文=鈴木健一郎 写真=古後登志夫

「ベンチメンバーの活躍がこれからのJXの強さに」

Wリーグの2017-18シーズンが7日に開幕する。今シーズンもまた、リーグはJX-ENEOSサンフラワーズを中心に回ることになるだろう。現在9連覇中、しかも昨シーズンは無敗優勝という偉業を成し遂げた『女王』は、ヘッドコーチがトム・ホーバスから佐藤清美に代わるが、JX-ENEOSのバスケを知り尽くした佐藤の再任であり、変化も混乱もなさそうだ。

キャプテンの吉田亜沙美は、今シーズンのJX-ENEOSについて「昨シーズンと比べて『ここが違う』というのはないですね」と言う。

「今まで積み上げてきたものは内海(知秀)ヘッドコーチから同じで、走るバスケットは何一つ変わらないです」とは言うが、変化ではなく進化としてのチーム全体の底上げを期待してほしいと語る。「ベンチメンバーにどんどんチャンスが来ると思っています。ベンチメンバーの活躍がこれからのJXの強さに変わってくるはずで、私はベンチメンバーに期待しています」

吉田が特に期待を寄せるのが2人のルーキーだ。林咲希は白鷗大学でインカレを制して、梅沢カディシャ樹奈は桜花学園で高校3冠を引っ提げてのJX入り。さらには日本代表でも林はユニバで銀メダルを獲得、梅沢はU-19ワールドカップの4強進出に貢献している。この2人について吉田はこう語る。「梅沢は高さと強さがありますし、林はスピードだったり3ポイントでJXにぴったりマッチすると思うので、その2人が加わったまた新しいJXを見せられると思います」

「ターンオーバーを0か1かというのを自分の中で課題に」

目指すは10連覇だが、吉田はあまり意識していないそうだ。「昨シーズンも、無敗で優勝しようなんてさらさら思っていなかったです。1試合1試合を戦った結果が無敗優勝というだけで、今シーズンも考え方は変わらず、1試合1試合、JXのバスケットを40分間徹底してやれるかどうか。それが結局は結果につながると思うので、無敗だとか10連覇は考えないようにやります」

昨年のリオ五輪では闘志みなぎるプレーでチームを牽引し、大会最多アシストを記録した吉田だが、今夏のアジアカップではケガの影響でフル稼働とはならなかった。これがJX-ENEOSでも吉田の控えを務める藤岡麻菜美の大ブレイクを引き出し、日本代表は3大会連続でアジアを制したものの、吉田のコンディションは気がかりだ。

それでも、開幕を控えた吉田の表情は明るい。「私はこの先1年1年が勝負になってくると思いますし、まずはケガをしないで1シーズン戦い抜くことです」とコンディションが一番の課題であることを認めつつも、プレー面になれば「ポイントガードとしてアシストを増やしてミスを減らす。ターンオーバーを0か1かというのを自分の中で課題にして、アシストを増やしてゲームメークをしっかりすることです」と、極めて高い目標をさらりと口にする。

WNBA帰りの渡嘉敷来夢を始め各ポジションに充実した戦力を誇るJX-ENEOSだが、やはり吉田の存在感は別格であり、吉田が不在となれば10連覇を狙う『女王』は「自分たちのバスケ」を見失うことになりかねない。古傷も含め、ケガや不安な箇所は少なからず抱えているのだろうが、「今のところは大丈夫です。開幕戦が楽しみです」と迷いのない笑みを見せた。

吉田の新シーズンは、7日の小瀬スポーツ公園体育館、山梨クィーンビーズ戦で幕を開ける。