのはブルズ。今年のドラフトで指名権を保持していなかったウォリアーズは、ブルズに金銭と指名権の交換トレードを持ちかけ、その上でベルを指名。譲った方のブルズといえば、再建段階に突入したばかりで、新チームが形になるにはまだ数年かかる状態だ。

再建段階のチームならば、38位指名権を行使しても良かった。もしベルを指名していたら、ラウリ・マルッカネンとのコンビが注目されていたかもしれない。おそらく、ウォリアーズに指名されて以降、こんな話をメディアから散々聞かされたのだろう。ベルは11月24日のブルズ戦でキャリア初の先発出場を果たすと、7得点6リバウンド4アシスト2スティール6ブロックの大活躍で勝利に貢献した。

試合後ベルは、『NBC Sports Bay Area』に、「金銭トレードの効果のほどを知りたかったんだ」と、皮肉たっぷりにコメント。また「嘘を言うつもりはない。気分が良かった。試合前は『考えない』と話したけれど、そうしたら周りがいろいろと思い出させてくれたんで、良い感じだったよ」と続けた。

もちろんブルズには何の非もない。ベルの指名を公言していたならまだしも、2巡目の指名権をトレードするのは特別なことではないからだ。ただ、『金と交換』した指名順で名前を呼ばれたベルには面白くない部分があったに違いない。

才能のある若手でも、ドラフトで指名されるかどうかは運や巡り合わせ次第の部分もある。もしブルズが38位指名権の行使を決めていたら、ベルではなく、違う選手を指名していたかもしれない。つまり、NBA選手になれなかった可能性もあったということ。いずれにしても、ベルはNBA選手としてのキャリアを歩む機会に恵まれた。それも王者ウォリアーズの一員として。そう考えると、ドラフトに左右されてしまう選手たちの人生模様は、実に興味深い。