ダブル・ダブルの数字以上に大きかった存在感
大学バスケットボール日本一を決める今年の女子インカレは、例年のように熱戦が繰り広げられたが、最終的には第1シードの東京医療保健大が下馬評通りの強さで3連覇を飾った。
決勝の白鷗大戦では、ともにシュートを決め切れずロースコアの出だしとなるが、途中から持ち味の素早いトランジションを発揮した東京医療保健大が18-6と抜け出した。その後、白鷗大の粘りに遭い点差は縮まるが、第4クォーター中盤に突き放した東京医療保健大が72-60で激闘を制した。
この試合、勝敗を分ける大きな鍵となったのがリバウンドだった。白鷗大の佐藤智信ヘッドコーチは、「リバウンドで互角に戦えれば、第4クォーターに勝負に行ける」と目論んでいたが、43-53と大きく水をあけられた。
東京医療保健大がゴール下の争いを制するのに、大きく貢献したのが藤本愛妃だ。身体を張ったプレーで10リバウンドを記録すると、オフェンスでも要所で「自分の一番の強み」とペリメーターからのジャンプシュートを沈めて14得点。決勝の大舞台で見事なダブル・ダブルの活躍を見せた。
東京医療保健大の大きな武器として永田萌絵、平末明日香の切れ味鋭いドライブがある。だがこれもインサイドプレイヤーの藤本が外角シュートを決め、守備を引きつけてゴール下のスペースが生まれることでより威力が増す。それだけ藤本はスタッツ以上の存在感を示していた。
「バスケットだけでなく人間力も成長できました」
今シーズンの東京医療保健大は、キャプテンの永田を筆頭に藤本、平末、岡田英里と過去2度のインカレ制覇を主力として経験している4年生カルテットを有した。さらに秋の関東大学リーグ戦では14戦全勝を飾っていたことから、インカレでは絶対的な本命と見られていた。
そういった声は藤本にも届き、自分たちの代になったことで、これまで以上に勝利への思いは強かった。それだけに日本一になった瞬間の思いを「率直にホッとしました」と藤本は振り返る。「自分たちの代は下級生から試合に出ていて、それにリーグ戦で全勝優勝。それで周りから医療は大丈夫でしょと、言われ続けてきました。勝ち進んでいくことでよりプレッシャーが大きくなっていった面もありました。ただ、それを絶対にやるんだと、エネルギーに変えられたと思います」
そして試合終了直後、歓喜の涙を見せた藤本だが、すぐに笑顔へと変わった理由をこう語る。「もっと泣けると思いましたが、良かったと思いすぎて、涙が一瞬でひきました。これが完全燃焼かなと4年生と話しました」
女子では2001年から2003年の日体大以来となるインカレ3連覇の金字塔に、主力として大きく寄与した藤本は、これ以上ない形で大学生活を締めくくった。そして、大きくステップアップできたのはバスケットボールに限ったことではないと、恩塚享ヘッドコーチに感謝する。
「恩塚さんが教えてくださったおかげで、自分は周りの支えてくれる人たちのおかげで毎日バスケットボールができる。そのことをより考えるようになれました。バスケットのスキルだけでなく人間力も成長できました」
この充実した4年間を経て、彼女が次のステージにどのように羽ばたいていくのか期待したい。