鈴木裕紀

チームスタッフの訴えを受けて調査、パワハラと認定

1月21日、Bリーグは島根スサノオマジックの鈴木裕紀ヘッドコーチによるパワーハラスメント行為が認められたとして、制裁を発表した。

大河正明チェアマンによれば、昨年8月に香川ファイブアローズの衛藤晃平ヘッドコーチが選手へのパワハラで制裁を受けた直後に、最初は第三者を通じて匿名で、後に被害を受けたチームスタッフ本人からBリーグにパワハラの訴えがあった。これを受けてリーグは島根に調査を指示。島根の依頼を受けた第3者の弁護士が関係者にヒアリングを行い、パワハラ行為があったという報告書をまとめた。

チームスタッフに対する違反行為の内容は次の通り。

・海水浴場にて泳げないと事前に伝えていたA氏に対して、泳ぐことを強要した行為。その後、対象のスタッフはその夜に体調を崩し嘔吐した。
・2日にわたり、練習後、A氏にシュート勝負を求め、途中から食事代を賭けると一方的に宣告し、シュートを外す度に選手の前で侮辱し、2日とも食事代を払わせ、食欲がなく残した食事の完食を強要するなどをした行為。
・A氏に対して日常的に叱責し、時に侮辱する発言をした行為。

また、調査を行う中で選手に対する次のパワハラ行為も判明している。

・解雇をほのめかす発言や殊更きつい口調で叱責し、精神的に苦痛を与えた行為。そのためB選手は嘔吐をすることも頻繁にあった。

島根からの調査報告を受けたリーグは裁定委員会で審議を行い、追加調査を行った上で処分を決定している。鈴木ヘッドコーチに対しては『2カ月間の公式試合に関わる職務全部の停止』が科された。これは1月20日に下った処分で、今日の名古屋ダイヤモンドドルフィンズとのホームゲームから適用される。

また、このパワハラ行為を制止できなかったという理由で、島根の堀健太郎GMに『譴責および制裁金10万円』、篠原滋アシスタントGMに『譴責』、また島根スサノオマジックには制裁金30万円の処分が科されている。

大河チェアマンは「時代錯誤」、「残念以外の何物でもない」と厳しいコメントを出している。

島根スサノオマジック

「本人もパワハラ行為があったことを認めている」

同じく1月21日に島根スサノオマジックの川﨑寛代表取締役CEO、中村律代表取締役COOも会見を行った。今回の経緯を説明するとともに、鈴木ヘッドコーチについては「本人もパワハラ行為があったことを認めている。自分がやったことはパワーハラスメントのつもりで行ったわけではないが、実際にそれに当たると認識しており、深く反省している」と語る。

就任3年目のシーズンを戦っている鈴木ヘッドコーチは、熱く激しいスタイルでチームを引っ張っていくタイプの指導者。このスタイルに対して川崎CEOは、「これまでは正直、頼もしいという印象を持っておりました」と率直な思いを明かし、中村COOも「現場を預かる責任者として選手への声掛け、練習の強度が今までのコーチと比べると高いと感じていました。それが行きすぎたという認識は持っておりませんでした」との印象を語る。それでも2人は「度を超えた指導は、今は許されるものではない」と断言。クラブとして至らなかったことを認めた上で、コンプライアンス規定そのものの再整備、ハラスメント行為の通報窓口の設置、また選手やスタッフ、フロントへの周知や教育の徹底を約束した。

選手たちには1月20日の練習後に、川崎CEOからハラスメント行為があったことと処分の内容が伝えられている。一部の選手は弁護士によるヒアリングを受けていたが、他の選手はこの時に初めて知ることとなり、ショックは小さくないだろう。今日の名古屋D戦については篠原アシスタントGMが指揮を執る予定だが、その先については鈴木ヘッドコーチの去就を含めて、「まだ全くの未定」とのこと。

川崎CEOは「ヘッドコーチが抜けるということは厳しい環境だと感じている。今いる選手とスタッフでどう奮起してもらうか。スタッフが手薄な部分はもともとあるので、我々としてもフォローしていくことを考えたい」と語るが、フロントとしては再発防止の手立てが優先。「今後二度と発生させない。近い事案があったとしても我々に報告が上がって来る仕組みを構築したい」と語った。

島根はここまで10勝19敗。大きく負け越してはいるが、昇格組ながらも粘り強い戦いぶりで残留は十分に狙える位置に付けている。B1に初昇格した2017-18シーズンには11勝しかできず降格したことを考えれば、B1への再挑戦となる今シーズンは成長を感じさせていた。今日の試合はもちろん、来週も水曜開催がある過密日程に際してチームがどれだけまとまって戦うことができるか。今日の戦いぶりが注目される。