文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

覚醒を予感させる開幕戦のパフォーマンス

栃木ブレックスとシーホース三河の開幕節は1勝1敗で終わった。その初戦、栃木の勝利を演出したのは生原秀将だ。16分間の出場で14得点と効果的な働き。三河の鈴木貴美一ヘッドコーチをして「特に生原くん、途中から出てあの時間で得点を取るとは予想していなかった」と『想定外』であったことを明かした。

昨シーズン途中に栃木初の特別指定選手として入団した生原は、筑波大ではキャプテンとしてチームを精神的に引っ張り、インカレ3連覇を達成した逸材だ。それでも栃木では絶対的なポイントガードの田臥勇太、クラッチプレーが得意な渡邉裕規の陰に隠れ、出場機会はほとんど与えられなかった。しかし渡邉の電撃引退によりポイントガードの2番手が空き、プレータイムをつかみ取った。

チームには同じタイプのガードは不要で、田臥との違いを生み出す必要がある。生原もそれは理解しており「田臥さんと同じことをしても出てる意味がないので、田臥さんがやってないようなことを意識して得点を取りに行くことが自分に必要なことなので、積極的にいきました」と、得点に生きる道を見いだした。

出だしでつまづき「責任を感じています」

栃木が先勝して迎えた第2戦、田臥が前日に痛めた足の問題で試合開始直後に交代するアクシデントに見舞われた。代わりにコートに立った生原だが、橋本竜馬から強烈なプレッシャーを受け、第1クォーターだけで3つのターンオーバーを犯すなど相手に流れを与えてしまった。その結果、チームは三河に終始主導権を握られ完敗を喫した。

流れを与えるきっかけを作ってしまった生原は28分間の出場でわずか3得点と、前日の活躍が嘘だったかのような低調なパフォーマンスとなった。「田臥さんが今日は出られなくて、コントロールもしないといけないなと考えました。それが悪い方向にいったのかなと。自分は強気で行くのに、ちょっと後ろにさがって全体を俯瞰してみようとしてしまったところがあったので、そこが良くなかった」と生原は反省する。

その前日には「コントロールばかり意識してしまうと、いつもうまくいってなくて、自分中心に考えたほうがパスも出しやすい」と発言していた。頭では分かっていたが、緊急出場というイレギュラーな状況が生原の意識にブレーキをかけた。さらには経験の浅さもそれを助長した。「プロの世界に入ってスタートで出たことがなかったので、それが序盤にいきなり出るということで自分で流れをつぶしてしまって、すごく責任を感じています」

田臥から日々アドバイスをもらえる環境

開幕節の2試合で天国と地獄を味わった生原。だが、これから成長していく若手選手としては成功も失敗も貴重な経験だ。田臥からは「開幕の2試合で良い勉強ができたな」と言われたと生原は明かす。

「例えば前日に負けた場合は、次の日はアグレッシブに、ファールするくらいの覚悟で来るよ」と試合中のベンチで言われ、試合が終わった後も「こういう勝った次の日というのは、こういう試合になるんだから、準備してやるようにしよう」とレジェンドにアドバイスをもらったと明かした。

貴重な経験を経て、「あと58試合あるので。今日の試合を最低基準として、もっともっといつも良いプレーが出来るように努めます」と成長を誓った。

特別指定選手だった昨年と異なり、本格的にプロ選手としてのキャリアを歩み始めた生原。田臥から日々アドバイスをもらえる環境は若いポイントガードにとっては最適の環境だろう。そして、彼が伸びた分だけ栃木は2連覇に近付く。若返った栃木に必要なのは、失敗を糧にして経験する、その繰り返しによる個々の、そしてチームのレベルアップだ。