「ハーフコートバスケットでは差が付きません」
12月26日に行われたウインターカップ男子3回戦。福岡大学附属大濠(福岡)は昨日の開志国際(新潟)に続き優勝候補の一角となる洛南(京都)と対戦した。
出だしは大濠。昨日の快勝の勢いをそのまま持続するように、強引なアタックからシュートをねじ込んで先行するが、無理な勢いは長くは続かない。洛南はタフな守備を持ち味とするチーム。スコアラーの横地聖真だけでなくセンターの木林優にも徹底したマークでイージーシュートのチャンスを与えず、ディフェンスからリズムを作って逆転。19-15とリードして第1クォーターを終える。
大濠は当たりの激しさ、ボールへの執着心は見せるものの、相手が待ち構えるインサイドに個人個人がドライブで仕掛けては止められ、なかなか良い形が作れずにフラストレーションを抱えながらのプレーとなった。
前半を終えて30-30。同点ではあるが洛南のペースで試合が進む状況、片峯聡太コーチは攻守に改善を施した。オフェンスではボールスウィングを意識してコートを広く使うこと。ディフェンスでは受け身に回って、足が止まった状態でシュートを打たれていたのを改善し、自分たちから足を動かす攻めのディフェンスで、リバウンドを取った時点で攻めに転じやすい形を作ること。
片峯聡太コーチは言う。「洛南さんを相手にハーフコートバスケットでは差が付きません。走る展開が出せれば10点、20点と差を付けられると踏んでいました。そこに至るまでに洛南さんの1年間のチーム作りがあって時間がかかりました。今年は何度も対戦していますが、毎回ウチが最初にリードしていたんです。『冬の洛南』を警戒していましたが、やっぱりやりにくかったです」
ハーフタイムでの攻守の修正が勝利を引き寄せる
この修正が功を奏して後半は大濠のペースとなる。トランジションの回数が増え、中央突破一辺倒だった攻めに変化が出て洛南ディフェンスを振り回すように。強引なアタックを繰り返していた横地はディフェンスリバウンドをがっちりと抑え、速い攻めの起点となった。
木林は相手が態勢を整えるより先に前へと飛び出し、ディフェンスを引き付ける。ウイングの位置から西田公陽が自らのドライブと木林のポストアップを使い分ける。相手の注意がそこに向けば岩下准平がトップから3ポイントシュートを狙う。横地の強引なアタックもディフェンスが広がった状態であれば威力は倍増する。前半はほとんどなかった、木林のゴール下でのイージーな得点機会も増えて、大濠がリードを広げていった。
横地は前半こそ熱くなりすぎた部分もあったが、エースとしての重責を背負って果敢なアタックを繰り返し、19得点18リバウンドを記録。また木林は15得点16リバウンド。前半は沈黙したが、後半は自ら呼び込んだチャンスを高確率でモノにして、チームに流れを呼び込んだ。
終盤に洛南はオールコートプレスを仕掛けるも、大濠は冷静にかわしてボールを失わず、逆にプレスをかいくぐっての得点でリードを広げていく。残り1分40秒、西田公陽の3ポイントシュートで68-52としたところで勝負あり。最終スコア75-60で大濠が勝利した。
木林優「すぐもらってターンするプレーに徹しました」
「序盤はミスが多くてチームの足を引っ張ってばかりでした」と木林は言う。後半に変化したのは走る意識だ。「早い段階でシールして、すぐもらってターンする簡単なプレーに徹しました。とりあえず走って、スペースがあればシールする。最初に上手く行ったので、それを続けました」
相手ががっちりと守るハーフコートバスケットで違いを生み出すのは、タレント揃いの大濠であっても簡単ではない。昨日の開志国際戦では速い展開からの3ポイントシュートが武器となったが、今日はチームオフェンスでゴール下の木林にイージーなチャンスをお膳立てしたことがリードを生み出した。
木林は言う。「チームには勢いがあるので、このまま行けば決勝まで行けると思います。でも自分はまだ気持ちの弱さがミスに繋がったりするので、ここからの試合で修正したい」
相手のバスケットに応じた戦い方を可能とする引き出しの多さが大濠のストロングポイント。片峯コーチの采配はもちろん、それに応える選手たちの奮闘が光る快勝だった。