ブランドン・イングラム

周囲のお膳立てもあり平均25.6得点をマーク

注目のドラフト全体1位ルーキー、ザイオン・ウィリアムソンが欠場を続けているペリカンズは、他にもケガ人に悩まされており、ここまで16勝27敗と苦戦しています。ですが、主役級の選手がいないことで残された選手が伸びることに繋がります。ルーキーのジャクソン・ヘイズは65%を超えるフィールドゴール成功率でフィニッシュ能力を伸ばし、無名のケンリッチ・ウィリアムズは複数のポジションを埋める役割を果たしています。

そんなチームでスコアラーとしての役割を強く求められたブランドン・イングラムは、平均25.6点と結果を残しています。自分のタイミングで自由にシュートを打てることが飛躍の理由の一つであり、これもザイオンの欠場がもたらした成長だったとも言えます。

ルーキー時代からケビン・デュラントと比較されていたイングラムは長い手足から繰り出す高い打点のジャンプシュートが最大の特徴で、ドライブでゴール下に飛び込みダンクやレイアップに行くよりも、途中で止まって打つパターンを得意とします。このジャンプシュート自体は止めにくくて効果的なのですが、現代オフェンスではゴール下まで飛び込んだ方が確率が高いため、あまり好まれません。高さはあるもののフィジカルコンタクトからレイアップを決めきるのが得意ではないイングラムは、ジャンプシュートを選ぶのですが、これまでは安定感を欠きコンスタントに得点を伸ばせませんでした。

それが今シーズンはミドルシュートの確率が9%も向上し、47%を記録しています。ジャンプシュートが高確率で安定していることで、ディフェンスは前に出て対応せざるを得ず、それが1試合あたりのドライブの回数を3.8回増やすことに繋がっています。高確率のジャンプシュートとドライブの組み合わせがイングラムを進化させているのです。

シュート力の向上は3ポイントシュートでより顕著になっており、1.8本だったアテンプト数が6.2本と大幅に増やした上で成功率は40%以上をキープしています。まさにデュラントのような活躍ぶりですが、イングラムの3ポイントシュートはキャッチ&シュートが多くを占めており、ドリブルで切り崩してのシュートは極めて少なく、チームオフェンスの中でオープンな状況を作れていることも見逃せません。

ペリカンズのチーム得点王はイングラムですが、エースと言えるのはドリュー・ホリデーで、そのホリデーは自分で得点することにこだわらず、自分にマークを引き付けながらテンポ良くパスを回します。昨シーズン所属していたレイカーズは1試合当たりのパス数が277本だったのに対して、ペリカンズは312本と大きく増えており、イングラムはパスを回すチームオフェンスの中で無理なく3ポイントシュートのアテンプトを増やすことになりました。

もともと確率はそれほど悪くなかったものの、シューターではなくオープンにならないと打たないイングラムに打たせるためのオフェンスを、レイカーズは構築していませんでした。しかし、ペリカンズでは3ポイントを打たせるための形が作られており、イングラム自身のシュート力向上だけでなくチームからの信頼が積極的なアテンプトに繋がっています。

ケガ人に苦しんだシーズン前半でしたが、その間にイングラムが安定したスコアラーに成長したことで、ペリカンズの戦い方には次第に安定感が出てきました。トランジションの連続でハイスコアゲームをしては終盤に失速していたのが、最後まで戦い抜ける試合が増えてきたことで、ここ1カ月間は10勝5敗とチーム状況が大きく上向いています。良い流れになってきているだけに、注目のザイオンが復帰してもイングラムを中心にオフェンスを構築する形が続くのではないでしょうか。ザイオンがどれだけ活躍するかを別にしても、イングラムの成長はペリカンズにとって大きなプラスとなっています。