大﨑佑圭

久々の試合に「素直にうれしかったです」

現地2月6日、バスケットボール女子日本代表はベルギーで開催されている東京オリンピック予選(OQT)の初戦で、スウェーデンを相手に75-54で勝利した。日本は前半を25-20と、出だしでオフェンスが重くリズムに乗れなかったことは反省点だが、一方で40分間を通して粘り強いディフェンスを継続したのは評価すべきポイントだ。この堅守に貢献した一人が、先月に電撃的な現役復帰を果たした後では、今回が初の実戦となった大﨑佑圭だ。

『絶対女王』JX-ENEOSサンフラワーズ、そして日本代表の中心選手として大﨑は長年活躍してきた百戦錬磨のセンターだが、それでも妊娠、出産によりこの2年半はコートを離れていた。緊張からボールが手につかないなど凡ミスをしてもおかしくないものだが、そういったことはなし。10分10秒の出場時間で、際立ったプレーこそなかったが、一方で大きなミスもなかった。ブランクの長さ、そしてオリンピック最終予選という緊張感のある舞台だったことも考えれば上々の復帰戦だった。

「素直にうれしかったです」

これが試合後の取材でまず彼女が発した言葉だ。「もちろん内容を突き詰めれば、個人、チームとしての課題はあります。ただ、今日ゲームの日を迎えるにあたり2年前の生活リズムに戻る。日の丸のユニフォームを着て、君が代を聞いてコートに立つ。これは正しい表現なのかは分からないですが『刺激的』でした」

充実した表情でそう語る大﨑は、ブランク明けでも特に緊張はなかったと言う。「不安を言ったらきりがない。それは覚悟の上なので、こういった思いはコートの外に置いてきています」

大﨑佑圭

「自分にとっては新たなチャレンジ」

指揮官のトム・ホーバスは、大﨑について次のように評価する。「悪くはなかった。私が求めるレベルにはまだ到達していないけど、それは仕方ない。2年半もいなかったから(笑)。今日の内容は予想通り、オフェンスはまだまだだけど、ディフェンスはフィジカルにしっかりやってくれました。とりあえず彼女にとって、第一歩としてよい経験になったと思います」

大﨑本人も、自身のパフォーマンスについては「ディフェンス重視で行って、まあまあでした。すごく悪かったわけではないです。ポイントで出て、そこに全力を注げるので集中してできました」と指揮官と同じような感想を語る。

この試合で、東京オリンピックへの挑戦が本格的にスタートしたと言える。「まだ本当に始まったばかりで、オリンピックに向けて最初の通過点を終えた感じです。ここで実戦経験を積めるのは良いこと。現在のプレーを評価しても仕方がない感じ。とにかく自分にとっては、日々をより良いものにしていきたい。それだけです」

このように大﨑は語った後、今回の復帰には「いろいろな見方はできると思いますが、自分にとっては新たなチャレンジという思いがあります」と続ける。そこには、今までの女子バスケットボール界にはなかった道のりでのオリンピック出場を目指すことへの覚悟がある。

「妊娠、出産を経てコートに立つことは胸を張れることだと思いました」と大﨑は力強く言う。この言葉に勇気付けられる女性はスポーツの枠に留まらずたくさんいる。彼女の挑戦は、まず順調なスタートをきった。残り2試合、ベルギー、カナダの強豪相手にどんなプレーを見せてくれるのか、より楽しみになる復帰戦だった。