日本代表の意義と責任を誰よりも知る精神的支柱、橋本竜馬「このタフな状況を楽しめる人でありたい」

2017/11/09
日本代表
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文=鈴木健一郎 取材・写真=鈴木栄一

「チームに必要な存在に自分がなっていかないと」

橋本竜馬はいつもチームの輪の中心にいる。

日々の練習から常に声を出して自分を奮い立たせ、良いプレーを一つひとつ見付けては称えることで、リーグと代表が入り混じる過密日程をこなす仲間を盛り立てる。橋本とアイラ・ブラウン、この2人がいなければ代表合宿の『熱気』はガクッと下がってしまうに違いない。

「雰囲気も重要だと思います。4年ぐらい代表に呼んでもらっていますが、その中で良い成績を挙げた時はどういう雰囲気でやってきたのか、そういう経験を自分がコートの中で出し、みんなに伝えていければ」と、中堅からベテランに差し掛かろうする29歳の橋本は言う。

フリオ・ラマスのバスケットボールについて「根本としてはアジアカップと変わりませんが、コーチのやりたいことは非常に明確になっています」と橋本は言う。「オフェンスではシュートセレクションでもっとアグレッシブに。チャンスがあればしっかり狙い、みんなが良いシュートを打っていければと思います。ディフェンスは前回よりも激しさを求められているので、攻撃的なディフェンスなんだけど固く守るのを目指しています」

では、その中でどんなプレーをして、どんな個性を出していくのか。「どこがストロングポイントでどこが劣っているのかは自分で分かっています。その中でストロングポイントを出すために僕にできるのは、一回一回の練習の質を上げていくことです。そこで自分がみんなのギアを上げる存在になっていけたら。チームに必要な存在に自分がなっていかないといけないと思います。まずは良い練習があって良い試合ができるということ。それを全員に分かってもらえる存在になりたいです」

代表サバイバルの質問のつもりだったが、橋本が語ったのはあくまでチームのことであり、その中で自分がどんなプラスをもたらせるかだった。「練習に対する姿勢は三河でも代表でも変えていません。ここに来たからその姿勢が出せるとは思っていないので。三河だから、代表だからというのは考えていないです」

「ブレずに自分のバスケットボールを突き詰めていく」

ワールドカップ予選の登録メンバーは12名。ポイントガードの争いは橋本、富樫勇樹、篠山竜青の3人に、安藤誓哉と宇都直輝が割って入る熾烈なものとなっている。代表の常連である橋本にとってもその座は安泰ではなく、リーグ戦と合宿を通じて勝ち取らねばならない。スタッツだけ見れば、『コントロール型』のポイントガードである橋本には分が悪いが「自信はあります。それだけじゃない部分がバスケットボールは非常に多くを占めているので」と動じない。

「スタッツも残さないといけませんが、そこはバランスというかチームの状況もありますし、それじゃないところを評価されて選ばれてきたというのもあったと思います。難しいところではありますが、ブレずに自分のバスケットボールを突き詰めていくことだと思っています」

質の高い練習が強いチームを作り上げると信じる橋本にとって、日々の練習から全く気を抜けない今のチーム内競争は歓迎すべきものだ。「楽しみでもあるし、ヒリヒリと胸を締め付けられるような時もあります。でも、それを含めて全部が日本代表だし、バスケットボールです。いつも通り、自分からハッスルして一生懸命バスケットボールに取り組みます」

インサイドに強みのある三河と日本代表では、自ずとポイントガードとしての橋本のプレーも変わってくる。「どうやって勝つかのイメージが全然違ってきます。三河でのイメージはできているので、今のうちから代表でのイメージをつけていく。それはみんなで作り上げていきたいです。綺麗事を言うようですが、バスケットボールはメンタルの部分が非常に大きいと思っています。技術ももちろん大切ですが、厳しい練習を今やっておかなければ試合で厳しい展開になった時についていけません。そこで相手を上回るには全員で歯を食いしばって戦うしかない。代表戦では特に、一つになって強い気持ちを出さないと勝てません。それを練習から出していきます」

「自分自身をもう一度見つめる良い機会です」

試合に勝つために気持ちを出してプレーする。この他にももう一つ、橋本には考えがある。Bリーグが始まり、2020年に東京オリンピックを控えて注目が集まる今、日本代表がバスケ人気をリードしなければいけないということだ。「観客の方たちがこのチームを見ていて『気持ちいい』とか『感動した』と感じるのは僕たちの気持ちが見えた時なので、日本代表はそういう試合をいつもやっていかなければいけないと思っています。たくさんの方に応援していただきたいですし、自分たちは『日本代表の試合を見に来てよかった』と思ってもらえるような試合ができるよう、チームとして戦っていきたいです」

この1年はケガを抱えながらのプレーを強いられただけに、コンディションには人一倍気を遣っている。「土日の試合とこのハードな練習の繰り返しで、休息を取ることは一番に考えています。食事とか栄養面も変えていかなければいけない。そういう意味では自分自身をもう一度見つめる良い機会ですね」

シーホース三河でリーグ戦を戦い、すぐさま代表合宿。このサイクルについて「相当タフですよ」と橋本は苦笑する。「全体的にパフォーマンスが落ちている選手も多分いるだろうし、そう感じている記者さんもいると思います。でもその中で一日ポンと頑張る選手、気持ちの面で『今日はやってやるぞ』という選手が出てくる。自分はそういうところを見るのが楽しみで。非常にタフですけど、この状況を楽しめる人でありたいです」