「どう転ぶか分からないけど、最高の準備をして」
Wリーグは明日開幕。トヨタ自動車アンテロープスは稲永スポーツセンターでのアイシンAW戦でシーズンをスタートさせる。トヨタ自動車は昨シーズンにファイナル進出を果たした後、この夏に長岡萌映子、三好南穂、馬瓜エブリンと代表クラスの選手を多数獲得。9連覇中の『女王』JX-ENEOSサンフラワーズの進撃を阻むための大型補強を行った。
『女王』と渡り合えるだけの戦力が整ったが、それでも『チームの顔』はやはり大神雄子だ。今月17日に35歳となる大神は今シーズンを現役ラストシーズンと見定めている。「優勝して引退に花を添えたい気持ちは?」と問われると、いつもと変わらぬハキハキした口調で「ぶっちゃけた話、ありますよ。一番の引退の仕方じゃないですか」と笑う。
しかし長いキャリアの中で『酸いも甘いも』経験してきた大神は、それが簡単でないことも理解している。「それは最高のシチュエーションですけど、人生なんてそんなうまく行かないし、ケガすることもあればいろんなことを経験して今があるので、それはどう転ぶかは分からないです。でも、それまで最高の準備をして臨みたいと思います」
最高の結果を出すために最高の準備をする。大神にとっては「選手として当たり前」の話だ。
これまで何度もシーズン開幕を迎えてきたが、今回は少なからず感傷的にもなっている。「始まったらもう終わっちゃうわけなので、ちょっと楽しみでもあるんですけど、毎試合毎試合がラストになってくんだなって思うと、気持ちは昨年とはちょっと違うかな。ただ、これがすべてじゃないなとも思うので、変わらず一生懸命やっていければと思います」
「一緒にやってるチームメートと切磋琢磨して、時に勝ったり負けたりあると思うんですけど、それをみんなで築いていくし、逆にWリーグで戦う相手と一緒に、みんな後輩になるんですけど、若い選手とやることで自分がパワーをもらったり、若い選手に伝えられることを一生懸命戦うことで伝えたい。そういうことを最後は残していけたらと思います」と、現役ラストシーズンへの意気込みを語る。
「どれだけ自分たちが自分たちに挑戦できるか」
優勝して引退する『勝ち逃げ』は最高のシチュエーション。難しいことではあるが、不可能ではない。少なくとも机上の計算では、JX-ENEOSに待ったをかけられる戦力が揃った。その上で「今年は勝ちにこだわっていくチームになります。結果がすべてなこの世界ですけど、今年に関しては特に結果にこだわって、一つひとつの試合の点差っていうのは90-20でも100-50でもいい。どれだけ自分たちが自分たちに挑戦できるかだと思います。そこをアピールしたいし、見てもらいたいです」と大神はファンに呼び掛けた。
個人的な目標と抱負を問われた大神はこう語っている。「何よりも声を出し続けるのがずっとやってきたスタイルなので、それを通したいです。どれだけコミュニケーションが大事なのか、それはチームにもそうですし、リーグにもそうですし、見に来てくれる小学生、中学生、高校生にも、バスケットってプレーだけじゃなくて、ボールを追いかける姿とか、ちょっとしたコミュニケーションとか、ハイタッチ。これが実は一番面白くて、一番感動するところなので、そこを伝えられたらいいなって思います」
「なので、自分の中で数字は掲げず、誰よりも目に見えない、すべてチームのために、目標である優勝のために自分がやれることを一生懸命やりたいと思います」。女子バスケ界を長年引っ張ってきた大神の『すべてチームのために』というプレーを見られるのは今シーズンが最後。誰よりもバスケットボールを追求し、勝ちにこだわり、ゲームを楽しむ大神の雄姿をお見逃しなく!
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