チームの『甘さ』を払拭するため自らがリーダーに
今シーズンから横浜ビー・コルセアーズの新キャプテンに任命された湊谷安玲久司朱は、10月9日に行われたレバンガ北海道との試合でアキレス腱断裂の重症を負い、戦列を離れた。それでも手術を終えて、「ウズウズしますよね、試合見てると出たいです」ともどかしい気持ちを抱えながらも、「上半身の筋トレと体幹とか股関節周りのトレーニングをしてます」と現在は復帰に向けたトレーニングに打ち込んでいる。
11月11日、湊谷の選手兼アシスタントコーチ就任が発表された。前節の富山グラウジーズとの試合では、ベンチから大きな声を出しチームを鼓舞する姿が目立った。「いつまでも引きずっていられないので。どうやってチームに貢献できるかって思った時にリーダーシップを取って、アドバイスしなきゃいけないので。試合に出てない分、ありあまっているので、声が出ちゃいますよね勝手に」と笑顔がこぼれた。
もっとも、声を出すのはそう簡単ではない。そこにコミュニケーション不足があれば、厳しい指摘が不穏な空気をもたらすこともある。だが、チームに必要である以上、湊谷は臆せずに声をかける。「すごく言います。うざいと思われてるくらい言うようにしています。正直、やりたくない役ではありますけど、チームが良くなるならと思ってやるようにしてます」
本音をぶつけることでストレスが溜まり、チームがギクシャクすることもあるだろう。だが、遠慮ばかりでは強いチームは作れない。昨シーズンの横浜はそのような状態にあり、成績も伴わなかった。「みんな優しくて、例えば誰かがミスした時に、はっきり指摘できる人がなかなかいなかったんですよね」。その状況を『甘さ』と見た湊谷は、一念発起してリーダーシップを取るようになった。
「チームのことを考えたら寝れなかった」
もともと、湊谷はそういうタイプではない。責任感は人一倍強いが、その一方でどこか他人行儀な面があり、チームの輪から一歩距離を置いて全体を見るような一匹狼の部分もあった。湊谷自身もこれを否定しない。「昨シーズンはそうでしたね。キャプテンがいればキャプテンがやればいい、監督の仕事だと今までは思ってました。ベテランが言ってくれるだろうから、僕が言うまでもないなって思ってたんです」
転機はキャプテンに指名されたこと。これで湊谷の本来持つ責任感が前面に出てくるようになった。「キャプテンになってから自然となりましたね。キャプテンにしてもらわなかったらそこまで言ってなかったと思います。今は外から見れているのでどこがダメなのかがすごく分かります。アシスタントコーチにしてもらって、もっと言える立場になりました。監督とか尺野(将太アソシエイツコーチ)さんが言わなかった部分で足りなかった部分を僕が言うようにしています」
キャプテンになり、アシスタントコーチ兼任に。昨シーズンには考えられなかった変化が立て続けに起きている。大ケガをしてしまったのは残念だが、彼自身はもう意識を切り替えている。
「責任感はだいぶ増しましたね、昨日なんてチームのことを考えてたら寝れなかったし。ケガでできなくて外から見てる分、このチームを思う気持ちが今さらに強くなってる気がします。言葉では伝えにくいですが、今まで以上にチームに勝ってほしいと思ってます」
その横浜は湊谷の長期離脱、ジェイソン・ウォッシュバーンのケガによる退団に続き、今度は竹田謙とジェフリー・パーマーが相次いでケガを負い、またしても不運に見舞われた。それでもチームのことを誰よりも思う湊谷が、横浜から甘さを払拭し、何度でも奮い立たせるだろう。今シーズン終盤には、それもできるだけ早い時期の復帰を目指す湊谷だが、それまでも十分にチームに貢献してくれるはずだ。