文=泉誠一 写真=Getty Images

NBAとの距離を肌で感じられる機会の創造

NBAは2017-18シーズンへ向けてプレシーズンゲームが始まった。(筆者が四半世紀に渡って変わらず)今シーズンも優勝候補に挙げたウィザーズの最初の対戦相手は広州証券ロングライオンズ。中国プロバスケットボールリーグCBAのチームが、NBAの強豪チームと対戦できる機会をつかんだ。ウィザーズの本拠地であるキャピタル・ワン・アリーナがチャイナタウンと隣接していることも、実現を後押しした要因と考えられる。春節の時には中国語である漢字名のジャージを着たり(ちなみに『華盛頓』=ワシントンとなる)、その交流は深い。

結果はウィザーズがショータイムを連発し、126-96で圧勝。ロングライオンズのロスターを見ると、昨年行われたリオ五輪や今夏のFIBAアジアカップの中国代表に名を連ねた選手はいない。それもそのはず、昨シーズンは20チーム中19位と低迷している。最多29点を挙げたタイラー・ハンズブローは、ペイサーズなど7年に渡りNBAで活躍した7フッターであり、今シーズン獲得した新戦力である。ノースカロライナ大学では全米制覇を成し遂げ、50番は永久欠番だ。続く27点を取ったのもNBAキャリアを有するアメリカ人のカイル・フォッグだった。助っ人外国人がスコアラーとなるのは、日本と変わらない。

中国CBAにはアジア枠がある。ロングライオンズのもう一人の外国籍選手は、パレスチナのエースであるサニ・サカキニ。2015年のアジア選手権(現FIBAアジアカップ)で日本代表はパレスチナに勝利しているが、サカキニには27点17リバウンドを献上している。この日の試合でもサカキニは、ウィザーズを相手に18点を挙げた。サカキニがロングライオンズを通じて世界最高峰レベルに挑んだことは、パレスチナ代表にとっても何らかの刺激を与えることだろう。

中国の選手たちにとってもNBAは憧れの舞台であり、その距離を肌で感じ取れたのは何よりもの収穫である。大差の敗戦に失望もあったかもしれないが、NBAのコートに立ち、スター選手とマッチアップしたことで得られるモチベーションは計り知れない。今後の練習の質が変わってくる相乗効果だって期待できる。

NBAチームと対戦する『国際経験』の模索を

先日、ウォリアーズのパートナーとなり、ジャージーに楽天のロゴがつくことは大きな話題を呼んだ。日本企業の参入によりNBA再来日への待望論も沸き上がっている。1990年、NBAにとって初の海外での公式戦となった、東京体育館で行われたジャズvsサンズからスタートしたNBAジャパンゲームス。その後、2003年まで6度実施された。

日本におけるバスケファンの多くは、NBAファンである。NBAジャパンゲームスのように、NBAチーム同士の対戦を欲しているはずだ。だが、東京五輪の出場権がまだまだ雲の上の存在となる男子日本バスケ界の発展のためにも、今回のロングライオンズのような機会が望まれる。Bリーグがミッションに掲げている『世界に通用する選手やチームの輩出』を促進するためにも、世界を肌で感じ、世界の目に触れられる機会を増やさなければならない。日曜日の朝、テレビをつけると「東京五輪に出場するためにも国際経験がもっと必要」と田臥勇太が言っていた通りである。

昨年のリオ五輪で世界8位となった女子日本代表は、今年もWNBAチームと3試合を行った。対戦できるだけのレベルにあるからこそ受け入れられている現状がある。しかし、Bリーグにも多くのNBA選手がプレーグラウンドを求めてやってきている今、少しずつでも交流できる道を探し、実現することで、日本のNBAファンにもBリーグを見てもらうことが可能になるはずだ。