写真=Getty Images

「彼は自分にとって兄のような存在」

9月30日からNBAはプレシーズンが開幕。今後は各チームが実戦を通じて調整を続け、10月中旬の開幕に照準を合わせていく。この日、王者ウォリアーズはオラクル・アリーナでプレシーズン初戦をナゲッツと戦い、102-108で敗れた。調整試合であるため結果はさほど重要ではなく、各チームにとって新人選手、若手に出場機会を与えて実力を見定めるほうが重要となる。

試合前には、ドレイモンド・グリーンへのサプライズ演出が一つ用意されていた。昨シーズンの最優秀守備選手賞を受賞したグリーンにトロフィーを授与する式典が行なわれたのだが、プレゼンターとして現れた人物は、ピストンズで2004年に優勝し、現役時代に4回も最優秀守備選手賞に輝いたベン・ウォーレスだった。

ウォーレスはグリーンにとって憧れの存在。ピストンズ時代はアフロヘアーがトレードマークで、『ゴール下の番人』として対戦チームから恐れられたウォーレスとグリーンには、共通点も少なくない。

最終的にNBAトップ選手の仲間入りを果たしたウォーレスだが、センターながら206cmというサイズ不足によりドラフトではどのチームからも指名されず、イタリアリーグを経てNBAでプレーする機会を得た遅咲きの選手。低評価からスタートするも、守備力を買われて2000年にマジックからピストンズにトレードされると才能を開花させ、トップ選手としての地位を得て2004年に優勝を果たした。

ウォーレスの成功に触発されてNBAスター選手への階段を上ったグリーンは、2016年1月にピストンズがウォーレスの背番号3を永久欠番化したタイミングに合わせて手紙を書き、それを『Detroit Free Press』が掲載した。

同じようにパワーフォワードながらサイズ(201cm)不足を指摘されたグリーンは、その反骨精神で選手としての評価を上げ続け、今ではウォリアーズになくてはならない存在になった。

グリーンは手紙の中で、ウォーレスと知り合ってからの関係について、「彼は自分にとって兄のような存在。あれから約10年が経とうとしている。僕たちは同じような道を歩んできた。アンダーサイズの自分がベンのように成功できたのは、他人に負けることを拒み、獅子のような強い気持ちを持って取り組んできたからだ」と綴った。

「ふと、どうしてベンはデトロイトに導かれ、僕が毎日のように彼の試合をテレビで見られたのかを考えてしまう。きっと、神様の導きなのだろう。それでサギノー(ミシガン州)出身の自分がNBAでプレーすることを目標にできた。彼と同じようにアンダーサイズと評価された選手は、彼と同じような道をたどり、絶対に選手としての自分を否定させないという決意を持って、立ち止まらなかった。自分にもNBAでプレーし、アンダーサイズでも破壊力のある選手になれることを証明してくれたことに感謝しています、ミスター・ウォーレス。僕を見て昔の自分と同じように考えてくれる若い世代がいることを願っています。僕がそうだったように、他人には、自分のハートの強さをジャッジする権利がないことに気づいてもらいたい」

ウォーレスの激励により力を得たグリーンは、気持ちを新たにチームの連覇に向け突き進む。