文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

第1クォーターから三河が攻守に圧倒する展開に

ホーム開幕戦を迎えたシーホース三河が、大阪エヴェッサを危なげなく一蹴した。

すべては立ち上がりだった。橋本竜馬、比江島慎、金丸晃輔、桜木ジェイアール、ダニエル・オルトンが先発。このうち唯一の新加入選手であるオルトンに数多くボールタッチさせてリズムに乗らせ、比江島、金丸と取るべき選手がしっかりと得点を奪う。守備では前から積極的に当たり、インサイドにボールを入れさせず、アウトサイドでもフリーを作らせずに攻めどころを与えない。

27-10と三河が大量リードを奪った第1クォーターの展開について、先発ポイントガードの橋本はこう語る。「試合の入りとして、ディフェンスをセットすることが非常に大事だと考えていたので、そこで違いを出して行きたいと思っていて、それがうまく第1クォーターでチームに伝染して良いディフェンスができたので、そこは良かったと思います。第1クォーターに相手のポイントガード陣を苦しめることができたのは収穫でした。それを他のポイントガードにも求めていって、全員で試合を作り上げていって、シーホース三河の勝ち方、自分たちのバスケットボールをつくり上げていきたいと思います」

大阪は第1クォーターだけでターンオーバー7つ。遠目からの難しいシュートばかりを打たされ、フィールドゴール率は29%(14本中4本)と低調だった。桶谷大ヘッドコーチも「第1クォーターでターンオーバー7つと自滅してしまって、三河に気持ち良くプレーさせてしまった」と嘆く立ち上がりだった。

大阪に行きかけた流れを断ち切った新加入組

その大阪も、第2クォーターに入ると木下博之を中心にディフェンスで踏ん張りを見せ、立ち直りかかる。しかし三河はベンチから投入された西川貴之と村上直がリズムを変えた。それまでは桜木のポストアップが起点となったが、桜木不在の時間帯に西川と村上が個人でアグレッシブに仕掛けて攻めのきっかけを作る。このスタイルの転換に大阪は対応できず、またターンオーバーも出始めて、つかみかけた反撃の糸口を手放すこととなった。

そして第3クォーターには桜木がコートに戻り、再び熟練のポストアップから次々とチャンスを作り出し、この10分間だけで5アシストを記録。三河は大量29得点を挙げて第3クォーター終了時点で72-46と勝負を決めてしまった。最後まで集中を保った三河が、最終スコア89-61で完勝している。

三河は、開幕前に話題になったような『走るバスケ』への転換がなされているかと言えば、そうではない。ただ、桜木ジェイアールの多彩なポストプレーを軸にする円熟のハーフコートバスケットに加え、新たな武器としてトランジションの意識を高めている。ターンオーバーやディフェンスリバウンドでボールを奪った瞬間の『守から攻』への切り替えは確実に早くなった。さらには村上、西川の新加入組の個性も生きている。セカンドユニットが強化され、引き出しも増えて骨太になった印象だ。

新たなホームで躍動した村上「自分を見てほしかった」

鈴木貴美一ヘッドコーチも「我々が今年度やろうするディフェンスからファストブレイクという展開がかなりできて、ちょっとミスが多かったんですがリバウンドもディフェンスも良かったと思います」と素晴らしいパフォーマンスに納得の表情。

橋本が作った良い流れを引き継ぎ、試合を完全に三河のペースに持ち込んだ村上は、スピードとスキルで自らクリエイトする姿勢を貫き、16分のプレータイムで12得点と活躍。「僕自身、シーホース三河のホームゲームが初めてですし、僕のプレーが分からないファンの方もいらっしゃると思うので、まず自分がどういうプレイヤーなのかを見てほしかったのが第一にあります。また、点差が結構離れていて、そういう時は受け身になりがちなんですが、勢いを止めずにさらに点差を空けるという気持ちで入りました」

ウィングアリーナ刈谷に集まった2488人の観客にとっては、最高のホーム開幕戦となった。ただし、大阪のブースターにとっては話は別。ターンオーバーからの得点で8-20、ファストブレイクポイントで2-11と大きな差を付けられた。走れない上にセットオフェンスになってもボールが停滞するシーンが多く見られ、新加入選手と既存の選手との連携がまだまだ出来上がっていない様子。合田怜、藤髙宗一郎と若い2人が劣勢の中でも気を吐いたのがせめてものプラス材料。立て直しは急務だ。