ライアン・ロシター

ロシターのハイパフォーマンスで辛勝

天皇杯ファイナルラウンド、宇都宮ブレックスは富山グラウジーズを74-65で下し、ベスト4へ駒を進めた。

最終的に9点差がついたが、残り2分半を切った時点で2点差と、スコア以上に拮抗した内容だった。それは「自分たちからペースを上げたかったですけど、なかなか上がらなくてうまくゲームを運ばれた。全部イマイチ」という安齋竜三ヘッドコーチのコメントからも明らかだった。

レオ・ライオンズがボールを運んでスローテンポに持ち込む富山に対し、宇都宮は得意のトラップディフェンスを仕掛ける機会が少なく、トラップに成功しかけるもギリギリのところでその包囲網を破られるなど、激しいディフェンスから流れを持ってくることができなかった。

一方で富山のディフェンスは機能しており、「ビッグマンもそうですが、ボールマンもプレッシャーに負けたりしてスクリーンがしっかりかからず、それでズレが生まれなくて良いオフェンスにならないシーンが多々あった」と安齋ヘッドコーチも認めた。

それでも、この接戦をモノにできたのは、終盤に大黒柱のライアン・ロシターが攻守に躍動したからだ。ロシターはチームハイの21得点を記録したが、そのうち11得点を、1点差に迫られた最終クォーター残り約6分間に固めた。さらに最終クォーターの2ブロックを含む5ブロックショットに5アシストと、試合を通じて高いパフォーマンスを見せた。

「天皇杯は試合前のウォーミングアップが15分のみ、アリーナも違うなどいつもと勝手が違う。スロースタートになることは起こりがちで、タフゲームになってしまった」と、試合を振り返ったが、「これは一発勝負のトーナメントであり、いつも以上に内容どうこうではなく結果だ」と、勝ち切ったことで安堵の表情を浮かべた。

ライアン・ロシター

川崎との準決勝「グッドゲームになるだろうね」

終盤に決定的な仕事をしたロシターだが、試合の中で波があったのも事実。自身も「個人的には第1クォーターと第4クォーターはOKの出来だったけど、第2クォーターと第3クォーターはダメだった。特に守備で集中力に欠けていた」と、話した。

実際、最終クォーターの序盤には軽率なターンオーバーを犯した直後に交代を告げられた。安齋ヘッドコーチはその場面をこのように振り返った。「その前にスクリーンをかけてなかったのが2回あって、そのままターンオーバーをしました。ルールをそれで3回破っているのですぐ交代です。チームの規律を守るためには必要で、誰であれやらなかったら代えます」

だが、結果的に一度ベンチに下がったことで気持ちをリセットできたことが終盤の決定的な活躍に繋がり、「そのまま終わらないというのが、あいつの良いところですね」と、安齋ヘッドコーチは笑顔を見せた。

明日の準決勝ではアルバルク東京との接戦をモノにした川崎ブレイブサンダースと対戦する。川崎は今シーズンの開幕戦で連敗を喫した相手だが、ロシターは「開幕節での連敗のリベンジといったメンタルにはならない。あれはもう終わったことで前に進んでいる」と気負うことなく、「川崎は良いチームだ。ともに先週のリーグ戦で連勝が止まってハングリーな状態だ。グッドゲームになるだろうね」と、好試合になることを予想した。

安齋ヘッドコーチは最後に川崎戦のキーポイントを語った。「やるべきことを40分間やらないと勝てる相手ではないのは分かっています。ウチのビッグマンたちがニック(ファジーカス)選手や(ジョーダン)ヒース選手にプレッシャーをどんどんかけられるかどうか。相手を疲れさせて、第4クォーターの残り5分でウチが走る展開になれば一番良い」

現在リーグ首位を走る川崎と1ゲーム差でそれを追う2位の宇都宮。トップ2が激突する準決勝は明日18時開始となる。