文・写真=丸山素行
「自分の強みはディフェンス、そこだけは手を抜けない」
昨日公開された日本代表の強化合宿。もちろん、日本人ビッグマンとして長く日本代表を支えてきた太田敦也の姿もそこにはあった。
身体を張り献身的なプレーでチームを支える太田はチームに欠かせない存在だ。「真面目にスクリーンをやるとか、ディフェンス面が自分の強み。そこがアピールできたらと毎回思ってやっています。そこだけは手を抜けないし、一番やれなきゃいけないと思って普段の練習もやっています」と自身の強みを説明した。
一見すると地味だが、位置やタイミングなど細かな確実性が問われるスクリーンは難しく、そして重要だ。特に現代バスケではほとんどの国でピック&ロール戦術を採用しており、オフェンスのスタートはスクリーンから、と言っても過言ではない。指揮官フリオ・ラマスからの評価についても「ナイスだと褒められるのはスクリーンとか、そういうところです」と太田は言う。
「対戦すれば負けたくないし、対抗心はすごくある」
世界と戦う上で206cmの太田のサイズは不可欠となってくる。必然的に太田の代表入りの可能性は高いと思われるが、意外にも本人にその自覚はない。「現状に満足したくないというのもあるし、自分自身上手いとは思っていないので、定着したとは思っていません。ビデオを見てても下手だよなあって印象しかないです」
自己評価が低すぎる気もするが、決して闘争心がないわけではない。太田と同じく黄金世代と呼ばれた同期の竹内公輔、譲次に対して、「あいつらのほうがうまいし、正直、周りの評価も上なんだろうなって思うんですけど、それでも対戦すれば負けたくないし対抗心はすごくあります」と日本人ビッグマンとしての矜持は忘れない。
チーム内競争に闘志を燃やす一方で、新たな戦力は歓迎している。初めて代表候補となった熊本ヴォルターズの中西良太については、「センターでやれる選手は少なく、僕らの世代はたまたまデカいのが3人いましたが、下から入ってこなかった。中西君が来て一緒にやれるのはうれしいです」と言う。
代表の重み「責任を持ってプレーしないといけない」
普段は温厚なキャラクターの太田だが、リバウンド重視の今回の練習では鬼気迫る表情が目立った。「使い分けてるつもりはないですけど、自然にそうなります」と本人は言うが、特に今回のそれはラマスコーチが代表にもたらしたものだ。
「一番違うのは練習の取り組み方が全員変わってきていることです。ラマスが来て一気に変わったという印象です。前までが不真面目だったというわけじゃないですけど、ゲームライクというか、常にディナイをやったり、最初からやれてるというのはここにきて初めてですね」
「これが一番できるとアピールするのはスクリーンとかディフェンス」と前置きするも、「チャンスがあればシュートを決めて、こういうこともできるっていうことは伝えていきたい」と自身を売り込む姿勢を見せる。実際に巧みなスピンムーブを披露し、得点力もアピールしていた。
太田の発奮は、ラマスにより日本代表のプライドを刺激されたということ。それだけに、常連組とは言え代表生き残りにただならぬ覚悟を持っている。「選ばれた選手は責任を持ってプレーしないといけない。代表というチームのために身体を張って、そこで腕1本脚1本、なんならそこで命を使い切るくらいの気持ちを持って僕はやっている」
今までにないくらい熱い気持ちで合宿に臨んでいる太田の、普段の温厚な表情とのギャップには驚かされた。3ポイントシュートやダンクなど目立つプレーに目が行くのも分かる。だがスクリーンやリバウンドなど、身体を張る献身的なプレーにも注目してほしい。そして日本のために身体を捧げる覚悟を持った太田の働きに期待したい。