シュート試投数が増えたことに「それはそれで良し」
昨日行われた栃木ブレックスとの開幕節第2戦。シーホース三河は先発全員が2桁得点を奪い初戦のリベンジを果たした。中でも目立ったのが金丸晃輔だ。栃木の激しい守備網を潜り抜け、両チーム通じて最多得点となる23得点を挙げて勝利の立役者となった。
「精度がちょっと低かったかなって感じですけど、昨日はシュートを打てていなかったので、今日は20本近く打てたのでそれはそれで良しとします」とすっきりとした表情で語った。
敗れた初戦では8得点に終わり、シュートの試投数も7本と少なかった。それが昨日の試合では17本と倍増した。精度が低いと反省を口にするも、シューターは打ってナンボ。金丸がシュートを打つことはチームのオフェンスが機能していることを意味する。
「僕が動いて動いてスクリーンを使いながらシュートを打ったことで、味方のインサイドの選手がズレでリバウンドを取りやすくなったと思うので、今日は結構外しましたけど良いオフェンスができたと思います」。結果、昨シーズンのチームリバウンド数トップの栃木を相手に42-38と上回った。
昨シーズンの金丸は日本人得点ランキングトップとなる16.7得点を記録。それは決して個人のエゴから生まれる得点ではなく、チームの役割を果たした結果だ。本人もその意識を強調する。「チームを勝たせるために僕は点を取っているので。まずチーム優先で、その次にそういう結果(得点ランキング)がついてくればいいと思ってます」
「僕が決めてやるっていう意識はないです」
数字が示すように金丸の得点力は相手にとって脅威だけに、どの試合でも彼には厳しいマークが集まる。それでもシュートを決め続ける金丸は「無駄な動きをしないこと、相手の挑発に乗らないこと」でコンスタントに得点を決め続けている。オフェンスではオンとオフを切り替え、試合の中でうまく一息入れるコツを心得ている。
それでも昨日の試合では、チーム最長となる35分もの間コートに立ち続け、さすがの金丸も「めちゃくちゃ疲れましたよ」と苦笑いを浮かべた。ただ、これは指揮官が意図したことでもある。「スターターというのはチームにとって責任のある存在。しっかり長い時間プレーさせて責任を持ってプレーさせた」と鈴木貴美一ヘッドコーチは説明した。
その結果、栃木に流れが行きそうな場面で3ポイントシュートを沈めるなど、金丸は相手の勢いを止める役割も果たした。だがそれを本人に聞いても「ここ一本が欲しい時に、僕が決めてやるっていう意識はあんまりないです」と、いつものマイペースぶりを崩さない。
「外したらディフェンス頑張ってもう一回やればいいやって考えなので。空いたら打つっていうスタイルで、その一本がたまたま1本欲しかった時だったり、そういうシチュエーションがありましたけど、僕はそういう意識はしてないです」
普通の選手だったら「外せない場面なので、絶対決めるつもりでした」とでも言うのだろうが、金丸は違う。良くも悪くも肩に力が入らず、自然体でプレーしている。それが彼の継続性、試合状況やチーム状況、さらには彼自身の調子の良し悪しも超えてコンスタントに得点を積み上げる結果を生み出している。
初代王者を相手に1勝1敗と上々の滑り出し
今シーズンの三河は伝統的なハーフコートバスケットに加え、素早いトランジションも取り入れると開幕前から公言していた。
「速い展開ということはファーストブレイクを狙うので、その時に3対2とか数的有利なシチュエーションが生まれるわけです。そこで3ポイントを打ったりするのが僕の仕事だと思います」と自身の役割を説明する。ただ、まだそのスタイルへの改革に着手したばかりで完成度は高くなく、初戦では40分間継続して実行することができず敗れた。
だがそれは三河のこれからの伸びしろでもある。「ベースはこういう戦い方で、内容をもっともっと良くし、今日みたいなバスケットを今後続けていければと思います」と金丸も現時点の出来ではなく、チームの目指す方向がより明確になったことに手応えを感じている。
新たなスタイルの良い面と悪い面の両方が見えた開幕節。その状況で敵地で栃木と戦い1勝1敗という結果は決して悪くない。高くない授業料を払いつつも、1勝は持ち帰ることになった。新たなスパイスを加えるチームにおいて、金丸はこれからも冷静かつ無心にリングだけを見つめ続ける。