文・写真=鈴木栄一

「まだまだ物足りないという印象はあります」

10月29日、琉球ゴールデンキングスはリーグ屈指の強豪である千葉ジェッツ相手にオーバータームまでもつれた熱戦を68-60で制した。この試合、ベンチスタートから的確な状況判断と相手守備の隙を突くアタックで勝利に貢献した石崎巧は、次のように試合を振り返った。

「単純にミスが少なかったです。(連敗を喫した前週の)島根スサノオマジック戦に比べて、最終的なオフェンスの判断が良くなりました。先週は僕たちのアドバンテージがどこか理解しながら戦えていなかった。今日はピック&ロールでチャンスを作れていた。そこが千葉との違いになったと思います。点数は伸びていなかったですが、相手にとって嫌な攻めは続けていました」

難敵である千葉からの勝利は、チームにとって大きな意味を持つ。「今日の勝ちは大きかったです。島根戦からディフェンスについては、コートに出ている全員が持てる力を出してくれていました。それが結果につながっていないのは、ひょっとすると根本的な部分で崩れていくことにもなりかねない。優勝候補と言われている相手に、自分たちのスタイルを貫いて勝利できたことは僕たちにとって自信にすべきことで、これから上向きになれる要素だと思います」

だが一方で「ただ、2つ勝ちたかったですし、島根戦も勝ちたかったです。成果を得た週末でしたが、まだまだ物足りないという印象はあります」と現状に満足してはいけないと強調する。

「流れが悪い時に、ゲームコントロールをする」

今オフ、リーグを代表する大型補強を行い選手層が一気に厚くなった琉球ではあるが、それでも卓越した戦術眼、1番から3番まで複数のポジションをこなせる器用さを備える石崎は、様々な局面に対応できる選手として大きな存在。スタッツより何倍ものインパクトをチームに与えている。

「流れが悪い時に、ゲームコントロールをする。一番、適応力がある人間として、ゲームの流れをくみとりながら最終的に勝ちに持っていく仕事を自分がしていくべき。これまでの起用のされ方から、そういう役割を与えられていると理解しています」このように石崎は、自身の仕事をとらえている。

また、試合の状況、他の選手との組み合わせによってポジションが違うことにも「どのポジションでも根本的な部分でやることに大差はないです。ヘッドコーチの要求に応えてコートの中でやるべきことをやるだけです。バスケットボールを長年やってきた中で、そういうことにやりがいを見いだしている自分はいます」とすんなりと順応できている。

盟友の佐々は「選手としてやりがいのあるコーチ」

『ヘッドコーチの要求に応える』。この部分において、チームで誰よりも指揮官の意図を理解しているのが石崎となる。佐々宜央ヘッドコーチとは東海大学で同級生。当時はアシスタントコーチと中心選手という間柄で、大学日本一を達成している。オフコートでの付き合いは全くないという2人であるが、ことバスケットボールについては大学時代から「しゃべることも多かったし、話をしていく中でたどり着く答えが同じになることは多かった」と、一人のコーチ、一人の選手として相通じるものは多い。

プロの世界でヘッドコーチと選手という関係で再びチームメートになった今、石崎は「昔に比べて、偉そうにものをいうことは少なくなりましたね(笑)」と冗談を言うも、互いをバスケットボール人としてリスペクトする関係は同じだ。

「考えていることを理解できるから、短い言葉で何を言いたいのかは伝わりますし、伝えられると思います。もちろん選手に対して厳しい言葉を投げかけますが、結果が出たことに対して自分に何ができるのか常に問いかけているコーチ。そういった部分でも、選手としてやりがいのあるコーチだと思います」

現状について「オフェンスでは特に安定しない部分はあります。シュートが入る、入らないのレベルではなく、それこそオフェンスの理解度の部分でまだまだ磨いていかなければいけないです」と石崎は課題を挙げる。だからこそ、豊富な経験を生かし、「自分ができるのはオフェンスで解決策を見いだし、試合に勝てる方法をみんなに示すこと。そして、他の選手たちの自信になる結果を与えてあげたいと思います」と、意気込みを語っている。

指揮官の意図を誰よりも理解している百戦錬磨のマルチプレーヤー。様々な部分で貢献できる石崎は、琉球の縁の下の力持ちとなっている。