文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

ラスト1秒で勝敗が分かれる劇的な展開に

川崎ブレイブサンダースvs栃木ブレックス、昨シーズンのチャンピオンシップファイナルと同じ顔合わせとなった一戦は、残り1秒にライアン・ロシターの3ポイントシュートで逆転した栃木が86-85で勝利した。

立ち上がりこそ重い展開となったが、それでもニック・ファジーカスが9得点を挙げ、長谷川技がミスマッチを突き、藤井祐眞がブザービーターとなる3ポイントシュートを沈めた川崎が第1クォーターで20-12と先手を取る。第2クォーター、栃木はオン・ザ・コート数が「2」の利点を生かすべくセドリック・ボーズマンにボールを集めるが、野本建吾がフィジカルなディフェンスで自由を与えない。逆にジョシュ・デービスが1on1で仕掛けてバスケット・カウントを連続でもぎ取り、リードを広げた。

だが栃木はここから粘りを見せる。タフショットを決められてもディフェンスの強度を保ち、ブロックショットや速攻によって踏みとどまり、コツコツと点差を詰めていった。

62-67で始まった最終クォーター、この勝負どころで栃木はボールマンへの圧力をさらに強めて川崎にプレッシャーをかけた。プレッシャーをかけられるとファジーカスに頼ってパスが集中する川崎の悪癖を突き、ここでボールを奪っては速攻でイージーシュートの機会を作り出す。残り56秒、田臥勇太のジャンプショットでついに83-83の同点に追い付いた。

ドライブでディフェンスを引き付けた藤井のアシストからデービスにゴール下を決められ、残り4秒で再び勝ち越されるも、栃木はあきらめない。タイムアウト後のリスタート、スローインからロシターにボールが渡った際、マークに付いていたファジーカスの寄せが遅れた。迷わず打ったロシターの3ポイントシュートが決まり86-85。栃木がラスト1秒での逆転勝利を飾った。

「打たせてはいけないシチュエーションでした」

敗れた川崎の北卓也ヘッドコーチは最後の失点について「打たれちゃいけないところでタフショットではないシュートを打たれました」と守備のミスを悔やむ。それでも、ロシターは最後のシュートを打つ前までフィールドゴール12本中成功わずか2本と絶不調。今シーズンの3ポイントシュート成功率も11%と低調で、ロシターに打たせる選択肢も考えられた。だが、北ヘッドコーチはそれを否定する。「パーセンテージが低いのでディフェンスがソフトになった部分はあると思いますが、あの場面は誰に対しても打たせてはいけないシチュエーションでした」と振り返る。

一方、勝った栃木の安齋竜三ヘッドコーチは、チーム全員で戦った結果の勝利だと強調する。「結果的に前半は自分たちがやろうとしているディフェンスが全然できなくて、ハーフタイムでそれができないのなら勝つ見込みもないし、戦う集団としてはふさわしくないという話をしました。後半はどんな状況になっても全員が最期まで一つになって戦った結果がライアンの最後のシュートにつながったのかなと思います」

ヘッドコーチとして初采配となった安齋コーチ。「僕はこのチームにプライドを持ってますし、そういう部分がほとんどファンの人に見せられてなかったり、相手チームにも見せれてなかった。プライドの部分を一人ひとりが持ってチーム全員で戦う。やりきるという部分を集中してやっていこうと話してます」とチームの立て直しに意気込む。

終始リードを保ちながらも終盤に受け身となりエース頼みになってしまった川崎。追いかけるメンタルが最期の逆転シュートを呼び込んだ栃木。高いレベルでの攻防の中、最後に勝敗を分けたのは精神力の強さだった。