文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

「自分らしさというのは全然出せてないです」

Bリーグ第3節、横浜ビー・コルセアーズはアルバルク東京に2連敗を喫した。特にオフェンス面では2試合連続で50点台にとどまった。

今節からスタートを外れた細谷将司は言う。「2日連続50点台ではどう頑張っても勝てない。自分たちはとにかく得点を取らなくては」

約1年前、10月9日の三遠ネオフェニックス戦で細谷は当時の最高得点記録となる39得点を挙げるなど、得点力のあるポイントガードとして一躍リーグでその名を知られる存在となった。だが今シーズンは一度も2桁得点がない。さらにチームも4連敗とあって「ここ6試合自分らしさというのは全然出せてないですね」と、細谷は自分の不甲斐なさに意気消沈していた。

「自分自身を見失っているわけではないんですが」と前置きをするも、ネガティブな言葉が続く。「去年とは違うアグレッシブさを求めているんですけど、シュートを打つタイミングだったりで自分がイメージするものとかけ離れているので、そこで躊躇したり、パスを選択したりとか。アシストは去年より多いですが、でもそこじゃないですし、その分点数も伸びてないです」

まだ6試合ではあるが、昨シーズンに比べシュートの試投数が1試合平均7.8から4.8へと大きく落ち込んでいる。アグレッシブの言葉とは裏腹に、シュートが打てていない。

ヘッドコーチ交代による戦術の変化が影響しているのかもしれないが、細谷は「心の部分で何か引っかかってるというか、今すごくもがきながらやっていて、僕自身だと思います」とあくまで自分が原因と話す。

それでも「もう一つ上にいくための悩みというか、そういうことだと思っています」と、ここで直面している壁を乗り越えることがステップアップにつながるととらえている。

アレクとウォッシュバーン、痛すぎる戦線離脱

横浜の得点力不足は確かに深刻だが、低迷の主たる要因が主力に相次いでいるケガであることは言うまでもない。今シーズンからキャプテンに任命されて意欲に燃えていた湊谷安玲久司朱が右足アキレス腱断裂の大ケガ。さらには大黒柱のジェイソン・ウォッシュバーンも練習中に負傷と不運が続いている。

バスケットボールは足し算ではないが、湊谷が平均7.0得点、ウォッシュバーンが平均12.0得点と、単純計算で19点分の得点力が失われている。この状況を問うと細谷も「呪われてるんじゃないか」と苦笑いを浮かべるしかない。「正直に言って、アレクさんがいないのはかなりでかいですし、ジェイソンも練習中にやってしまったって。こんなこと言いたくないですけど、こんなタイミングで呪われてるんじゃないかなって」

しかし、長いシーズンにケガは付きもの。起きてしまった以上は現状の戦力で戦うしかない。細谷もそれは理解しており、「言い訳にはできないですし、残ってるメンバーでベストを尽くさなければいけないです。とにかく今は我慢の時です」と言う。

「ファンの皆さんに結果で応えなきゃいけない」

チームは窮地に立たされ、自身も調子が上がらずもがいている。それでも細谷は「これを乗り越えて一つ成長できれば、横浜は本当に強いチームになれます」とチームの可能性を信じている。

「カチッとハマる時間帯をいかに長くするかというところですね。去年それを経験してるメンバーが残っているので、僕が成長しないとこのチームは勝てないというのは僕自身も分かっているので」と自分にプレッシャーをかける。

A東京戦にはアウェーにもかかわらずたくさんの横浜ブースターが会場に足を運んだ。さらには微妙な判定で時計が止まった際には、チーム名を連呼しA東京以上の声援で選手たちを鼓舞し、ホームさながらの雰囲気を演出していた。

そんな心強いファンのためにも細谷は必勝を誓う。「ファンの皆さんに結果で答えなきゃいけないと思っています。厳しい状況ですけど、その中でどうやって勝っていけるかっていうのをチーム全体で考えていきたい。とにかく今は我慢して勝つことが一番の薬になると思うので、とにかく勝つことです」

何事も0から1を生み出す作業が最も難しい。だがその1が生まれた時、事態は驚くほどスムーズに好転するはずだ。もがき苦しむ細谷がこの苦難の嵐を乗り切った時、その行く手には虹がかかるかもしれない。まだ6試合、航海は始まったばかりだ。