文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

「ドライブとかジャンパーが生命線になる」

昨日の島根スサノオマジック戦に勝利したことで、サンロッカーズ渋谷は連勝を7に伸ばした。そんな好調のチームの中で存在感を増しているのが長谷川智也だ。プレータイムを求めて今夏にシーホース三河から移籍して来た長谷川は、ここまで全試合に先発出場、大黒柱のロバート・サクレに次ぐ平均25.6分のプレータイムを得ている。

昨日の第2戦では要所の3ポイントシュートと効果的なペリメーターのシュートを次々に決めて14得点を記録。すべてのチームに言えることだが、特にB1で勝ち抜いていくためにはペリメーターのシュート精度がモノを言う。「ドライブとかジャンパーが生命線になってくると思いますし、自分のプレースタイルの中でもチームの中でも、あそこのシュートを決められたら相手もキツいと思うので、そこを今練習してます」と長谷川もミドルシュートの大事さを説く。

今でこそコンスタントに結果を出し続けている長谷川だが、アーリーカップでインパクトを残し迎えたシーズン序盤は苦戦が続いた。3連敗を喫した時は3ポイントシュートが1本も決まらず得点も伸び悩んだ。だがチームの調子が上がるのと並行し、長谷川のパフォーマンスも徐々に上向いていった。

「まず一つはシステムの問題で、フリーランスがすごく増えたことが挙げられます。それとどこのチームもシューターを抑えにくるので、相手のディフェンスとの駆け引きができてるのかなと思います」と上向いた理由を分析。「単純に外国籍選手との2対2やオフ・ザ・ボールのところでコミュニケーションが取れ始めて、そこが最初のほうより良くなってきています」

新しいチームにやって来た長谷川にとって、チームメートとの連携は最も重視する部分だ。「ディフェンスの一つの声やコミュニケーションのところでもっと良い声がけをしようと、スタッツに表れないところを心掛けています」

自分のプレーが勝利に直結「幸せなこと」

三河という強豪クラブから移籍してまだ数カ月だが、単刀直入に移籍して良かったかと問うと、間髪入れずに「良かったです、後悔してません」という答えが返ってきた。それはチームを変えたことで自身の責任が増したからだ。

「向こうにいた時は僕がやらなくても勝利がついてきました。それはそれでうれしいでけど、ただプレーヤーとして自分のおかげで勝ったとか、自分のプレーが勝利につながったと言われたほうがうれしいです。それで負けてしまったとしても、次もっと頑張らなきゃいけないと課題が出てきますけど、やっぱりそれは幸せなことだと思うし、もっともっとうまくなりたいっていう気持ちがあります」

勝敗に直結するプレーがしたいというのは、選手である以上当たり前の願望であり、良いエゴだ。そして長谷川もそういったプレーができていると実感しつつある。

「もちろんできなかった試合もいくつかありますし、負けてる試合もあります。でも徐々にですけど届いてくれてるのかなっていう部分はありますね。前よりもサクレがコミュニケーションを取るようになってきたし、『トモにボールを集めろ』という雰囲気も出てきました。それはうれしいことです」

「どれだけ感情を抑えられるか」が課題

指揮官の勝久ジェフリーは長谷川を「気持ちが強い選手」と評価する。「第1戦の試合に関してなんですけど、第3クォーターは彼しかファウルをもらってなかったんです。ウチは7分間くらいファウルをもらえてなくて、でも智也が積極的にドライブしたり、強いメンタルでアタックしてくれました。とにかく気持ちが強い選手ですから」

指揮官は「積極的にプレーしているから成長があるんだと思います」と長谷川の気持ちの強さを評価する。だがその一方で長谷川はメンタルコントロールを課題に挙げた。

「コートの中で感情が出る選手なので、自分がそれをどれだけ抑えられるかが課題です。嫌な雰囲気の時や僕のシュートが入らない時に他のプレーで貢献するっていうマインドチェンジができれば、もっともっとチームに良い影響を与えられます。試合中の感情の浮き沈みの中で、沈む時をどれだけ上げられるかということ。悪い時に自分で切り替えてやろうと思ってますけど、なかなか難しいです」

そこまでセルフコントロールのできないタイプには見えないが、本人には思うところがあるのだという。だがそのことを自覚している分、その問題を解消する日も早く訪れそうだ。プレータイムを伸ばしチームの責任をもつことに喜びを感じながらプレーしている長谷川。彼のパフォーマンスが現在好調なチームの背中をさらに後押ししていくことになる。