「ミスが起きてもあからさまに下を向く選手はいない」
12月11日、アルバルク東京はサンロッカーズ渋谷との上位対決に74-72で競り勝った。この試合、A東京は第2クォーター序盤に15点のリードを許すなど、ほとんどの時間帯で追いかける苦しい展開だった。それでも大崩れすることなく耐え忍んだ結果、第4クォーターになってようやくリズムをつかみ、価値ある逆転勝利を挙げた。
残り1分10秒、1点を追う場面で決勝点となるゴール下にアタックしてのバスケット・カウントを決めた安藤誓哉は、このように勝因を語る。「本当に最後までディフェンスを頑張れた。そして速攻が出て勝負どころでリバウンドを取れて、終盤に流れが来てくれました」
第3クォーターまでのA東京は相手にオフェンスリバウンドを取られ、セカンドチャンスから失点したり、安易なパスミスから速攻をくらうなど、集中力が切れてもおかしくない形で失点することもあった。
この苦しい時間帯について、安藤は「雰囲気は良くはなかったです」と振り返りつつ、そんな劣勢でも決して精神面で崩れることはなかったと言う。
「ミスが起きてもあからさまに下を向く選手はいない。僕たちは自分のやるべき仕事をやろうと、一人ひとりがどんな時でも思っているチームです。だからこそ最後に流れが来たと思います」
「どんな時でもメンタルは変えていけない」
安藤個人のパフォーマンスを見ると値千金の決勝シュートをねじこみ12得点、2アシスト、2スティールを記録。ただ、フィールドゴールは16本中4本成功に終わっている。ここまでシュートタッチが良くないと、ここ一番で自分が打つことを躊躇してもおかしくないが、安藤にそういう弱気な部分はない。
「第4クォーターになってメンタルが変わるのは一番よくないです。最後の競った時間帯、自分がどんな調子でも強いメンタルでプレーすることは大事です。反省点も多い試合でしたが、そこに関しては攻め気でしっかり行けました」
現在、A東京はここまで安藤とプレータイムを分け合っていた同じ司令塔の小島元基が右ひさの負傷で長期離脱中。その結果、安藤のプレータイムは増え、昨シーズンまでほとんどなかった1試合30分以上の出場も珍しくない。
自身の置かれている状況に「弱音ではなく、分数が増えれば疲労度は変わります」と率直に語るが、同時に自らがさらにステップアップする絶好のチャンスととらえる。そして、「どんな時でもメンタルは変えていけない。強い気持ちで戦います」と続ける。
この『強い気持ち』を安藤が強調するのは、中心選手として自分がチームを牽引していくと誓っているからだ。「これまで以上の覚悟と責任、それを持って今シーズンは戦うと決めています。だから、こういう試合も崩れることはできない」
いろいろとミスもあったが、この試合での安藤は、どんな時も崩れずに強気のプレーを貫く、この肝となる部分をしっかり遂行してチームに勝利をもたらした。馬場雄大という大きな柱の一つがアメリカ挑戦で抜けたことで、安藤の存在はA東京にとってこれまで以上に大きくなっていることを、あらためて実証した今回の逆転劇だった。