取材=鈴木栄一 構成=鈴木健一郎 写真=鈴木栄一、吉田武、FIBA.com

篠山竜青はワールドカップ予選初戦の最終メンバー12名に残り、今日のフィリピン戦に臨む。

Bリーグになって1年あまりの篠山のプレーを見れば、メンバー入りは至極当然と思えるが、それ以前の彼にとって日本代表は長らく遠い場所だった。今の代表メンバーを見ると、大学在学中や卒業後すぐに代表に呼ばれ、そこから短期間で定着した選手がほとんど。ところが篠山はアンダーカテゴリーでの経験はあっても、A代表になると声がかからない。東芝神奈川で結果を積み重ねても、代表選考の輪に入っていけない状況が続いていた。

リオ五輪のOQT(世界最終予選)では代表候補に残ったが、最後の最後で落選。しかし、そこから代表の体制が一新されたこと、Bリーグが始まったことで篠山に日本代表の道がひらけたと言える。29歳で初めて挑む日本代表での大一番を前に、代表への思いを聞いた。

勝っていても代表に呼ばれない『もどかしさ』

──ワールドカップ、その先につながる東京オリンピックに直結する初めての大会です。アジアカップとは気持ちが全然違いますか?

個人的には代表のユニフォームを着ることに変わりはないので、何の予選だからとかあまり関係ありません。代表のユニフォームを着るという時点でその重みは十分に感じているつもりです。

──それでも、日本代表の一員として重要な大会に臨むまでに時間がかかりました。焦りはなかったですか?

焦りはもう、すごくありました。早く呼ばれないと年齢はどんどん上がっていくわけで、その間に若手も出てきます。僕より先に(橋本)竜馬が呼ばれて、それが僕の中で良いエネルギーになりました。「竜馬が呼ばれてるんだったら自分も呼ばれるようにならなきゃ」みたいな。良い意味でそういう活力を彼にもらっていました。

──NBL時代、優勝した東芝神奈川でメインのポイントガードとしてプレーしていても呼ばれなかったわけで、そこは精神的に苦しいものがあったと思います。

勝っているのに呼ばれない。これはそれほど影響力が大きいわけじゃないんだな、というのが自分の中での『もどかしさ』としてありました。チームは優勝しているけど、じゃあ自分はどれだけそこに貢献できたのかと。「数字じゃない部分で」と言ってもらえることはあっても、結局最後は数字だという部分もあります。得点にしてもアシストにしても、出場時間に割には少なすぎると思いました。だから、もどかしさはありましたけど、「なんで呼ばれないんだ」よりも「もっともっとやらなきゃいけない」という気持ちでした。

フィリピン戦では「僕のディフェンスもカギになる」

──ここ1年はずっと代表に呼ばれていますが、代表で地位を固めた手応えはありますか?

ほぼないです。そう言ってもらえることが増えていますが、こうして新しく宇都(直輝)が入ってきていますし、(安藤)誓哉もアルバルクに行って成長しています。ダメだったらすぐ次の人間がいるポジションなので、毎回毎回がテストですよ。実際、今回のフィリピン戦、オーストラリア戦でダメだったら、次の2月に僕は呼ばれないかもしれない。そこは代表に定着したという意識ではなく、12人に残ったからこそ最後のテストに向かわされている、という感じです。

──それでも、これだけ継続して合宿に参加して試合にも出て、気持ちの変化はありますよね?

それはもちろん。最初に長谷川(健志)さんに呼んでもらった時は少しまだ遠慮がちというか、長谷川さんに拾ってもらったようなイメージでしたけど、今は自信を持って代表に来ています。

──フィリピンは技術とスピードのあるバックコートから試合を作るチームなので、ポイントガードのポジションがカギになります。

フィリピンの武器は組織立ったオフェンスよりも個人の能力、1on1の部分が特徴なので、そこにしっかりとプレッシャーをかけて止められるかどうかでかなり流れって変わってきます。そういう意味では僕のディフェンスもカギになるので、しっかり責任感を持って臨みます。

──ようやくここまで来ました。「長かったな」と思いますか?

長かったですけど、ちゃんと思い描いたところまで来ていると感じています。