「役割は明確、ディフェンスでハードにプレーする」
11月12日、川崎ブレイブサンダースは栃木ブレックスに80-71で勝利した。この日の川崎は、第1戦と違い最後までリバウンド、ルーズボールなど球際のプレーにおける強度が落ちず。文字通り40分を通してのハードディフェンスで勝利を手にしたのだが、それが実現できたのも、主力に加えてベンチメンバーの若手の奮闘があったからこそ。北卓也ヘッドコーチの「今日の控え選手の活躍には満足です」というコメントが、その貢献を何よりも示している。
そのベンチメンバーの中でも目立っていたのが、ルーキーの小澤智将だ。日本の男子大学バスケ界といえば、関東に多くの才能が集まり、次に関西リーグというのが主な進路となっている。その中で小澤は東海大九州の出身だ。大学3年次には東海大九州が全日本大学選手権で京都産業大学、白鴎大学と関西、関東の強豪を倒してのベスト16進出に貢献。また、4年次には九州大学リーグの最優秀選手に輝くなど、九州大学界を代表する選手であったものの、ネームバリューの面において他のB1所属のルーキーたちに比べて劣る存在だった。
だが、それもシーズン開幕前までの話。開幕4試合目の滋賀戦で約10分半、10月20日と21日のSR渋谷戦では2試合続けて10分以上と、プレータイムを増やしていく。その後、ケガによる離脱があったものの、この栃木戦で戦線復帰。11日の試合では3秒のみの出場だったが、この日は約19分半と試合の半分に出場。相手の2番、3番を相手にし、粘り強いマークを見せており、今やルーキーの中でも大きなインパクトを残している。
「昨日から復帰でしたが、プレータイムはそんなにもらえませんでした。今日は少しでもチャンスがもらえたら自分の持ち味を出していこうと。そしてディフェンスは自分の中でもできたんじゃないか、ハードにプレーできたとは思います」
こう振り返る小澤は、自身の役割について「チームに入った時から役割は明確で、ディフェンスでハードにプレーすること。今日はそれがよく出せました。これを今後も継続していきたいです」と続ける。
持ち前の守備は「必死に喰らいついていくだけ」
本人も強調するように、小澤の持ち味はディフェンスで「大学の時から、だいだいエースにつく役割でした。そんなにバスケIQが高くはないので、必死に喰らいついていくだけです。ただ、瞬発力には自信があるので、それを継続できるように。今日だったらプレーした20分間、しっかり維持する。それができたら相手も絶対に嫌だと思うので、頑張っていきたいです」と喰らいつく守りには強いこだわりを持っている。
栗原貴宏の故障欠場があったとはいえ、注目を集める栃木との対戦で約20分の出場、そして勝利に貢献した。リーグでも有数の選手層を誇る川崎において居場所を築きつつあるが、「予想以上に使ってもらえているなとは思います。そんなに最初から『俺、試合に出れるぜ!』と思って川崎に来たわけではなかったです」と率直に語る。
大学までずっと九州にいた小澤に『初の首都圏暮らし』を聞くと「正直、全然外にでないです。この前、初めて渋谷に行って、ハチ公前で人の多さに圧倒されました。学生時代、大会以外は都会に来たことないので人の多さには慣れてないです」と初々しい面も見せる。
だが、コートに入れば別人だ。外国籍のセドリック・ボーズマンを相手にしても全く物怖じしないタフなディフェンスを披露した。「自分がついたらセンタープレーをしてくると思っていたので、そこで簡単に押し込まれてイージーなシュートを打たれないように気をつけていました。ただ後半、足がちょっと動いてなくて簡単に抜かれたりしてしまったので、そこを改善してプレータイムを増やしていけたらと思います」と、強い気持ちを見せている。
北コーチ「ディフェンスが必要な時は今のところ小澤」
北ヘッドコーチは、小澤に対して次のように期待を寄せる。「運動能力の高い彼にはディフェンスでエースキラーになってくれと要求しています。彼もそれを目標に日々頑張ってくれています」。川崎のエースキラーといえば栗原だが、「栗原に続くディフェンスマンとして期待しています。状況によってメンバーを変えていきますが、ディフェンスが必要な時は今のところ小澤かと思いますので、もっともっと使って成長させていきたいです」とまで言う。
昨シーズン、川崎がリーグ最高勝率をマークできたのはニック・ファジーカス、篠山竜青を軸とした中心選手の活躍とともに、ケガ人が出てもその穴を埋めるベンチメンバーの台頭があったからこそ。そして今シーズン、日本代表選手は過密日程でコンディション維持に四苦八苦している。また、ジュフ磨々道の引退で帰化枠のアドバンテージがなくなった。激戦の東地区所属となった今、昨シーズン以上にベンチメンバーの底上げが欠かせない。
「自信はついてきていますが、これからまた継続して出してもらうためには、この試合で出た課題を次はこうすると、どんどん改善して自分の力にしていかないといけない」と小澤は言う。プレーに貪欲な小澤の成長は、川崎の王座奪取へのカギの一つとなる。
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