ザック・バランスキー

「打てば入るという気持ちでいつもやっている」

アルバルク東京が横浜ビー・コルセアーズのホームに乗り込んだ第1戦。一度も相手にリードを許すことなく78-58で勝利した。

試合は終始A東京が主導権を握っていたが、それでも40分間スムーズに行ったわけではない。この試合でも前半で21点のリードを奪ったが、第3クォーターではファウルがかさみ、オフェンスでも開始6分間はわずか3点と重い展開が続いた。

しかし、そんな膠着を打破したのが、ザック・バランスキーの3ポイントシュートだ。それまでは外角もペイントエリア内のシュートも思うように決まらない時間帯が続いたが、安藤誓哉からのパスを右コーナーで受けたバランスキーは、迷うことなくシュートを放った。この3ポイントシュートをきっかけに、A東京は再びリズムを取り戻した。

バランスキーはその時のことを「試合の中では悪い時間帯もあるけど、僕はそれでどうこう考える選手ではないし、考えすぎずにありのままでやっていた」と振り返る。

「重い雰囲気だったら逆に軽く1本打って、決まったらチームも乗ってくれる。重い空気だから考えるのではなくて、もらったら打つ。打てば入るという気持ちでいつもやっているので、いつも通りできました。あのシュートの前にピック&ロールで下の方に2、3本パスが入っていて、僕のマークがそっちに行って空いたところに誓哉がナイスパスをくれました。だから本当に自分だけじゃなくて、チームで作ったオフェンスで、みんなで繋げた得点で流れをつかんだと思います」

ザック・バランスキー

「起こるべきことにはすべて意味がある」

バランスキーは今シーズンの開幕前日に右足を捻挫し、チームから離れていた。今はプレータイムの制限はないが、まだ100%の状態までは戻ってない。そしてバランスキーにとってケガをして公式戦を休むということが、人生で初めての経験だったという。

「夏のキツい練習を乗り越えて、やっとここからシーズンが始まるという時で、身体の調子もすごく良かったんです。本当に今までにないぐらいに、自分でも成長できたと感じていた時に捻挫して。それも開幕前日で『なんでこのタイミング?』って正直思いました。でも、起きたことは仕方がないし、起こるべきことにはすべて意味があると思うタイプの人間なので。治るべき時には治ると思って、焦らずリハビリをしていました。結局治るまで2カ月ぐらいかかったんですけど、トレーナーの方たちが全力を尽くしてくれて、リハビリも楽しくやれましたね」

そして、客観的にチームを見ることで新たな発見もあったという。その気づきはなんだったのかと問うと、バランスキーは「自分で言うのもあれですけど、アルバルクってすげえなって(笑)」と笑みを見せる。「テレビで試合を見ていたんですけど、アルバルクのディフェンスってやっぱりすごい。人数も少ないのに、みんなすごく頑張っているし、本当に徹底しているチームだなって思いました」

初めてチームから離れたことで、「本当にすごいところでいつもバスケをやっているんだなって思いましたね。それにバスケの楽しさとか、プレーできる幸せをあらためて感じました」と、客観的にチームを見ることで得たことも多かったという。

ザック・バランスキー

「ベンチでめっちゃ騒ぎながら優勝に繋がれば良いな」

A東京は現在15勝5敗で東地区2位にいる。チームはもちろん3連覇を目指しているが、その中でもバランスキーは「僕はいつも通り楽しく勝っていきたいし、楽しくやっている姿を見てほしい」と、気負うことなく自然体でいる。

もちろん楽しいことばかりではなく、苦しい時も来るだろう。それでも「負けたから落ち込むのではなくて、そういう日もあると受け止めて、今年もみんなで力を合わして勝っていきたい。個人的にはベンチでめっちゃ騒ぎながら最終的に優勝に繋がったら良いなと思いますね」と、あくまでもバランスキーらしく、どんな試合も楽しんで戦っていく。そして、個人的に目指す選手像についても、こう話した。

「ディフェンスやリバウンドは求められていますし、『ザックが出たらこれをやってくれる』というのを見せたいですね。今日みたいにオフェンスが重い時は、それをなくすためにも自分のタイミングで3ポイントシュートを打って空気を変えていきたい。みんなとはちょっと違う雰囲気を出して、一番安定した活躍ができる選手になれたらなと思います」

少ない人数で過密日程をこなしていたA東京だけに、バランスキーの復帰で選手起用のやりくりは相当楽になるはずだ。それだけではなく、チームを明るく盛り上げ、コートに立てばきっちり自分のプレーをこなす彼の存在は、A東京の雰囲気と士気を向上させてくれるに違いない。