増田啓介

自己ベストの内容も「先輩方についていった感じ」

1月25日、川崎ブレイブサンダースは京都ハンナリーズに94-51で圧勝し、前日に敗れた借りを返した。この試合、川崎はデイヴィッド・サイモンと並ぶ京都の2大エースで前日には22得点、13アシストを許したジュリアン・マブンガを1得点、3アシストと封じ込めた。大差で負けている展開から第3クォーター途中でお役御免と、出場時間が20分半に終わったことを考慮しても、見事なマブンガ封じだった。これに寄与した1人が12月に特別指定で加入した筑波大学4年の増田啓介だ。

第3クォーター早々、川崎はマブンガについていた長谷川技が4つめのファウルとなって、ベンチに下がらざるを得なくなる。そこで佐藤賢次ヘッドコーチが選択したのは、経験豊富な熊谷尚也ではなく「身体が強くて押し負けない」と評価する増田だった。彼が指揮官の期待に応えたのは、冒頭で触れたマブンガのスタッツが物語っている。

また、増田はオフェンス面でも前半終了間際にブザービーターで得点を決め、チームにさらなる勢いをもたらすと、勝負を決めた第3クォーターにも6得点を挙げ、計13得点をマーク。Bリーグでは初の1試合2桁得点を挙げると、さらに4スティールも記録した。

攻守にわたってBリーグでは自己ベストの内容となった増田だが、「先輩方が最初にガツンとやってくれて、それについていった感じです」と振り返り、マブンガへの守備についても長谷川を筆頭にチームメートが最初からきっちり抑えて相手のリズムを崩してくれたおかげと強調する。

「マブンガ選手はうまいですし、守る側からしたら嫌なプレーヤーです。ただ、今日は第1クォーターからみんながプレッシャーをかけて、彼がフラストレーションを溜めていたのが大きかったです」

ただ、指揮官も評価する当たりの強さには控えめながらも自信を見せる。「大学の時は4番ポジションもやっていました。ずっとアウトサイドでプレーしていた選手に比べたら、インサイドを経験していた分、コンタクトも得意だと思います」

自身でもこう語るように増田の大きな魅力の一つが194cmで3番、状況によっては2番をこなせる機動力を備えていること。また、かつて4番でゴール下のプレーを行っていた経験はオフェンスでも容易に生まれやすいサイズのミスマッチをついたポストアップで生かされる。

「佐藤ヘッドコーチから、自分やクマ(熊谷)さんはミスマッチだったらどんどんポストアップするように言われています。そして、川崎のインサイドの選手はスリーポイントが打てるのが強み。そこを生かして自分がアタックしてから外に出す。もしくは、そのままゴール下が空いていたらシュートを打つことを遂行していきたいです」

増田啓介

「試合に出たいのは選手として当たり前」

学生時代の増田は、2016年のU18アジア選手権で同期の八村塁が不在のチームでエースとして銀メダルを獲得。翌年のU19ワールドカップへと代表を導くと、ここでも八村の次にプレータイムの多い中心選手として奮闘した。筑波大でも3年時には関東大学リーグの得点王となり、4年生では大黒柱の1人としてインカレ制覇を達成した。

このように見事なキャリアを歩んでの川崎加入だが、「立場も一番下ですし、早く先輩たちに追いつけるようになりたい」と、謙虚な発言が目立つ。ただ、一方で「昨日はプレータイムがなくて悔しい思いをしたので今日は頑張ろうと心に決めていました」と負けん気はしっかり持っている。故障者が多いチームの現状にも「試合に出たいのは選手として当たり前で、チャンスがあったらどんどんつかんでいきたい」と意気込んだ。

現在、川崎は篠山竜青が離脱中ではあるが、その穴を埋めるように本来は2番の辻直人がポイントガードとして新境地を開き、効果的な働きを見せている。その分、2番、3番ポジションに出場時間が生まれており、増田にとってはステップアップのためのまたとないチャンスだ。

「誰よりもスプリントし、ルーズボールに飛び込む。ディフェンスでしっかり準備して、ハードにプレーする。まず、気持ちの面では試合に出たら常に負けないようにしていきたいです」。これこそまさに川崎の根幹であるハイエナジーのディフェンスで最も大事な要素である。

篠山、マティアス・カルファニに続き、ジョーダン・ヒースも離脱した。詳細はまだ不明だが、鎌田裕也も昨日の試合途中に負傷と満身創痍が続く川崎にあって、一刻も早い増田の台頭が求められている。